「共有名義の土地や家を売却したとき、確定申告はどうすればいいのか」という点が気になっている人も多いでしょう。結論を簡単にまとめると、下のようになります。
- 基本は普通の確定申告と同じ
- 利益は持分割合に応じて計算する
- 経費も同じ
確定申告自体のやり方がわかっていれば、上記の説明でおおよそ理解できるでしょう。この記事では、上記のポイントを中心に、共有名義の不動産を売却したときの確定申告について、詳しく解説していきます。
なお、共有名義の不動産買取では、この分野専門の業者も存在します。中でも特に評判がいいのは、下記の「クランピーエステート」です。
同社の共有持分の買取りについては、リンク先の公式ページで詳細をチェックしていただけたらと思います。

- 弁護士との強力な連携で、高額査定を期待できる
- 弁護士・税理士と連携しているため、法律トラブルや税金面の問題がある場合はサポートが可能
- 関東エリア全域(群馬・千葉・神奈川・埼玉・東京・茨城)に対応
- 小型物件でも買い取り可能
- 共有名義の家・土地を売ったときの確定申告のポイント(3つ)
- 書類の書き方のポイント(5つ)
- 共有名義での委任状について
共有名義の土地・家を売却したときの確定申告・3つのポイント
最初に特に重要なポイントをまとめると、下の3点になります。
以下、それぞれのポイントについて説明します。
利益は持分の割合通りに分ける
共有名義の土地や家は、大抵「共有者全員が共同で売る」ものです。「自分の持分だけ売る」こともできるのですが、現実に買い手があまりいないため、大抵は「共同売却」となります。
そして、共同で売却したら利益は「ひとかたまり」で発生します。買い手からしたら、あなたたちの持分など関係ないので「まとめて5000万円」のように払うわけです。
こうして支払われた利益は、持分の割合に応じて分けます。たとえば「5人で、5分の1ずつ所有」という場合、「5000万円÷5=1000万円」が一人あたりの取り分(利益)となります。
経費も割合通りに計算
土地や家の売却には経費がかかります。不動産会社の仲介手数料や「その共有持分の購入にかかった費用」が主な経費です。




「赤字」というと悪いイメージがあるかもしれません。しかし、税金がかからないという点ではいいことです。
このため「購入時にかかった費用をどう按分するか」も重要になります。その割合も利益のときと同様、持分割合に応じて分ける」ということです。
たとえば購入時に3000万円かかって、3人で3分の1ずつの共有持分なら、1人あたりの経費(購入時の費用)は、1000万円となります。業者に支払う仲介手数料なども、同じ要領で分けます。
確定申告は共有者それぞれで別に行う
共有名義でも単独名義でも、土地や家を売却したら確定申告をします。そして、この確定申告は共有者全員が「それぞれ別」に行うものです。


確定申告を共同でするケースがあるとしたら「法人の確定申告」です。ただ、これもあくまで「1つの法人」が単独で行うので、やはり「確定申告は常に単独」といえます。

なお、確定申告も含めて共有名義の土地や家を売却するときは、あらゆる手続きを業者に任せるのがおすすめです。通常の不動産でも売却や確定申告の手続きは難しいものですが、共有名義になるとさらに難しくなるためです。
共有名義の買取業者については下の記事で詳しく解説しているので、興味がある方は参考になさってみてください。
譲渡所得・不動産所得の共有での書類の書き方・5つのポイント
共有名義の場合、確定申告などで譲渡所得・不動産所得について書類をどう書くのか―。これについてポイントをまとめると下のようになります。
以下、それぞれ詳しく説明します。
譲渡所得・不動産所得は違う
譲渡所得と不動産所得はよく混同されますが、両者は別のものです。これはWikipediaの下の説明を読んでもわかります。
不動産所得(ふどうさんしょとく)とは、所得税における課税所得の区分の一つであって、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得をいう(所得税法26条)。ただし、事業所得又は譲渡所得に該当するものを含まない。
Wikipedia「不動産所得」
最後の一文に「譲渡所得に該当するものは含まない」と書かれています。この文章は「不動産所得」についての説明なので、この最後の一文で「不動産所得・譲渡所得は別物」とわかります。
売却…譲渡所得、賃貸など…不動産所得
大雑把な分け方としては、それぞれ以下のようなものを指します。
譲渡所得 | 土地・家などを「売って得た」利益 |
---|---|
不動産所得 | 土地・家などを「賃貸して得た」利益、その他 |


