一戸建てを売ることは、多くの人にとって人生で初めて経験することです。そのため、相場や売却にかかる手数料など、わからない部分が多くあるでしょう。
この記事では、そのような「一戸建てを売るときに知っておくべき情報」を解説していきます。また「賃貸とどっちがいいか」「ローンがあっても売れるのか」などの疑問にも答えていきます。
一戸建ての売却を検討しているあらゆる方に、参考にしていただけるでしょう。
- 一戸建てを売るときの相場の調べ方(5つ)
- 一戸建ての売却・賃貸、それぞれのメリット・デメリット
- 一戸建てを売る理由ランキング・BEST5
- 一戸建ての売却でかかる手数料
- ローンがあっても一戸建てを売れるのか
Contents
一戸建てを売るときの相場・5つの調べ方
一戸建てを売るとき「大体いくらで売れるのか」という相場は、特に気になる情報でしょう。この相場の調べ方は、主に下の5つとなります。
以下、それぞれの調べ方について解説していきます。
一括査定を受ける
まず定番といえる方法が一括査定です。最大6社など複数の業者から、簡単に見積もりをとることができます。
大手の一括査定サイトは、大部分が「メールのみ」でやり取りできるようになっています。このため、業者からの営業電話がしつこくて困るということはありません。
また、査定で入力する情報も最短45秒~1分程度と非常に簡単なので、手間や時間についても心配無用です。一括査定で一番おすすめのサイトは下記のイエウールですが、イエウールの評判や詳細は、リンク先の記事でチェックしてみてください。
物件情報サイトを見る
いわゆる「普通の物件情報サイト」を見ることも重要です。今の一戸建てが購入したものだったら、あなたも買うときに見ていたかと思います。
相場というのは「実際に売られている価格」に近いものですから、こうした「普通のサイト」は、意外に役立つ情報源です。立地・築年数・エリアなどの条件が自分の一戸建てに近い物件を探して、相場の参考にするといいでしょう。
なお、中古住宅の物件情報サイトは多くありますが、野村不動産グループが運営している「ノムコム」も特に人気です。ノムコムの詳細は下の記事をご覧ください。
地元の不動産屋を回る
昔ながらの方法ですが、これが有力なケースもあります。「地元の人間の方が、その物件の良さがわかる」というケースです。


もしあなたの物件が「地元の業者に好印象を持ってもらえるもの」だったら、地元の小さな不動産屋も多く回るべきでしょう。
一括査定に登録していない優良業者は多い
意外に、一括査定サービスに登録していない優良業者は多く存在します。彼らが登録しない理由は「すでにいい物件が揃っていて事業も好調なので、特にあれこれ手を出す必要がない」ということです。
もちろん、ただ単に経営者が高齢でインターネットを使いこなせていないという「典型的な田舎の古い不動産屋さん」も存在します。しかし、必ずしもそのような「さびれた業者」だけでなく、堅実な優良業者も多く存在しているということです。
このため、一括査定を受けつつも並行して「地元の業者を回ってみる」というのも、余裕があればおすすめします。


レインズで取引事例を調べる
レインズとは、簡単にいうと「不動産売買のデータベース」です。正式な説明は下のようになります。
「レインズ(REINS)」とは国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムです。
レインズとは?(公益財団法人・東日本不動産流通機構)


以前、レインズは不動産業者しか見ることができませんでした。しかし、現在では一般人でも見られるようになっています。
エリアなどの条件を絞り込んで、近隣の売買事例をチェックできるため、一戸建てを売るときの相場も判断しやすくなります。
不動産情報サイトのデータベースを使う
レインズは公的なものですが、同様のデータベースで、民間の不動産情報サイトが運営しているものもあります。もっとも評判がいいものは、東証1部上場企業のリブセンスが運営するイエシルです。
首都圏&マンション限定という条件ではありますが、過去の豊富な売買事例がデータベースになっており、無料の会員登録をすることで、その情報にアクセスできます。
レインズの公的な情報と合わせ、このような民間のサービスを併用することで、不動産の相場をより理解しやすくなるでしょう。


