共有名義の不動産は何かと厄介なことが多いもの。それを「相続する」となると、さらに話が複雑になります。そのような「共有名義の不動産の相続」に直面し、悩んでいる方もいるでしょう。
この記事では、そのような方の悩みに応えるため、共有名義の不動産の相続について解説します。家(一戸建て)・マンション・土地と、すべての種類の不動産について説明するため、あらゆるケースで参考にしていただけるでしょう。
共有名義の不動産を相続する際、売却を考える人は多くいます。しかし、共有名義の不動産は多くの業者が苦手とする物件で、買い取ってもらえないことも多いもの。買い取りしてもらえたとしても、本来の価値より大幅に安い金額になってしまうことも多くあります。
その点、共有名義専門の業者であれば、スムーズに買い取りしてくれるだけではなく、買取価格も高くなると期待できます。そのような共有持分を専門とする業者の中で、特におすすめできるのが、クランピーエステートです。
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- 共有名義の不動産を相続するとどうなるのか
- マンション・一戸建て・土地それぞれでのポイント
- 共有名義の不動産の相続を放棄する方法(2つ)
Contents
共有名義の不動産を相続するとどうなる?
まず、一戸建てやマンションなどの種類に関係なく「共有名義の不動産を相続するとどうなるのか」という点が、一番気になるでしょう。これについてポイントをまとめると下のようになります。
以下、それぞれのポイントについて説明します。
亡くなった人とあなたが入れ替わるだけ
共有名義の相続でも、通常の相続と変わることはありません。亡くなった方とあなたが、そのまま入れ替わるだけです。
たとえば、太郎さんのお父さんが、お父さんの兄弟と不動産を共有していたとします。お父さんの兄弟なので、太郎さんにとってはおじさんです。
下のように、3分の1ずつ土地を持っていたとします。
- 長男…3分の1(※太郎さんのお父さん)
- 次男…3分の1
- 三男…3分の1
ここで「長男」である太郎さんのお父さんが亡くなったので、共有関係は下のようになります。
- 太郎…3分の1
- 次男…3分の1
- 三男…3分の1


なぜ普通と感じないかというと、もう一つ「あり得るパターン」があり、そちらになると勘違いしてしまうためです。そのパターンについて説明します。
他の共有者の持分が増えることはない
他の共有者、上の例でいうと次男・三男が勘違いしてしまいがちなことがあります。それは「長男が死んだら、その持分が自分たちのものになるはずだ」ということです。
つまり、親から子という「縦」の相続ではなく、兄から弟という「横」の相続になると思ってしまうということです。実は、家族構成によってはこれもあり得るのですが、故人に子どもや奥さん(配偶者)がいたなら、そちらが相続します。
人が入れ替わるだけで、権利の強さ・ルールは同じ
上記のように、お父さんと太郎さんという「人」だけが入れ替わります。それ以外は何も変わりません。
- 持ち分の多さ
- 権利の強さ
- 売却や賃貸に関するルール
これらのものは、すべて故人が亡くなる前と同じです。
血縁が遠くなる分、人間関係が複雑になる
一番変わるのは「人間関係」です。例外的なケースを除けば、新しい共有者は、昔からの共有者と血縁が遠くなります。
上の例でいうと、太郎さんのお父さんは、他の共有者と「兄弟」でした。これは近しい関係です。
しかし、太郎さんに変わると「叔父さん・甥」です。以前より1親等遠い関係になっています。
もちろん、それでトラブルが起きるとは限りません。しかし、一般的に血縁が遠くなるほどトラブルが起きやすくなります。
これが、共有名義の不動産の相続と、単独名義での相続の一番の違いといえるでしょう。
共有名義のマンションの相続・4つのパターン
マンションが共有名義になっている場合、その使用状況は下の4通りのいずれかです。


共有者「全員」で住んでいる
もう一度、太郎さんの例を出します。下の共有者全員で住んでいたとしましょう。
- 長男(太郎さんの父)
- 次男(おじさん)
- 三男(おじさん)
この状態で、太郎さんはすでに社会人となり、一人暮らしをしていたとします。すると、お父さん(長男)が亡くなったことで、マンションに住む人は下のようになります。
- 次男
- 三男


