不動産の世界では、しばしば巨額の詐欺事件のニュースが流れます。2018年に話題になったものでは「積水ハウスが63億円を騙し取られた事件」が記憶に新しいものです。
こうした事件を見聞きしていると「自分も詐欺に遭うのでは?」「今持ちかけられている話も、実は詐欺なのでは?」と思うことがあるでしょう。杞憂ではなく本当に詐欺の可能性もあるので、このような警戒心を持つことも必要です。
しかし、不動産の売却に限らず人間の仕事や生活は、ある程度相手を信用して初めて回っていきます。このため、詐欺をいたずらに警戒するのではなく、「どんな手口があるのか」「防ぐにはどうすればいいか」を正確に理解するべきです。そうすれば、業者や取引相手を信じるべきときには、確信を持って信じられるようになるでしょう。
この記事ではそのような目的のために、不動産の売却・購入時に起こりえる詐欺の手口を説明していきます。
Contents
不動産売却・購入時に起こりえる詐欺・5つの手口
不動産の売却や購入の際に起こりうる詐欺は、主に下の5つがあります。
「売却時・購入時」のどちらで起きるかを分けると、下記の通りです(○が付いている時が、その詐欺が発生する時です)。
詐欺の手口 | 売却時 | 購入時 |
---|---|---|
両手取引 | ○ | × |
査定額釣り上げ詐欺 | ○ | × |
媒介契約の強要 | ○ | × |
地面師 | ○ | ○ |
手付金詐欺 | × | ○ |
売却時に○が付いていたら「売り手」が被害に遭う詐欺、購入時に○が付いていたら「買い手」が被害に遭う詐欺です。以下、売り手が被害に遭うものから順番に解説していきます。
両手取引(囲い込み)
両手取引は、不動産売却でもっとも多い詐欺の手口です。業者によっては「そもそも詐欺と思っていない」「ビジネスとして当然のことと考えている」ということもあります。
両手取引の手口を簡単に書くと、下記の通りです。
- あなたの物件の売却を引き受ける
- しかし、わざと売れないようにする
- 具体的には、問い合わせが入っても断る
これによって何が起きるかというと「あなたが、物件の値段を下げざるを得ない」のです。
- 物件の値段を下げる
- 買い手がつきやすくなる
この流れはわかるでしょう。しかし、下のような疑問を持つはずです。


「他社から来た買い手」は断りたい
両手取引をする業者は、「他社から来た買い手」は断りたいのです。理由は、これを引き受けると「買い手の仲介手数料が、その業者のものになるから」です。
では、どうしたいのか―。ずばり「買い手も自社で見つける」のです。
売り手については、すでにあなたと「専任媒介契約」もしくは「専属専任媒介契約」を結んでいます(両手取引は、このどちらかの契約のときのみ実行可能です)。
これらの契約だと、あなたは他社に物件を売ってもらうことができません。この詐欺業者に売ってもらうしかないのです。
このように「あなたから仲介手数料をもらえることは確定」しています。となれば、あとは「買い手からももらえるように全力を尽くす」だけなのです。
そのために「他社からの買い手は排除」「自社の顧客の中から買い手を探す」という方法になります。
自社の顧客だけで買い手を探すのは難しいので、値下げする
不動産は、そう簡単に売れるものではありません。そして、どの業者でも「抱えている購入希望者のリスト」は少ないものです。
それでも自社だけで売ろうとすると、どうしても「値段を下げて、買いやすい物件にする」しかありません。そのため、わざと売れないようにして値段を下げ、自社の顧客に売りやすい状況を強引に作るのです。
1件あたりの仲介手数料は減るが、トータルでは増える
仲介手数料は「売買金額の○%」という割合で決まります。つまり、安く売るとあなたからもらえる仲介手数料が減ります。
一見マイナスのようですが、「買い手からも同じ金額をもらえる」ので、トータルでは大きく得するのです。これが両手取引の手口であり、多くの業者が実行している理由です。
(このような両手取引の被害に遭わないためには、業者選びが重要となります。不動産やマンションを売却するときの業者選びのポイントは、下の記事を参考にしていただけたらと思います)
査定額釣り上げ詐欺
不動産の売却では、最初に複数の業者から査定を受けます。そして、大抵は「高値を示してくれた業者」と契約し、正式な売却の手続きに入るものです。
査定額釣り上げ詐欺は、この段階に入ってから「どんどん買取価格を下げていく」という手口です。
- 最初は査定額を釣り上げて、売り主を引きつける
- 正式に契約したところで、査定額(買取価格)を下げていく
上のような内容です。こういう「最初に誇大広告で釣り、後でがっかりする実態を見せる」というのは、どの業界でもよく見られます。そして、大抵の業界でのそれは「詐欺とまでは言えない」というものです。