当然ながら、中古の一戸建てを買う人のすべてが「戸建て」に限定しているわけではありません。「マンションか戸建てか迷っている」という人も多くいます。
そのような人も含めて「大体いくらで売れそうか」を考えるなら、マンションの動向も一戸建ての動向と同じように役立つわけです。
なお、イエシルと同じくマンション限定で売買事例のデータベースを提供しているリノシーというサービスがあります。リノシーと運営会社のGAテクノロジーズの詳細は、下の記事をご覧ください。
一戸建ては売るか、貸すか
手元に一戸建てがあるとき「売るべきか、貸すべきか」で迷うことは多いでしょう。この判断をするためには、双方のメリット・デメリットを把握する必要があります。
ここでは下記のように「売る・貸す」の両方で、メリットとデメリットを解説していきます。
以下、それぞれの説明です。
売るメリット・デメリット
一戸建てを売るメリット・デメリットをまとめると、下の通りです。
メリット | まとまったお金が入る・賃貸経営の手間がかからない |
---|---|
デメリット | 利益が出ると税金がかかる・長期的な収入は得られなくなる |
一番解説が必要なのは「利益が出ると税金がかかる」というデメリットです。この点について解説します。
一戸建てを売って利益が出ることは少ない
意外かもしれませんが、ほとんどの一戸建ての売却では利益が出ないのです。「そんな馬鹿な。無料でたたき売りするわけがないだろう」と思うかもしれません。
もちろん、一戸建ては数百万円や数千万円で売ります。それでも「利益がでない」ことが多いのです。その理由を説明します。
「一戸建てを買ったときの費用」がコストと計算される
利益とは「売上-コスト」で計算します。そして、一戸建てを売ってもらえる金額は「売上」です。ここからコストを引いて残ったお金が、利益となるわけです。
そして、多くの人は一戸建てを最初に「買って」います。たとえば2000万円で買ったとしましょう。そして、その一戸建てが将来2000万円以上で売れるでしょうか。


赤字なら税金はかかりません。これは一戸建てを売るときだけでなく、個人事業や法人の事業など、すべてて共通するルールです。
また、仮に多少値上がりしたとしても、仲介手数料や登録免許税などもコストになります。これらのすべてのコストを上回って利益が出たとしても、その金額は微々たるものでしょう(バブルでもない限り)。
利益が出ても少額であれば、その少額にかかる税金も大した金額ではありません(大体20%程度の税率です)。
このため、実は一戸建てを売るデメリットである「税金」は、それほど気にしなくていいのです。


もちろん、賃貸経営の才能がある人だったら「長期的な賃貸収入を得られなくなる」というデメリット1つで、大きな打撃となるでしょう。逆に言えば、そのような能力や興味がない人にとっては、一戸建てを売ることのデメリットはそれほどないということです。
なお、一戸建てに限らず不動産全般で、売るなら一括査定を最初に受けるのが一般的です。一括査定はこの記事でもいくつか紹介していますが、下のHOME4U(ホームフォーユー)もおすすめできます。興味がある方はリンク先で詳細をチェックしてみてください。
貸すメリット・デメリット
一戸建てを貸す(賃貸に出す)メリット・デメリットは、下の通りです。
メリット | 長期的に収入を得られる |
---|---|
デメリット | 物件管理の手間がかかる・まとまったお金が入らない |

(一般的には貸すメリットとして「多額の税金がかからない」ということが指摘されます。しかし、そもそも多額の税金は、売却でもかからないというのが先ほどの説明です)


賃貸経営を業者に委託するのは?
ここで多くの人が思うのは「賃貸経営を自分でしなくても、業者に任せればいいのでは?」ということでしょう。もちろん、そうしているオーナーさんは多くいます。そして、成功している方も多いものです。
しかし、失敗している方もそれなりにいます。具体的には下のような状態です。
- 空室が長期間続いている
- 修繕費などで赤字になっている


どれだけ業者が頑張っても、極端な話「近くに学校も駅も大きな会社もない」という立地では、高い家賃で入居者を呼び込むのは難しいでしょう。もちろん家賃を下げれば入居者を見つけられるでしょうが、それで利益を出せるかどうかという問題が生じます。
賃貸経営は立派な「事業」である
何となく賃貸経営は「誰でも物件を買えばできる」というイメージがあるかもしれません。しかし、たとえマンション一室であっても「立派な事業である」という意識を持つべきです。
わかりやすくいうと「飲食店を開業する」というのと同じです。素人が何も勉強せずに適当に物件を買って開業しても、飲食店がうまくいくはずはないでしょう。
同じように、賃貸経営でも「適当に物件を買って業者にまかせれば上手くいく」ということはないのです。事業である以上、事前によく研究し、物件選びの段階から勝負をかけなければいけません。


