中古住宅は新築よりは安いものの、不動産である以上、それなりに大きな出費となります。「この出費を補助金で補うことはできないか?」と考える方も多いでしょう。
この記事ではこのような疑問に答えるため「中古住宅の購入で使える補助金」について解説していきます。これから中古住宅を購入しようとしている方は、数十万円~数百万円の金額で得する可能性が高いので、ぜひチェックしてみてください。
中古住宅購入の補助金とは
まず、中古住宅購入の補助金の概要をまとめると、下のようになります。
以下、それぞれ解説していきます。
補助金と優遇制度は違う
まず、補助金の意味はそのままなので、特に説明する必要はないでしょう。最初に説明が必要なのは、補助金と「優遇制度」は違うということです。
優遇制度には「減税」などが含まれる
補助金はご存知の通り「お金をもらえる」ものです。一方、優遇制度は文字通り「優遇」であり、その形はさまざまです。たとえば「減税」もその代表的なものです。
減税は確かに中古住宅を購入するときにも助かるものです。しかし、お金をもらえるわけではありません。そういう点では「補助金」ではないのです。
中古住宅購入の補助金・一覧
上記のような説明をした上で、「減税」などでない純粋な「補助金」を紹介しましょう。中古住宅を購入する場合は、下のような補助金をもらえます。
それぞれの詳細は、リンク先の段落で解説しています。
中古住宅購入時の減税制度一覧
中古住宅の購入で適用できる減税制度は、ジャンル別に下のようになります。
それぞれのジャンルの減税制度を一覧にします。
所得税
所得税に関わるものでは、下のような減税制度があります。
- 住宅ローン控除
- 買換えのために住宅を売り譲渡益が生じた場合の長期譲渡所得の特例
- 住宅を買い替えた時の所得税の減税(譲渡損失が生じた場合の特例)
一番有名なのは「住宅ローン控除」で、「住宅ローン減税」とも呼ばれます。どちらかの呼び名で聞いたことがある人も多いでしょう。
文字通り「住宅ローンを組む」ということが条件になりますが、こうした優遇措置もあります。
登録免許税
登録免許税とは、不動産を登記するときに法務局に支払う手数料(というべきもの)です。大体数百万円の物件で数万円など、不動産自体に比べるとそれほど高額なものではありません。
しかし、それでも「数万円~10万円程度が浮く」と思えば、ありがたいものでしょう。その登録免許税の減税措置では、中古住宅では下のようなものが利用できます。
- 住宅の登録免許税の税率軽減
- 低炭素住宅の登録免許税の軽減(中古でも適用される)
- 長期優良住宅の登録免許税の税率軽減
なお、登録免許税は支払う金額より「計算が厄介」という点が問題になります。1円でも計算が間違っていたら、登記を受け付けてもらえません。
登録免許税の計算もその他の登記手続きも、基本的にプロである司法書士にまかせる方がいいでしょう。中古住宅の購入も含め、登記での司法書士の仕事は下の記事で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみて下さい。
その他の税金
その他の税金の優遇措置では、下のようなものがあります。
- 贈与税の住宅取得資金の非課税措置
- 中古住宅の不動産取得税の軽減措置
ここまで解説してきた減税措置は、中古住宅の購入で「どれかに当てはまることが多い」ものです。自身が利用できる税制がないかよく調べ、あれば積極的に利用しましょう。

市町村住宅関連補助金
中古住宅購入の補助金で、特に多くの人がもらえるものは「市町村住宅関連補助金」です。これについて要点をまとめると、下のようになります。
以下、それぞれ解説していきます。
ほとんどの市区町村にある制度
「市町村住宅関連補助金制度」は、ほとんどの市区町村がもうけています。この「市町村住宅関連補助金制度」というのは、実は統一された名称ではありません。
「市町村の、住宅関連の、補助金の制度」というそのままの意味です。ここでは、これをつなげて一つの名詞のように呼んでいます。
