二世帯住宅は「売却が難しい物件」といわれます。あなたが現時点で売却を考えている場合、下のような点が気になることが多いでしょう。
- なぜ二世帯住宅は売りにくいのか
- うまく売却するにはどうすればいいのか
このような疑問に答えるため、当記事では下のような内容を解説していきます。
その他にも、売却時の税金に関する注意点など、二世帯住宅を売るときに役立つ情報を幅広くまとめていきます。あなたが二世帯住宅を売る上で、きっと役立てていただける内容になるでしょう。

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Contents
二世帯住宅の売却を成功させる4つのポイント
二世帯住宅の売却を成功させたい場合、下の4つのポイントを意識するといいでしょう。
以下、それぞれのポイントについて説明します。
完全分離型なら「テラスハウス」として売る
テラスハウスとは、上の画像のように「くっついているけど完全に別々の家」というものです。これは「完全分離型の二世帯住宅」と全く同じです。
完全分離型の二世帯住宅の場合、下のようなデザインが多いでしょう。
このままでもテラスハウスとして売ることはできますが、外壁や内装を洋風にすると、さらに本格的なテラスハウスになります。そうすると高値で売却しやすくなるでしょう。
「完全分離型をテラスハウスにして売る」方法については、下の段落で詳しく解説しています。
非完全分離型なら「シェアハウス」として売る
非完全分離型というのは「普通の二世帯住宅」です。「普通に同居する」もので、玄関やお風呂・トイレなどはすべて二世帯で共有となっています。
この特徴はシェアハウスそのものです。シェアハウスではキッチンなどの水回りだけでなく、リビングやダイニングも共有するのが一般的です。下の画像のようなイメージです。
そして、非分離型の二世帯住宅も下のように生活します。
年齢層が違うだけで「建物の構造としてはまったく同じ」というのが理解できるでしょう。この「シェアハウスとして売る方法」は、ダイヤモンド社の記事などでも推奨されている方法です。
二世帯住宅のまま売るなら、高値にこだわらない
テラスハウスやシェアハウスにすることに、こだわる必要はありません。「リノベーションにかけるお金がない」ということもあるでしょう。
その場合は「二世帯住宅」としてそのまま売るのももちろんアリです。ただし、二世帯住宅は「そのままでは売りにくい」ということは意識しておきましょう。これは下の段落で詳しく解説しています。
二世帯住宅は率直に言って「需要の少ない物件」です。シェアハウスやテラスハウスにリフォームするなら需要も生まれますが、二世帯住宅のままでは売れにくいのが実情なのです。
「それでも二世帯住宅のまま売りたい」というなら、高値にこだわらないことが重要なポイントといえます。
一括査定も含め、できるだけ多くの見積もりをとる
これは二世帯住宅に限ったことではありませんが、家を売るときは「とにかく多くの見積もりをとる」のが成功の秘訣です。不動産会社の間で競争原理をはたらかせるわけなので、有利になるのは当然といえます。
もちろん「たくさん査定を受けていると、忙しくなって生活や仕事に支障が出る」ということもあるでしょう。このあたりはバランスが重要になります。
しかし、もし「仕事や家事が忙しくない」「いくらでも家の売却に時間を使える」ということであれば、見積もりは「取れば取るほどいい」というのが基本なのです。
多くの見積もりをとるには、不動産一括査定サイトを使うのも便利です。一括査定サイトについては、下の記事を参考にしてみてください。
二世帯住宅の売却相場は?