しかし、当然ながら太郎さんが住みたがるとは限りません。「今の一人暮らしが気に入っているので、おじさんたちと共同生活をする気はない」ということも多いでしょう。
太郎さんは家賃をとれるのか
上のケースで、太郎さんがビジネスライクな人だったら「おじさんから家賃をとる」ことを考えるでしょう。たとえば3DKだったら下の領域は太郎さんのものだからです。
- 洋室1部屋
- DKの3分の1
「DKの3分の1」というのは、もちろん境界線のようなものを引くわけではありません。「自由にDKを使う権利」の3分の1だと思ってください。「3分の1の空気」と考えるとわかりやすいでしょう。
この状態なので、太郎さんがその気になれば、少なくとも「洋室1部屋」への立ち入りは禁止できるのです。「それが嫌なら家賃を払え」と、太郎さんがおじさん2人に言うこともできます。


とはいうものの、中には「親戚から家賃をとるのか」と、家賃を払わないおじさんもいます(おじさんというのは、もちろん例え話です)。
「共有名義の相続が難しい」のは、このような「人間の性格がからむケース」です。ルール自体は、まったく難しいことはありません。
共有者「数人」で住んでいる
これは、例えば下のような状態です。
- 長男…住んでいる
- 次男…住んでいる
- 三男…住んでいない

そして、毎回のごとく長男が亡くなったとします。すると、住んでいる人は「次男だけ」になります。
この場合、特に難しいことはありません。「全員ですんでいた場合」と同じように、下のような状態になります。
- 残された人(次男)が住み続ける
- 他の共有者(三男&長男の子ども)が家賃をとるかは自由


このように「数人で住んでいた」場合は、「全員で住んでいた」場合と大体同じです。
共有者「1人」で住んでいる
これは、その共有者が「死亡したとき」に少々複雑になります。生きている分には、難しいことは何もありません。上の段落で説明した「次男だけが住み続ける」状態と同じです。
住んでいた1人の共有者が死亡した場合
こうなると、マンションに住む人がいなくなります。たとえば太郎さんの父親が亡くなり、太郎さんが引っ越してきて「代わりに住む」というならいいでしょう。
しかし、大抵そうはなりません。太郎さんが引っ越してこなければ、マンションは空室になります。もちろん、次男・三男も住む気はありません(彼らが住むなら、ここまで説明してきた内容になるので、解決です)。
誰も住まないとなると、大抵は売却か賃貸を考えるでしょう。売却については、誰も住む気がないのだから、反対されることはないかと思います。
賃貸については「どんな人が住むかわからない」などの理由で、共有者の誰かが反対するケースもあります。


- 反社会勢力の人間が住む
- 住んだ人が自殺・孤独死・殺人・火事を起こす
1つ目の「反社」は、住んでいることがわかるだけでも問題になります。「なぜ許可した」と、管理会社・管理組合などから詰問されるでしょう。「貸し出した人も、反社の一味ではないか」と疑うためです。
2つ目については、いうまでもないでしょう。事故物件になればその部屋はもちろん、マンション全体の価値が大幅に下落してしまいます。他のオーナーたちからも白い目で見られるでしょう。


このように「賃貸に反対する共有者がいる」というケースでは、どうなるのか気になるでしょう。
持分の過半数があれば賃貸に出せる
実は、持分の過半数(例えば面積の半分以上)を持っていれば、残りの共有者が反対していても賃貸に出せます。相続したあなた1人でも、過半数の面積を持っていれば、賃貸に出せるのです。
もちろん、1人でなくても「片方のおじさんと合わせて3分の2」という状態でも賃貸に出せます。このような「共有名義での賃貸のルール」については、下の記事で詳しく解説しています。
共有者「誰も」住んでいない
この場合「もともと賃貸に出していた」ことが多いでしょう。入居者がいるかいないかは置いておき、「賃貸用にしていた」というケースが多いはずです。


賃貸に出していた場合、特に変化はない
上の段落で書いたケースでは「賃貸でなかった」→「賃貸にしたい」→「他の共有者の許可が必要」ということで、少々難しいものでした。しかし、今回のケースでは「最初から賃貸に出している」ので、難しいことは何もありません。
共同オーナーの1人の名前が変わるだけです。「太郎の父→太郎」という変化ですね。
相続した人が賃貸に反対したときのみ、変化が起きる
このケースでは「太郎さんが相続に反対する」としたら、変化が起きることがあります。もちろん、太郎さんの持分が半分未満だったら、変化は起きません。
しかし、半分以上だったら変化が起きます。太郎さんの判断ひとつで、賃貸をとりやめにしてもいいのです。


