不動産の価格を調べていて、必ず目にする単語が「公示地価・実勢価格」です。
- 両者の違いは何か
- 実際にはどのくらい乖離するのか
上記のような疑問を持つことも多いでしょう。この記事では、これらの疑問に答えつつ、公示地価と実勢価格の違いや、それぞれの詳しい意味について解説していきます。
公示地価と実勢価格だけでなく「不動産の価格自体について知りたい」という方にも、きっと参考にしていただけるでしょう。
なお、不動産の適正価格で迷ったら、状況によっては不動産鑑定士に依頼するのがベストです。鑑定費用の相場など、不動産鑑定士についての詳しい情報は、下の記事でまとめています。
公示地価と実勢価格の違い
公示価格と実勢価格の違いで、特に重要な部分をまとめると下のようになります。
以下、それぞれ解説していきます。
国が決めるか、市場が決めるか
公示地価と実勢価格の違いは「どこが決めるか」です。それぞれ下のようになります。
- 公示地価…国(国土交通省)
- 実勢価格…市場(売手と買手)
それぞれの詳しい説明は、下の2つの段落を参考にしてください。
乖離率は最大170%程度
公示地価と実勢価格の意味は知っていて「どのくらい乖離するのかを知りたい」という人もいるでしょう。これは「乖離率」でいうと「最大170%程度」となります。
これは毎年異なるのですが、2010年に三井住友トラスト不動産が公表したデータでは、上位3つのデータが下のようになっています。
- 東京都墨田区…168.3%
- 神奈川県川崎市中原区…152.0%
- 東京都江東区…147.4%
1位の墨田区が「168%」なので、「大体170%程度」となります。
低い方の乖離率は?
これは「100%」で固定です。100%より低い乖離率(90%など)はありません。


実勢価格の計算は「公示地価の1.1~1.2倍」
一般的に「実勢価格は公示地価の1.1倍~1.2倍」とされています。これは明確なルールがあるわけではなく「統計上そうなることが多い」ということです。
この計算で大体固定されるのは、実勢価格はそもそも「他の取引事例」を参考にするためです。一度「公示地価の1.1倍~1.2倍」という相場が生まれると、その後の取引もそれに合わせて計算されるため、いつの間にか「公示地価の1.1倍~1.2倍」という計算方法が確立されたのです。
公示地価とは「国が決める地価」のこと
公示地価とは、簡単にいうと「国が決める地価」です。より詳しく箇条書きすると、下のようになります。
以下、それぞれ詳しく説明していきます。
国土交通省が決める
公示地価は「公」という字が入っている通り、役所が決める地価です。どの役所かというと「国土交通省」となります。
毎年の公示地価も、国土交通省の公式サイトでデータベースとして公開されています。
毎年1月1日時点の価格を示す
公示地価の価格は「毎年1月1日時点」のものです。その価格が永久、あるいは数年間保証されているというわけではありません。
1月1日の時点で決まった公示地価は、その後に1年間でどれだけ不動産相場が変動しようと、固定されます。
国交省が決めた地点(標準地)を対象に設定
当然ながら、日本中すべての番地に公示地価をつけるわけにはいきません。エリアごとに主な地点を絞り込んで、それぞれの場所に公示地価を付けます。
公示地価を直接つけられなかった地点では「最寄りの公示地価」を参考にして、不動産の相場を決めるわけです。
標準地は全国で約2万5000箇所
前の段落で書いた標準地ですが、全国で約2万5000か所となっています。毎年ある程度数が上下するのですが、2016年は25,720か所で公示地価が示されました。
地価公示法によって決められる
公示地価の根拠となっている法律(根拠法)は「地価公示法」です。宅地建物取引士の試験を受けるなど、不動産の分野に関わるのでなければ、ここまで覚える必要はありません。
しかし「ここまで書いてきた内容は、すべて地価公示法によって決められていること」という点を意識してください。
実勢価格とは「実際に売買される価格」のこと
実勢価格を一言でいうと「実際に売買される価格」です。ポイントを箇条書きすると、下のようになります。
以下、それぞれのポイントについて説明します。
極端な価格でも、実際に成立したなら実勢価格
「実際に売買される」という言葉の意味は「実際に取引が成立した」という意味です。どれだけ極端な価格だったとしても「実際に成立したなら、それが実勢価格」なのです。


実勢価格が「不正に操作される」ことは少ない
この理由は、税金がかかるためです。「不正な取引をくり返すたびに税金がかかる」→「そのデメリットの方が大きい」という状態になります。
特に負担になる税金を一覧にすると、下の通りです。
- 不動産取得税
- 消費税
- 登録免許税


法人税・所得税と比較して、上記の3つの税金は「不動産の売買をするたびに必ずかかる税金」です。「変な価格での売買」を行うたびにこれらの税金を払っていたら、最終的には損をする確率が高くなります。
このため「極端な価格でも実勢価格と認める」→「しかし、それで実勢価格が不正に操作されることはない」といえるのです。
取引事例がない物件の実勢価格は「推定」で決まる
当然ながら「まだ一度も売買されたことがない」という物件もあります。たとえば下のようなケースです。
- 先祖代々の土地である
- 最初は買ったわけではなく、ご先祖様が開墾して手に入れた
- だから、これまで一度も値段がついたことがない
これは特に極端な事例ですが、このように「一度も値段がついたことがない」という不動産は多くあります。その場合「実際に取引された価格」が存在しません。
そのため、そうしたケースで「実勢価格」と書かれているときは、近隣の取引事例を参考にした「推定値」と考えて下さい。
広告の販売価格は実勢価格ではない
ライフルホームズなど、不動産の物件情報サイトを見ていると、当然ながらどの物件にも値段がついています。しかし、これは「販売価格」であり、実勢価格ではありません。


販売価格は売り主の「希望価格」である
広告に記載されている販売価格は、あくまで売主が「この金額で売れたらいいな」と思って示している価格です。一言でいうと「希望価格」となります。
「小売希望価格」という言葉は誰でも聞いたことがあるでしょう。実際の商品は、この希望価格より安く売られていることがほとんどです。
つまり、物件が希望価格で実際に取引される例は少なく、この点で「実勢価格」にはならないわけです。

実勢価格の推定方法
実勢価格の推定では、下のようなデータが用いられます。
- 公示価格
- 周辺の取引事例
- 路線価
- 固定資産税評価額


公示地価と公示価格の違い
公示価格と公示地価の違いをまとめると、下のようになります。
簡単にいうと「公示価格は、公示地価より大きい分類」ということです。以下、それぞれ詳しく説明します。
公示地価は「国」が示す
公示地価は冒頭で書いた通り「国土交通省」が示すものです。つまり「国が示す数値」といえます。
基準地価は「都道府県」が示す
公示地価と似た言葉で「基準地価」があります。これは「都道府県」が示すものです。
2つを合わせて「公示価格」と呼ぶ
ここで公示価格が登場しますが、上に書いた2つ「公示地価・基準地価」を合わせて、公示価格と呼びます。


まとめ
以上、公示地価・実勢価格の違いや、乖離率・計算方法などについてまとめてきました。最後に要点を整理すると下のようになります。
- 公示地価は、国が決める地価
- 実勢価格は、市場で決まる地価
- 乖離率は、最大で170%程度
- 計算方法は「実勢価格=公示価格の1.1倍~1.2倍」が一つの目安
こうした不動産の価格についての知識があると、売買の交渉なども有利になります。これから不動産を売ろうとしている人、買おうとしている人は、ぜひ価格に関する用語も理解するようにして下さい。