住宅関連補助金制度は、地方自治街(市区町村)がそれぞれ自由に決めるものです。極端な話「なし」にしてもかまいません(そのような自治体には誰も住みたがらないでしょうが…)。
このように内容もバラバラかつ自由なものなので、名称も統一されたものがないのです。
住宅に関するあらゆる内容で補助が出る
「市町村住宅関連補助金制度」は、中古住宅の購入に限定されたものではありません。自治体によって変わりますが、大体以下のように「住宅に関連するあらゆる内容」について、補助金が出ます。
- 中古住宅の購入
- 新築住宅の購入・建築
- リフォーム・リノベーション
- バリアフリー工事
- 耐震診断・回収
- エコリフォーム(断熱改修など)
すべての市区町村にこのような補助金がある、ということではありません。中には「新築・中古の住宅購入のみ」という自治体もあります。
上記の一覧は、「全国の自治体を見ると、このようにあらゆる種類の補助金制度を見られる」という意味です。
利用に関する4つの条件
利用の条件も自治体によって異なりますが、大体下のような内容です。
- その市区町村に住んでいること
- あるいは、住む予定であること
- 地元の業者を利用すること
- 税金の滞納がないこと
上記の条件を満たしていれば、補助金を利用できる可能性が高くなります。
2つの注意点
それほど大きな注意点ではありませんが、下の2点は意識する必要があります。
- 国の補助金と併用できない
- 補助金の利用総額が予算に達したら、そこで打ち切りになる
同じ政府系の補助期でも、こちらは「市区町村」のもので、「国」のものとは併用できないということです。また、当初申告した予算を達成したら、当然ながらそれ以上の補助金はもらえません。
実際の制度の例
実際、各市町村でどのような補助金制度がもうけられているのか、一部を紹介します。
札幌市
- 高齢の方・障がいのある方のための住宅リフォーム資金融資
- 札幌版次世代住宅補助制度
- 札幌市住宅エコリフォーム補助制度
(中略)
浜松市
- 地域材利用推進事業(天竜材の家 百年住居る事業)
- 創エネ・省エネ・蓄エネ型住宅推進事業費補助制度
- 花と緑の交付・助成制度
- 重度身体障害者住宅改造費助成事業
- 木造住宅補強計画策定事業
- 木造住宅耐震補強助成制度
- 専門家による無料耐震診断


上で先生が言っている通り、市町村住宅関連補助金制度は、数にも内容にもかなりのバラツキがあります。しかし「住宅購入」は一番重要なことであり、空家を増やさないためにも中古住宅の利用を促進することは重要です。
このため、中古住宅の購入に対する補助金は、その自治体に住んでいるなどの条件を満たせば、もらえる可能性が高いと思ってください。
すまい給付金
すまい給付金も、中古住宅の購入でもらえる補助金の代表的なものです。「すまい給付金とは何か」をまとめると、下のようになります。
以下、それぞれ解説していきます。
住宅購入時に最大30万円もらえる
すまい給付金とは「住宅を買うときにもらえるお金」です。金額は最大で30万円となっています。
なぜ住宅を買うだけでもらえるのか
これは下の2つの目的からです。
- 年収が低い人でも住宅を買えるようにする
- 日本の不動産市場を活性化させる
前者については、不動産とは別の支援で「生活福祉資金」というのもあり、すまい給付金でなくても満たせる目的です。そのため、特に大きな目的は2つ目の「不動産市場の活性化」といえます。
消費税を増税したとき、需要減を抑えるために制定した
すまい給付金が支給されるようになったのは、2014年です。この年は、4月に消費税率が5%から8%と引き上げられました。
これによって住宅を購入する人も減ることが予想されたため、それを防ぐためにすまい給付金の支給が始まったのです。


中古でももらえる
すまい給付金は、中古住宅の購入でももらえます。中古のときの条件は下の通りです。
- 売り主が不動産会社であること(個人でないこと)