二世帯住宅の売却について、明確な相場はありません。これは普通の一軒家に相場がないのと同じです。
しかし、おおよその目安を知る方法はあるので、その方法を解説していきます。
物件情報サイトで、売却価格を調べる
相場は市場で形成されるものです。そのため、不動産の市場(実際に売られている物件の情報)を見るのが一番といえます。
SUUMOなどの物件情報サイトで「二世帯住宅」とキーワードを入れて検索すると、多くの物件がヒットします。広さも価格もバラバラですが、あなたの物件に近いものを探すと、大体の相場がわかるでしょう。
東京都の2世帯住宅の相場の例
下の画像は、スーモで「東京都 二世帯住宅」と検索した結果です。
画像引用元:SUUMO「東京都・二世帯住宅・中古一戸建て」の検索結果
価格だけ単純に並べてみると「7800万円・2280万円・3980万円・4490万円」とバラバラです。これを見ても「相場はなく、物件による」というのがわかるでしょう。
ただ、地域や間取り・地区年月・立地条件などの条件が似た物件を探せば、大体の相場の検討がつくはずです。スーモも含めて複数の不動産情報サイトで、実際の売り出し価格をチェックするといいでしょう。
売り出し価格の相場では売れないことも多い
ここでは相場の調べ方を書きましたが、二世帯住宅は普通の住宅と違い「相場が買い手の需要より高い」ものです。「売れないのに高くしてどうする」と思うでしょう。
しかし、二世帯住宅は新築時の価格がかなり高くなるものです。「あれだけ高いお金を出したのに、安く売りたくない」という売り主が多くいます。
このため、相場が自然と高くなるのです。しかし、あくまで「売り主の感情だけで設定されている価格」であるため、「高い相場のままいつまでも売れない」ということが多くあります。この点は下の段落でも詳しく説明しています。


「二世帯住宅の中古は売れない」といわれる3つの原因
二世帯住宅を売った人の体験談を見ていると「二世帯住宅の中古は売れない」という声が多く見られます。この理由は主に下の3つです。
以下、これらの理由について説明していきます。
二世帯住宅は、その家庭の事情に合わせて作る必要がある
もともと、一戸建ては「住む人の生活に合わせて設計する」部分が多いものです。そして、二世帯住宅ではその度合いがさらに強くなります。
親が高齢になって体が動かなくなれば、それに合わせてさまざまなバリアフリー設計をする必要があります。たとえば手すりの高さなどは、若い人なら多少のずれがあっても適応できますが、体が不自由な高齢者だと「10cmのズレでも苦労する」ということがよくあるものです。
こうした高齢者の体に合わせた設計をされていることが多いのですが、これは他の世帯にとっては合わないことが多くあります。
建設費が高額なため、高値で売り出してしまうことが多い
二世帯住宅は、下のような理由で建設費が高額になりがちです。
- 単純に住む人数が多いので、家が大きくなる
- バリアフリーなど複雑な設計をする
たとえば建設に5000万円かかった家なら、築年数にもよりますが「売り値が1000万円でもいい」という人は少ないでしょう。「3000万円が1000万円になる」ならまだ我慢できますが「5000万円が1000万円になる」というのは、我慢できない人が多いはずです。
そして、残念ながら二世帯住宅はこの「5000万円が1000万円になる」ことが多いのです。これは上に書いた理由と、次に書く理由によります。
つまり「コストがかかる物件なのに売れない」という現実と「高いお金を出して建てたんだから、高値で売りたい」という売り手の感情が衝突しているわけです。これがビジネスだったら「売れないのだから仕方ない」といって値下げするべきでしょう。しかし、個人の住宅だと家族の思い出などの感情もあり、なかなかシビアな決断をできないのです。
親の死亡後に売ることが多いが、その点を忌避される
二世帯住宅を売りに出すのは、大抵親ではなく子供です。そして、子供が売りに出すケースの多くは「親が亡くなったから」というものです。
これが「売れにくい」のは想像できるでしょう。「自宅内で亡くなった」のはもちろんですが「病院で亡くなった」としても、精神的に抵抗を感じる買い手は多くいます。
子供世帯はOKでも、親世帯が難色を示すことが多い
二世帯住宅は、買う側も二世帯です。この二世帯のうち、子供の方は「売り主の親御さんが亡くなっていても抵抗はない」と考えることは多くあります。しかし、親世帯の方はそう考えないことが多いものです。
年齢が高いほど縁起を担ぐことが多いですし、自らの死を身近に感じているというのも理由の1つでしょう。このように「特に親世帯に忌避されやすい」という点でも、二世帯住宅の中古は売りにくいことがあります。
親が生きているうちに、親名義のまま売るのもあり
この3つ目の問題については「親が生きているうちに売る」ことで解決できます。「親名義のままでの不動産の売却」については、下の記事を参考にしてみてください。
完全分離型の二世帯住宅を売却するコツ
二世帯住宅のタイプの1つに「完全分離型」があります。これを売却する場合は独特のコツがあるものです。ここではこのコツも含め、下の内容を説明します。
以下、それぞれ詳しく解説していきます。
完全分離型とは?