もし賃貸で勝負するのであれば、お客さん(入居者)の視点に立って、賃貸情報サイトをよく研究する必要があります。賃貸情報サイトで特に人気があるのはスマイスターです。
スマイスターの評判や詳細は下の記事でまとめているので、一戸建ての賃貸を検討している方は、参考にしてみてください。
一戸建てを売る理由ランキング・ベスト5
一戸建てを売る理由で、ライフルホームズがとったアンケートのベスト5は下のようになりました。
ライフルホームズは東証1部の上場企業の「LIFULL」が運営する不動産情報サイトです。ライフルホームズについては下の記事を参考にしてみてください。
以下、それぞれの理由について解説していきます。
1位…より良い家に住み替える
1位は前向きな理由です。自分で建てたマイホームだったら売ることはないかもしれませんが、親から継いだ古い家などに住んでいた場合、その一戸建てを売ってより良い家に住み替えるということもあるでしょう。
2位…お金が必要になった
2位は少々ネガティブな理由でした。もちろん、ポジティブな理由でお金が必要になることもあるでしょう。
ただ、大抵の場合は「お金が必要で家を売る」というと、住宅ローンを含めたあらゆる支払いができなくなった、ということが多いものです。


切実な理由ではありますが、これが2位になったというのは、同じような状況になっても「仲間が多くいる」ということ。人によっては安心できるかもしれません。
3位…今が売り時と考えた
これもポジティブな理由です。東京などはアベノミクスや東京五輪開催決定によって不動産バブルが続いているため、このような理由で売った人は多くいるでしょう。
また、バブルというほどの好景気でなくても「今後はどんどん値段が落ちていくから」と、築30年目前などのタイミングで売ることもあるでしょう。
何にしても、このような売り方は賢明だといえます。
4位…仕事の転勤
これは左遷か栄転かによって、ポジティブかネガティブかが変わります。しかし、せっかくの一戸建てを売って転勤というのは、少々後ろ髪を引かれる気持ちになるかもしれません。
昔サラリーマン川柳で「マイホーム 建てて本人 一人旅」という一句がありました。このアンケートでは家を売っているので、単身赴任にはなりません。しかし、売らなければこの川柳の通りになる状況でしょう。
5位…相続したが要らなかった
親が亡くなるなどして、一戸建てを相続することもあるでしょう。しかし、現時点で住んでいる家があるわけですから「いらない」と思うことも多いはずです。
特に仕事場から離れている場合には、住みたくても住めないでしょう。このような理由で「相続した一戸建てをすぐに売る」というケースは多く見られます。
(一戸建てではなく土地ですが、親から相続した不動産の売却や名義変更については、下の記事で詳しく解説しています)
一戸建てを売るときの手数料
「一戸建てを売るとき、手数料はいくらかかるのか」という点も気になるところでしょう。「手数料」の定義が人によって多少異なりますが、主に下の3つといえます。
以下、それぞれ詳しく説明していきます。
仲介手数料…売買価格の3%+6万円
一戸建てを売るときにかかる費用で、正式に「手数料」という言葉が使われるのは、主に仲介手数料です。不動産会社に対して払うお金ですが、この相場は下のような計算式になっています。
売買価格の3%+6万円+消費税
6万円に消費税がかかると、8%の現在では「6万4800円」となります。つまり、上の計算式はこうなります。↓
売買価格の3%+6万4800円+消費税
続いて「売買価格の3%」にかかる消費税ですが、「3%×0.08」なので、0.24%となります。
- 仲介手数料…3%(売買価格の)
- 仲介手数料にかかる消費税…0.24%(売買価格の)
上記を合計すると、売買価格の「3.24%」となります。これを先ほどの「6万4800円」と合計するわけです。そうすると、最初の計算式が下のようになるわけですね。
売買価格の3.24%+6万4800円
これで、たとえば売買価格が1000万円だったら、その3.24%は「32万4,000円」となります。「32万4000円+6万4800円」なので、38万8800円が仲介手数料です。


「1000万円で40万円」として早見表をつくると、下のようになります。
100万円 | 4万円 |
---|---|
500万円 | 20万円 |
1000万円 | 40万円 |
2000万円 | 80万円 |
5000万円 | 200万円 |
あくまで大雑把な目安ですが、すばやく計算したいときには役立てていただけるでしょう。


個人売買については下の記事で詳しく解説しているので、興味がある方は参考になさってみてください。
印紙税…1000円~3万円
印紙税とは「契約書に貼る収入印紙の代金」です。収入印紙は切手のような形状なので「契約書の切手代」とイメージするとわかりやすいでしょう。
辞書の説明は下のようになります。
経済取引などに関連して作成される文書にかかる流通税。
コトバンク「印紙税」
仲介手数料は不動産会社に支払う手数料でしたが、印紙税は「役所に支払う手数料」といえます。
印紙税の金額
これは売買価格によって異なります。売買価格が高いほど、印紙税も高くなる仕組みです。
100万円超~500万円以下 | 1000円 |
---|---|
500万円超~1000万円以下 | 5000円 |
1000万円超~5000万円以下 | 1万円 |
5000万円超~1億円以下 | 3万円 |