- 「既存住宅売買瑕疵保険」に加入すること
- ↑もしくは「既存住宅性能表示制度」を利用すること
2つ目と3つ目は、どちらかを満たせばOKです。
すまい給付金をもらうための条件・一覧
すまい給付金は、下の条件を満たすともらえます。
- 年収が一定以下
- 住宅ローンを借りる
- 品質が保証されている
- 本人が住む
- 床面積が50㎡以上
以下、補足が必要な部分を補足していきます。
年収が一定以下
この金額は家族構成によって変わります。たとえば下のような条件だと「510万円以下」になります。
- 妻に収入がない(専業主婦)
- 子どもが2人いる(中学生以下)
「割と一般的な家庭」という例ですが、これだと510万円が基準になります。そのため、すまい給付金の年収条件はしばしば「510万円以下」といわれるわけです。
実際には「510万円はあくまで1つのケース」に過ぎないので、その点は注意してください。
住宅ローンを借りる
もともと、すまい給付金は「住宅ローン控除を補う制度」として始まりました。そのため、住宅ローンの利用が原則になっています。
しかし、下のケースでは住宅ローンを利用していなくても、すまい給付金をもらえます。
- 年齢…50才以上
- 年収…650万円以下
どちらも「住宅引き渡しの年の12月31日時点」です。たとえば2019年の6月に住宅を買ったら、その半年後の2019年12月31日の時点で上の条件を満たしていればいいわけです。
品質が保証されている
この基準は、中古住宅の場合は先ほど書いた下の2点になります。
- 「既存住宅売買瑕疵保険」に加入
- 「既存住宅性能表示制度」を利用
そして、新築住宅の場合は下の通りです。
- 住宅瑕疵担保責任保険に加入
- 建設住宅性能表示制度を利用
どちらにしても「保険に入る」「性能が保証されている家に住む」という条件を満たすことが、すまい給付金をもらう条件になるということです。
若者の中古住宅購入時のエコリフォーム補助金
40歳未満であれば「若者の中古住宅購入時のエコリフォーム補助金」というものもあります。この補助金のポイントをまとめると、下の通りです。
以下、それぞれのポイントについて説明します。
正式名称は「良質な既存住宅の購入に対する補助金」
わかりやすい呼び名として「若者の中古住宅購入時のエコリフォーム補助金」という名前がしばしば使われます。しかし、正式名称は見出しの通りです。
「既存住宅」というのは、中古住宅のことです。他の補助金は「中古住宅」には限定していませんが、この補助金では限定されています。その点で、特に「中古住宅購入の補助金」という性格が強いものです。
「40歳未満、中古住宅購入、エコリフォーム」が条件
この補助金の利用条件は、主に下の3点です。
- 年齢が40歳未満
- 中古住宅を買う
- 「エコリフォーム」をする
最後の「エコリフォーム」ですが、これは「補助金のルールで決められた内容のリフォームです。たとえば「部屋のインテリアをおしゃれにしたい」という目的のリフォームでは、認められないことが多くなります。
限度額は50万円、耐震改修をするなら65万円
補助金の限度額は50万円です。誰でも50万円をもらえるわけではなく「そのリフォームに本当に必要な金額」が支払われます。
耐震改修をする場合は、最大65万円まで増えます。これは、地震の被害を小さくすることが自治体のためでもあるからです。
まとめ
以上、中古住宅購入でもらえる補助金についてまとめてきました。最後に要点を整理すると下のようになります。
- 中古住宅購入の補助金は、主に3つある
- (1)市町村住宅関連補助金制度
- (2)すまい給付金
- (3)若者の中古住宅購入時のエコリフォーム補助金
補助金は誰でももらえるとは限りませんが、平均的な生活をしている方なら、比較的もらいやすいものです。
ここでいう「平均的な生活」とは「税金の滞納がない、年収が平均程度」などです。このような条件なら「何らかの補助金をもらえる可能性が高い」ので、一度チェックしてみるといいでしょう。