書類での書き方はどちらも同じ
上のように、不動産を「売却」するのか「賃貸」するのかで、利益の名称が変わります。しかし、どちらの場合も「書類での書き方」は同じです。
共有名義でこれらの所得(譲渡所得・不動産所得)を得たとき、確定申告の決算書などに書くやり方は同じ、ということです。以下「どのように同じなのか」を説明していきます。
(1)利益は全体の金額でなく「持分」の分を書く
共有名義の土地・家を売却すると、まずは「全体での利益」が出ます。たとえば「共有持分すべての合計で5000万円」の物件だったら、5000万円の利益が出ます。
そして、決算書や収支内訳書では、この「5000万円」という数字は無視します。理由は下の通りです。
- 確定申告は「個人で」するもの
- そのため「自分の持分の利益」しか関係ない
そのため、持分に合わせて「自分の利益はいくらだったか」を計算します。上記の例で、あなたの持分が5分の1だったら、利益は1000万円です。
この1000万円を、あなたの「譲渡所得」として決算書・収支内訳書に記入します。


(2)減価償却費の計算も、持分に応じて行う
家やビルなど、建物の価値は「毎年減少」していきます。つまり、ある意味「毎年損をしている」わけです。
たとえばあなたが「1000万円の家」を買って、1年後に「100万円分価値が落ちた」としましょう。これは、資産の計算からいえば「あなたは100万円を失った」のと同じなのです。
このように「失ったお金=コスト」は経費にできます。経費が増えて利益が小さくなると税金が安くなります。
この「ロスした分」を計算するのが減価償却です。共有名義の場合、この金額の計算も「持分ごと」に行います。
なお、こうした書類の書き方を含め、共有名義の不動産を売却する方法は、下の記事で詳しく解説しています。
計算例
たとえば、先に出した「1000万円の家」の例だと、「毎年100万円が減価償却費になる」仕組みでした。もし、あなたが単独でこの家を持っていたら、あなたは「毎年100万円をコストに計上」できます。単純計算で、大体年間の税金が20万円~30万円ほど安くなります。
しかし、これが共有名義だと「100万円まるまるコスト」にはなりません。たとえばあなたの持分が「2分の1」だったら、減価償却できるのは「毎年50万円」となります。節税効果でいうと、大体毎年10万円~15万円程度です。
不動産売買を共有名義でするときの委任状
不動産売買は、委任状を書いて誰かにまかせることもできます。それは共有名義の場合も同じです。
共有名義の家・土地の売却で、委任状を使うケースについて説明すると、下のようになります。
以下、それぞれ解説していきます。
他の共有者が、代表者に取引を委任することが多い
共有名義で不動産を売却するとき「共有者全員が取引に参加しなくてはいけない」ということはありません。参加できない、したくないという共有者は「委任状を書くだけ」でOKです。
実際、共有名義の不動産の売却では、ほとんどがそのような形になります。家族や親族の人間関係に問題がない限り、一番取引の類に強い共有者にまかせてしまうのが簡単でベストだからです。
司法書士などに依頼するときも委任状が必要
代表者でなく、司法書士や弁護士などに手続きや取引を依頼することもできます。この場合はその司法書士・弁護士に対して委任状を書きます。
全員が一人の司法書士に任せるときはどうなる?
これは司法書士事務所のルールによりますが、一人で依頼するときよりは値段が高くなるのが普通です。やり取りする書類・人数が増える分、司法書士の負担も増えるためです。
ただ、人数は増えても仕事内容自体は同じ1件の売買です。そのため、通常よりは割安になります。
- 4人の単独所有者が、まったく別の案件をそれぞれ持ち込む
- 4人の共有者が、共同で1つの案件を持ち込む
同じ「4人分の仕事」でも、後者の方が司法書士報酬は安くなる(のが普通)ということです。不動産売却における司法書士の役割などは、下の記事を参考にしていただけたらと思います。
登記は司法書士、確定申告は税理士
ここまでは「売買の段階」について書いてきたので、仕事内容は「登記」になります。これは司法書士の役割です。
一方、売買した翌年の確定申告は税務になります。これは税理士の仕事です。
共有名義の確定申告はもともと「一人分で行う」ものなので、税理士の労力はほとんど変わりません。そのため、共有名義だから高くなる・安くなるということはないといえます。
(税理士事務所のルールにもよりますが、基本的にはほとんど変わりません)
まとめ
以上、共有名義の土地・家を売却するケースでの確定申告について解説してきました。最後にポイントまとめると下のようになります。
- 基本的には普通の確定申告と同じ
- 利益・経費の金額を「持分で割る」点が違う
- 減価償却費も持分割合に応じて計算
- 確定申告は共有者が一人ずつ別に行う
全体的に、確定申告に慣れている人だったら特に難しいことはありません。いつもやっている確定申告に「持分で割る」という作業が入るだけです。
もし心配な点があったら、税理士に相談するといいでしょう(相談後、法律的な疑問点があれば司法書士にも相談することになります)。