共有名義でのマンションの相続・まとめ
以上、共有名義のマンションを相続する場合の4つのパターンについて解説してきました。ここでは賃貸をメインに説明してきましたが、共有者全員で一致して売却することもあるでしょう。
マンションの売却では、専用の一括査定サイトや情報サイトを使うのが便利。ここ数年、マンション専用の不動産情報サイトとして人気を博しているのがIESHIL(イエシル)です。
東京・神奈川・千葉・埼玉という首都圏限定のサービスではありますが、このエリアで共有持分のマンションを相続した場合は、イエシルをチェックしてみると役立つでしょう。イエシルについて興味がある方は、下の記事を参考にしてみてください。
共有名義の一戸建て(家)の相続
一戸建て(一軒家)を共有名義で所有していることもあるでしょう。それを相続するとどうなるか、ポイントをまとめると下の通りです。
以下、それぞれ解説していきます。
基本的なルールはマンションと同じ
共有名義の一戸建てでも、相続のルールはマンションと同じです。詳しくはマンションの段落を見てください。
独特のルールは「借地権」
一戸建て独特のルールとして「借地権」があります。「借地権は、相続するとどうなるのか」というのは、知らない人も多いでしょう。
借地権の相続に地主の承諾は不要
一番気になるのは「借地権を相続するとき、地主の承諾が必要かどうか」でしょう。結論をいうと不要です。
極端な話、地主に一切連絡しなくても「自動的に相続する」ことになります。ただ、連絡するのは借地人の礼儀でもあり、後々のトラブルを避けるためにも必要なことなので、連絡は必ずしましょう。
承諾不要なので、承諾料も払わなくていい
承諾が不要ということは「承諾料」も支払わなくていいということです。このルールを知らない借地人に対して「相続するときに承諾料が必要だから払うように」と要求する地主もいます。
単純に地主も法律を知らないということもあるので、必ずしも悪意があるとは限りません。ただ、払わなくていいのは事実です。そのため、承諾料を要求されても「払いたくないなら払わなくていい」ということを理解しておきましょう。


他の共有者が地主の場合も、承諾不要
一戸建ての共有では、下のようなパターンも考えられます。
- 建物…長男のもの
- 土地…次男のもの
長男・次男というのは、もちろん例え話です。「建物・土地」に分けて共有したわけですが、この場合、法律上は「次男が地主」となります。
この場合も、地主=次男の許可をとる必要はありません。許可なしで相続できます。

共有名義の土地の相続
土地の場合、マンション・一戸建てとは違う大きな特徴があります。要点を箇条書きすると、下の通りです。
以下、それぞれ詳しく説明していきます。
土地は「分筆」できる
土地と家(マンション・一戸建て)の一番の違いは「土地は分筆できる」ということ。つまり「切り離せる」のです。




一戸建てを分筆できるケース
これは「分割しても機能する」ような家です。たとえば「分離型二世帯住宅」があります。
「分離型」という名前通り、玄関・お風呂・トイレ・キッチンなど、すべてが別々になっています。わかりやすくいうと「1階と2階で、別の家が合体しているようなもの」です。


分離型も含め、二世帯住宅については下の記事で詳しく解説しています。
このように、一戸建てであれば例外的に「分筆できる」こともあります。しかし、普通の一戸建ては分筆できません。それに対して、土地は比較的自由に分筆できます。
土地の価値が落ちるので、分筆しないことが多い
土地は分筆できるのですが、実際には分筆することは少ないものです。理由は「土地の資産価値が落ちてしまう」ことにあります。


共有名義を解消する「共有物分割」を行う
相続したときは特に、共有名義を面倒に感じるもの。そのときに共有名義を解消する方法が「共有物分割」です。この方法は下の4通りです。
- 現物分割…土地を普通に分ける(分筆)
- 代金分割…全員で一緒に売って、そのお金を分ける
- 全面的価格賠償…自分の持分を、他の共有者に買い取ってもらう
- 部分的価格賠償…1・3の合体。分筆して、不公平になった分をお金で埋め合わせてもらう