(たとえば、レストランのメニューの写真より、実物が「しょぼい」のは普通といえます)
このため、この手口は「詐欺」と断言するのが難しいのです。しかし「明らかに度を越している」という場合は詐欺といえます。
(一括査定でもたまにこのような手口があります。こうした手口に騙されない賢い一括査定の利用方法については、下の記事を参考にしていただけたらと思います)
媒介契約の強要
媒介契約を結ぶと、物件が売れたときに業者に仲介手数料を払う必要があります。この手数料を目当てに媒介契約の締結を強要する業者もいます。


条件が非常にいい物件の場合、わざわざ業者が仲介しなくても売れます。業者は当然それに気づくのですが、所有者が自力で売ってしまっては自分たちの利益にならないので「媒介契約を強要」するのです。
特に「専属専任媒介契約」を結ぶと、物件所有者は自分で買い手を見つけることも禁止されます。このため「簡単に売れる物件」の販売権が、その業者に独占されてしまうのです。
この詐欺をはたらく業者は、大抵契約を急かします。この手口に限らず、不動産の詐欺では「契約を急がせる」というパターンが多いものです。
このため、不動産の契約を結ぶときに業者が急かすようなことを言っていたら、その場ですぐに契約するのは基本的に避けましょう。一度家に帰ってゆっくり考えて返事をするようにすれば、詐欺の被害に遭う確率は格段に低くなります。
地面師
不動産売却での地面師の手口は「あなたの不動産を勝手に売り、代金を持って逃げる」というものです。手口を簡単にまとめると、下のようになります。
- あなたが仲介業者を立てたとき、その仲介業者が行う詐欺
- 仲介業者は、買い手から代金をもらっている
- しかし、その代金をあなたに渡さずに逃げる
- 不動産の所有権は、買い手に移転されている
これであなたがどういう状態になるかというと、下記の通りです。
- 不動産の所有権はない
- お金も入ってこない
つまり、何もない状態です。買い手はどうかというと、特に被害はありません。
- お金は不動産の価値に即したものだった
- 所有権も無事に移転された
この場合、物理的・経済的な被害は何もないのです。もちろん、あなたが当然苦情をいうので「妙な事件に巻き込まれてしまった」という精神的・時間的な被害はあります。
買い手が被害に遭うケース
逆に、売り手のあなたでなく「買い手」が被害に遭うこともあります。これは「所有権が移転されていない」というケースです。
- 買い手はお金を払った
- しかし、所有権が移転されていない
- あなたはお金をもらっていない(地面師が持って逃げた)
- だから、所有権を譲る気はない
上のような状態になるわけです。買い手としては「お金は取られた、不動産も手に入らない」ということで、この人が被害者となります。あなたは被害者にはなりません。「物件を失っていない」ためです。
(もちろん、この場合も精神的には被害者となります)


地面師の正確な定義・手口の解説
地面師をより正確に定義すると「他人の不動産を利用して詐欺を働く者」となります(デジタル大辞泉の定義より)。
この定義でも「売り手・買い手の両方を騙せる」というのがわかるでしょう。そして、より正確な定義・説明は下記の通りです。
(地面師とは)
土地や建物の持ち主が知らないうちに本人になりすまして不動産を勝手に転売して代金をだまし取ったり、担保に入れて金を借りたりする詐欺グループ。書類を偽造する役や土地を探す役、持ち主になりすます役など役割を分担しているとされる。地価高騰で土地取引が活発だった1990年前後のバブル期も地面師による事件が目立った。
コトバンク「地面師」(2017年7月21日・朝日新聞朝刊2面による解説)
上記の文章は長いので要約すると、下のようになります。
何をするのか? | 不動産の所有者になりすます |
---|---|
なりすましてどうするのか? | 1.不動産を勝手に売る/2.担保に入れてお金を借りる |
どんな役があるのか? | 1.書類を偽造する役/2.持ち主になりすます役/etc.. |
過去の歴史は? | 1990年前後のバブル期に、特に活発だった |
「なりすましてどうするのか?」の部分で「1.不動産を勝手に売る」とあります。これが、先ほど紹介した「売り手・買い手のどちらかが被害に遭う手口」です。
勝手に売るの「売る」が「所有権移転」の意味だったら、売り手のあなたが被害に遭います。逆に「売る」が「代金をもらうだけ」という意味だったら、買い手が被害に遭うということです。
担保に入れた場合、金融機関が被害者になる
地面師は、売り手・買い手だけでなく「金融機関」を被害者にすることもあります。先の表の「2.担保に入れてお金を借りる」の手口では、被害者は銀行・信用金庫などの金融機関です。