ちなみに、1億円超~5億円以下の印紙税は「6万円」となっています。そして、ここでいう売買価格とは売買契約書(不動産譲渡契約書)に記載された金額です。
印紙税は2通分必要だが…
印紙税は「売買契約書に貼るもの」です。そして、一戸建てを売るときの契約書は2通作成します。売主・買主のそれぞれが1通ずつ持つわけです。
そのため、印紙税も合計で2通分必要になります。つまり、1000万円超~5000万円以下だったら、1万円ではなく2万円必要です。
ただ、これは片方が2通分負担する場合です。実際には、売り主と買い主でそれぞれ1通ずつ負担するのが慣例となっています。このため、印紙税は上の表の通りの「1通分の金額」と考えてかまいません。

登記費用…案件によるが、数万円~10万円程度
登記費用とは、文字通り「不動産の登記にかかる費用」です。これで「絶対にかかるもの」は、登録免許税のみです。
登録免許税は「売買価格の2%」
登録免許税とは「登記の手数料」です。一戸建てを売ると、新しい所有者の名義を、登記簿に登録する必要があります。
その作業を国(法務局)に依頼する手数料が登録免許税です。この税率は、売買の場合は「2%」と決まっています。
売買金額ごとの登録免許税・早見表
実際に登録免許税がいくらになるのか、売買価格ごとの早見表を作ってみましょう。
100万円 | 2万円 |
---|---|
500万円 | 10万円 |
1000万円 | 20万円 |
5000万円 | 100万円 |
上記の目安金額を使えば、おおよその登録免許税を簡単に計算できるでしょう。一戸建てを売る場合は安くて500万円、高くて5000万円程度のケースが多いため「登録免許税は、10万円~100万円」と考えるといいかと思います。


司法書士に依頼する場合は、司法書士報酬もかかる
登録免許税の次に大きな登記費用は「司法書士報酬」です。これは文字通り、司法書士に払う手数料です。
一戸建てを売るときに司法書士がする仕事は、主に「名義変更」です。名義変更での司法書士費用の相場は、下の記事を参考にしてみてください。
司法書士に依頼せずに一戸建てを売れるか
これは売れます。法律の知識があり、こうした手続きに慣れている人であれば、自力で登記することも不可能ではありません。
不動産の手続きで司法書士が必要かどうかについては、下の記事で詳しく解説しています。
一戸建てを売るのは、ローンが残っていてもできる?
「住宅ローンがまだ残っているけど、一戸建てを売ることはできるのか?」という点が気になる人もいるでしょう。これについてポイントをまとめると下のようになります。
以下、それぞれのポイントについて説明します。
任意売却ならできる
住宅ローンが残っている一戸建てを売ることは、任意売却なら可能です。任意売却とは「ローンが残っている家を売って、その代金を返済に当てるような売却」を指します。
銀行や金融機関としては、ローンを完済してくれることが何より重要なわけです。そして、家を売ろうが売るまいが、最終的に全額返済してくれるなら、銀行の側には何もデメリットがないわけですね。
そのため、任意売却だったらローンが残っている一戸建てでも売ることができます。
売っても完済できない場合はどうなる?
これは「残債を普通に返済していく」ことになります。本来、住宅ローンは「普通に返済する」ものです。毎月のお給料などから返済するもので、残りはそのように返すというだけです。
任意売却できないケースは?
任意売却ができないケースもあります。たとえば下のような状況です。
- 銀行が許可しない
- 連帯保証人が反対している
- 競売が目前である
他にももっと多くのケースがあります。詳しくは下の記事を参考になさってみて下さい。
まとめ
以上、一戸建てを売るときに役立つ情報を、総合的にまとめてきました。最後に要点を整理すると下のようになります。
- 相場の調べ方は、一括査定・物件情報サイト・レインズなど
- 売るメリットは「まとまった一時金が入る、手間がかからない」
- 貸すメリットは「長期的な収入を得られる」こと
- 賃貸経営はそれなりの努力やセンスが必要なことを意識すべき
- 手数料は仲介手数料・印紙税・登録免許税など
- ローンがあっても任意売却なら一戸建てを売れる
「一戸建てを売る」というテーマは非常に幅が広いものですが、それぞれ必要な情報を見つけて、参考にしていただけたら幸いです。一括査定やレインズなどのサービスを有効に活用しながら、一戸建ての売却や賃貸を成功させてください。