このような理由から「共有持分を勝手に一人で売る」ということは、相続した土地でもあまり実行されません。ただ、やろうと思えばできるので、やりたい方は下の記事を参考にしてみて下さい。
「共有物分割」に反対されたら、訴訟もできる
共有物分割は「勝手に共有者の誰かが持分を売る」よりは、遥かにマシな方法です。しかし、それを理解せずに感情的になって反対する共有者もいます。
このような場合「共有物分割訴訟」を起こすことが可能です。上に書いた分割の方法を「裁判所に認めてもらう」ものです。
共有物分割訴訟の詳しい説明は、下の記事をご覧ください。
農地の場合
土地の中には、田んぼや畑などの農地もあるでしょう。宅地なら不動産会社も簡単に買い取ってくれますが、農地になると難しいものです。農地を相続した場合の売り方については、下の記事で詳しくまとめているので、こちらを参考にしてみてください。
また、農地を宅地に転用して売る方法については、下の記事で詳しく解説しています。
山林の場合
農地と同様に、相続しても扱いに困るのが山林です。山林の売り方については下の記事で詳しく解説しているので、こちらを参考にしていただけたらと思います。
共有名義の不動産の相続を放棄する2つの方法
共有名義の不動産に明らかに価値がない場合、相続を放棄したいというケースもあるでしょう。その場合、下の2通りの方法があります。


相続放棄をする
相続放棄は非常にシンプルな方法です。文字通り「相続しません」といって、すべてを放棄します。これは下のように、民法で規定されている権利です。
相続人が自己について開始した相続の効果を拒否する意思表示 (民法 938以下) 。
コトバンク「相続放棄」
相続放棄が選ばれるケース
相続放棄は、主に「故人が借金を背負っていた」というケースで選ばれます。相続すると借金も受け継ぐ必要があるため、それを放棄するのです。
その代償として「その他の価値がある資産も相続できない」というデメリットがあります。ただ、大抵借金を抱えていた故人には、価値のある遺産が少ないものです。そのため、故人に借金があった場合、相続放棄を選ぶデメリットはそれほどないといえます。
不動産の相続放棄を「すべきでない」ケース
上記のように、相続放棄のデメリットは「価値のある資産も相続できなくなる」ことです。つまり、遺産の中に「価値のあるもの」があったら、相続をした方がいいのです。
たとえば「高額の預貯金がある」「高級車を持っている」などです。こうしたケースでは、どれだけ相続したくない不動産だったとしても、相続した方がいいことがあります。
相続した後「共有名義の放棄」をする
「価値のある資産は欲しい。でも、変な不動産を相続するのはイヤだ」というジレンマはしばしば生じるものです。普通の単独名義の不動産の場合、このジレンマは解消できません。「変な不動産」を、そのまま自分のものにしなければいけないのです。
しかし、共有名義の場合は有利です。「変な不動産」だけ、後で手放すことができます。これが「共有名義の放棄」です。
共有持分は勝手に放棄できる
実は、共有名義の不動産は勝手に放棄できます。「いいのか?」と思われるかもしれませんが、他の共有者が自動的に引き取るルールなので、いいのです。
通常、不動産を持つのはいいこととされます。役所でも「固定資産税評価額」として、資産価値が記録されています。そのため、上記のようなルールになっているのです。
しかし、空き家や事故物件など「いらない不動産」もあるでしょう。このような不動産が共有名義の場合「いらない人から放棄していく」→「最後の1人に押し付ける」ということが可能です。
最後の1人は放棄できない
このルールは少々残酷なのですが、最後の1人の共有者(この時点で単独なので「所有者」ですが)は、その不動産を放棄できません。「放棄されたら国が困る」ためです。


このように「国も引き取ってくれない」ので、最後の一人になると「その不動産の責任をすべて背負わなければいけない」ことになります。このため、価値のない不動産の共有は「ババ抜きゲーム」にも例えられるのです。
何にしても、共有名義の不動産であればこのように「一度全部の資産を相続したあと、不動産だけ放棄する」という選択肢があります。多少の手間はかかりますが、これが一番「得する方法」といえるでしょう。

まとめ
以上、共有名義の不動産(家・一戸建て・マンション・土地) の相続についてまとめてきました。最後に要点を整理すると下のようになります。
- 故人と相続人が入れ替わるだけ
- 権利やルールが変わることはない
- 血縁が遠くなるため、トラブルがやや多くなる
- 土地については分筆をしやすい
- 分筆は価値が落ちるので、共有物分割をすることが多い
- 放棄は「相続放棄・共有名義放棄」の2通りがある
共有名義の不動産を持つことは、業界では「基本的に避けた方がいい」といわれています。権利関係が何かと複雑なためです。
相続でも、親族との関係などに不安要素があれば、できるだけ早期に処分する方法を考えるべきといえるでしょう。