たとえば、あなたが「自分の物件を勝手に担保に入れられていた」という場合、一般的に見てあなたは悪くありません。管理責任に問題があった場合は別ですが、それでも100%の責任は問われないでしょう。
となると、誰にもお金を請求できない銀行は「泣き寝入り」となります。


手付金詐欺
「手付金詐欺」はあらゆる業界でありますが、不動産での手口や特徴をまとめると、下のようになります。
以下、それぞれ詳しく解説していきます。
契約を急かして、手付金を払わせる
手付金とは、契約の段階で払うお金です。不動産で物件を購入するときの相場は、大体下の2通りに分かれます。
- 100万円
- 売買代金の10%~20%
前者の100万円は「キリがいい」という理由でよく用いられます。後者の相場は「金額が数千万円などと大きい時」に用いられるものです。
たとえば3000万円の物件なら、10%は300万円となります。3000万円の物件で100万円の手付金では少ないので、こうした金額帯では「10%~20%」という相場が採用されやすいものです。

金額がどちらのルールであれ、こうした100万円単位の手付金をまず払わせるのが、この詐欺の手口です。
契約を急かす不動産屋は多いので、見極めが難しい
この詐欺の特徴は「業者が契約を急かす」ことです。手付金を払ってもらうのが第一ですから、彼らとしては早く契約して欲しいわけです。
しかし、この程度のことはどの業者でもやっています。詐欺でない普通の業者でも売上は欲しいですし、営業マンもノルマを達成する必要があります。
そのため、契約を急かすこと自体はよくあるのです。「契約を急かされた」という理由だけで詐欺を見破るのは、少々難しいでしょう。
良心的に契約を急がせるケースもある
不動産業者の中にも、当然良心的な会社や営業マンは存在します。彼らは、本当にいい物件だったら「他の買い手がつく可能性があるので、本当に欲しければ急いだ方がいいかもしれません」ということは言うことがあります。
彼らは決して強要はしませんが「この物件だと、私の経験からいうと1週間後は売れている可能性があります」などということもあるでしょう。これを「急かしている」と受け取ることもできます。
最終的には、業者が「何を言ったか」ではなく「その営業マンや会社を信用できるか」がすべてといえます。
物件の所有権は、本当に持っているケースが多い
不動産の手付金詐欺では、その物件の所有権は、犯人が本当に持っているケースが多くあります。だから多くの人が信じてしまうわけです。
「物件を持っているなら、何らかの方法で売らせることができるのでは?」と思うかもしれません。しかし、「別人に売って逃げられた」としたら、手を出せないのです。
なぜ別人に売って逃げられるのか?
これはそれほど難しいことではありません。不動産の売却は「登記」によって成立します。
登記をする場所は法務局ですが、法務局は当然あなたと詐欺師の契約など把握していません。詐欺師があなたではない人に売り、その登記のために法務局に来ても、法務局は当然何もわからないのです。
そして、登記が済んでしまったら手も足もでません。その第三者が「本当に何も知らない」場合、この人に対して「この物件は私のものだ」と主張することもできません。
第三者がグルだった場合
当然ながら、この「第三者」がグルのケースもあります。普通の人間にすばやく売却するのは難しい(買い手がそんなに早くは見つからない)ので、グルの方がスムーズに進むのです。
ただ、グルだったら逆にお金を取り戻しやすくなります。何らかの方法で「グルだった」ことを証明できれば、あなたの損害分を不動産の資産から取り戻すことができるでしょう。
たとえば損害賠償も含めて500万円もらえるとしたら、物件が1000万円の場合、あと500万円払えば手に入るという具合です。場合によっては「逆に得する」可能性もあるわけです(もちろん、実際にはここまで上手くいくことはめったにありません)。
賃貸での不動産詐欺のパターン
賃貸での不動産詐欺で特によく見られるのは下の2つの手口です。
それぞれ、下のようにターゲットが異なっています。
家賃振り込め詐欺 | 入居者 |
---|---|
稼働率水増し詐欺 | 投資家 |
以下、それぞれの賃貸詐欺の手口について解説していきます。
家賃振り込め詐欺
これは「次回からこちらに家賃を振り込んでください」と、嘘の連絡をするものです。連絡の仕方としては、下のような手口があります。
- 入居者全員のポストに投函
- アパート・マンションの掲示板にお知らせを貼る
前者については、ポストの中まで管理人も見ていないので、比較的容易に実行できます。後者については管理人が常駐していないマンションやアパートで使われる手口です。「次に管理人が来て張り紙が処分されるときまで」に、誰かが振り込んでくれればそれで成功というわけです。
振込先の口座からバレないのか?
これはバレるのですが、振り込め詐欺と同じで「短期間だけ使ってすぐに閉鎖する口座」なのです。正確には犯人たちが閉鎖するのではなく、銀行によって凍結されます。
彼らはその前に「売上」を全部引き出して逃げるわけです。口座の名義は「ヤミ金からお金を借りて返済できなくなった債務者」などのものです。
「新しい大家・管理会社」などを名乗ることが多い
この手口では、新しい大家や管理会社を名乗ることが多くあります。当然ながら、振込先が変更になる以上「オーナーが変わった」ことにしないと不自然だからです。
また、この連絡は当然「前のオーナー」からもされるはずです。このため、前のオーナー(正確には本物のオーナー)の名前や会社名も調べ、その名義も併記して連絡します。
オーナーの名前はどうやって調べているのか
この方法はケースバイケースですが、主に下のような手口が考えられます。
- 賃貸情報サイトで調べる
- 不動産登記簿謄本で調べる
- 不動産業者から情報を入手する
最後の不動産業者ですが、彼らがこうした悪人に協力する理由としては、主に下のようなものが考えられます。
- もともと反社会勢力が経営する業者である
- 普通の業者だったが、反社会勢力に弱みを握られている
1つ目の「反社会勢力が運営する不動産会社」というのは、実は多くあります。「地上げ屋」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。
土地は大きなかたまりであるほど、価値が高くなります。そのため、自分の周辺の土地所有者に嫌がらせをして土地を売らせ、ひとまとめにして高値で売却する、という手口で儲けるわけです。
特にバブル期に横行した手口ですが、このような目的で設立された「最初から反社会勢力の不動産会社」というのは、意外と多くあります。
続いて2つ目ですが、これも先ほどの「ヤミ金からお金を借りた債務者」と同様、金銭面や犯罪絡みなどでヤクザに弱みを握られているケースがあります。「犯罪絡み」というのは、わかりやすいものでは「18歳未満のハニートラップ」などです。
これで引退に追いやられてしまった人気俳優さんもいますが、何か「悪いこと」をさせれば、ヤクザはその人物に対して主導権を握ることができるのです。「最初はごく小さな悪事から頼み、徐々に感覚を麻痺させていく」というのが彼らの手口とされます。
稼働率水増し詐欺
これは投資家を騙す手口です。稼働率とは、賃貸のアパート・マンションで「どれだけ入居者がいるか」という率を指します。
当然ながら、稼働率は高いほどいいものです。購入する投資家が「全部壊して建て直したい」と思っている場合は例外ですが、基本的にそのようなことはありません。
大抵は「そのまま買い取って運営したい」と思っています。そのため、空室リスクが低い「稼働率の高い物件」が好まれるわけです。
これにつけ込んで「稼働率のデータを高めに偽って売りつける」という詐欺があります。
どうやって水増しをするのか
実は、この手口は詳しい内容が表に出ていません。もっともあり得るのは「売買が成立したあと、徐々に入居者が退去していき、空っぽになる」というものです。
これは「入居者が全員グル」ということです。より正確にいうと「ヤミ金が弱みを握る債務者などの名義を使い、ほぼ架空の入居者を作っていた」ということです。
身分証もあり、その人の名義の口座も存在するのに、実際にはそのアパートでは生活していない、架空の入居者を揃えている可能性があります。


もし購入者が「自分でアパートを管理する」という大家さんだったら、このような詐欺は働きにくいわけです。
「遠方の物件を買って、管理会社に委託する」という場合は要注意
不動産投資は「自分の目が行き届く地元で行う」のが基本です。しかし、中には海外不動産など「遠くで成功している」例もあり、これで素人の投資家の方々がしばしば騙されてしまいます。
遠方の賃貸物件は、当然自分で管理できません。そのため、管理会社に任せることになります。この管理会社が悪徳業者だったら、上に書いたような詐欺を働かれるケースもあるわけです。


「2年も家賃を払い続けて利益が出るのか?」と思うかもしれません。しかし、2年程度なら余裕で利益を出せます。
賃貸物件の年間利回りは、東京では平均4.5%前後とされます。これは「不動産投資家調査」でわかるデータです。
年間4.5%ということは、2年間フルで入居者がいても、投資家が回収できる金額は9%です。たとえば1億円で物件を買ったら、900万円しか回収できていないわけです。
そして、残りの9100万円は悪徳業者のものになるのです。彼らは下のように儲けます。
- 1億円でアパートを売る
- その後2年間で、900万円ほどの家賃を払う
- 2年で全員退去したことにし、その後は家賃を払わない
- これで9100万円が利益になる
もちろん、上記は単純計算です。実際にはこの「壮大な自作自演」にかかる運営費もあるので、純粋な利益はもっと小さくなるでしょう。
それでも「2年程度家賃を負担しても利益を出せる」ことは理解できるかと思います。
本当の手口はわからない
上記はあくまで「このような手口が考えられる」というものです。この手口は、無事に成功したら「詐欺であったことに気づかれない」のが特徴です。
騙されたオーナーは「不動産投資がこんなにハイリスクだったとは…」と思うだけで、詐欺に遭ったとは感じないかもしれません。2年なら気づくかもしれませんが、3年や4年など、さらに長期的な詐欺になったら気づく人の方が少ないでしょう。
実際、大企業の積水ハウスが55億円を騙し取られた事件もあるほどです。不動産の詐欺は、一般人では「そもそも詐欺に遭ったことすらわかっていない」ケースが、多くあると想定できます。
不動産詐欺に遭ったときの相談先
不動産詐欺の被害を受けた、あるいは「詐欺ではないか?」という疑いを持ったときは、下のような専門家・組織に相談しましょう。
以下、それぞれ詳しく説明します。
弁護士(お金がある場合)
不動産も含め、詐欺事件はいきなり警察には相談できないことが多いものです。「明確な詐欺」は刑事事件になりますが、なかなかそのような事件はありません。
そのため、業者などを訴えるときは「民事で訴える」ことが多くなります。民事の裁判では弁護士の力が不可欠なので、弁護士に相談することになります。
弁護士の相談料の相場は、30分で5000円~1万円です。最近は「30分5000円」の弁護士(法律事務所)が多くなっています。
法テラス(お金がない場合)
収入が一定以下の場合は、法テラスというサービスを利用できます。法テラスは国が運営する機関で「弁護士・司法書士への相談を無料でできる」ものです。
- 1回30分まで
- 同一案件で3回まで
上記のような制限がありますが、弁護士や司法書士は「完全なプロ」であり、無料でもレベルの高いアドバイスをしてもらえます(彼らの報酬は税金から払われているので、ボランティアではないのです)。
法テラスは「裁判まで持ち込む」には向いていません。あくまで「自分は詐欺に遭ったのではないか」「これからどうすべきか」という、入り口の段階でアドバイスをもらうための相談先、と考えて下さい。
宅建協会など(まだ被害がない場合)
まだ詐欺の被害に遭ったわけではなく「この業者は怪しい」と感じたときは、宅建協会に問い合わせしましょう。業者が示している「宅地建物取引業の免許番号」が本物かどうか、などの確認ができます。
もしその番号が本物でも、たとえば「その業者に関する問い合わせがなぜか多い」ということであれば、その事実を教えてもらえる可能性があります。また、宅建協会からもその業者への調査や警告などをしてくれるでしょう。


- 最初から反社会勢力が設立し、登録した会社
- 反社会勢力が買い取った休眠会社(昔は別人がまじめに営業していた)
- 経営に行き詰まった普通の業者が、悪事に手を染めた
これらのケースもあり得るので「宅建業登録が本物でも、それだけで100%の信用はできない」と意識してください。
まとめ
まとめると、不動産の売却時に起こりうる詐欺の手口は、主に下の4つです。
- 両手取引
- 査定額釣り上げ
- 媒介契約の強要
- 地面師
これに加え「購入時のみ起きる詐欺」として、手付金詐欺があります。いずれの詐欺にしても、手口をよく理解していれば防げる確率は高くなるものです。
業者を不必要に疑わず、安心して相談や契約に臨むためにも、これらの詐欺の手口を理解して、売却に臨むようにしてください。