完全分離型の二世帯住宅とは、上の画像のようなイメージです。詳しい特徴を書くと、下のようになります。
- くっついているが、互いの家に行き来できない(マンションの隣家のようなもの)
- 玄関・お風呂・キッチン・トイレなどすべてが別
要は「一応隣接しているけど、完全に別の家となる二世帯住宅」です。不動産の登記も別々にされます。
(マンションのように区分所有となります。区分所有とは「分けて所有する」という、文字通りの意味です)
「テラスハウス」として売り出す
完全分離型の場合、二世帯住宅として見なければ「赤の他人が住む家が2つくっついているもの」といえます。実は、これは建築の立派なジャンルの一つで「テラスハウス」というものです。
テラスハウスといえば、大ヒットしたドラマを連想する人が多いでしょう。ドラマは「シェアハウス・共同生活」というイメージが強いものでしたが、本来のテラスハウスは下のようなものです。
- 共同生活はほとんどない(したい人はすればいい)
- あくまで家がくっついているだけで、ただのお隣さん
- マンションの一戸建てバージョンのようなもの(1階と2階を両方持てるマンション)


テラスハウスは上記のようなものですが、これは完全分離型の二世帯住宅とまったく同じです。そのため、おしゃれにリノベーションをして売り出せば、短期間&高値で売れる可能性があります。
本来のテラスハウスのイメージ
選択肢として検討するためには、実際のテラスハウスを見て、イメージを膨らませる必要があります。日本のテラスハウスは少ないので海外のテラスハウスをお見せすると、下のような雰囲気です。
上の画像は4世帯が連なっていますが「白だけ・茶色だけ」で見ると、完全分離型の二世帯住宅です。このデザインは日本の住宅にも近いので、ヒントにしやすいでしょう。
上の画像は日本の感覚だと色使いが少し派手ですが、形式はやはり完全分離型の二世帯住宅と同じです。外壁や柵などエクステリアを変えるだけで、二世帯住宅でもかなりオシャレにできる、という参考になるでしょう。
(もちろん、インテリアもそれに合わせてある程度リフォームする必要があります)
二世帯住宅の売却における税金の注意点
二世帯住宅を売るときの税金の注意点は、通常は特にありません。しかし、特定のケースで問題が起こります。
ここでは、このケースについて下のような項目で説明していきます。
なお、このような注意点もありますが、二世帯住宅は本来「節税効果が高くなる設計」です。この点についても下の段落で後から補足します。
完全分離型で、所有権の登記を「片方だけ」にしていると厄介
まず「完全分離型の二世帯住宅」というのは、他の部分でも書いている通りです。
- 玄関からキッチンまで、すべての設備や部屋が別々
- 互いに行き来できない
上のような二世帯住宅です。このような二世帯住宅で「別々の不動産として登記している」なら、税金についても問題は起きません。
しかし「片方だけの名義で登記」していると問題が起きます。その理由を説明します。
片方の世帯に「居住用の特別控除」が適用されない
「居住用の特別控除」とは「自分が住んでいた家を売るときは、税金が安くなる」というものです。具体的には「3000万円の特別控除」を受けられます。
たとえば家が3000万円で売れても、この3000万円の利益には課税されないのです。特別控除によって「利益ゼロ」となり、非課税になります。
これを「居住用の3000万円の特別控除」といいますが、片方の世帯について、これが適用されなくなってしまうのです。
理由は「所有者のための特例」であるため
「3000万円特別控除の特例」は、その物件の所有者のためにあります。たとえば登記の名義を親だけにしていたら「親が住んでいた分だけ」に適用されるのです。
ここで「非完全分離型」だったら、問題は起きません。お風呂もトイレも全部共用で「全部、親が住んでいた」といえるからです。
しかし、完全分離型だと問題が起きます。行き来できない構造にしていた以上「親が住んでいたとはいえない」のです。
このため「3000万円の特別控除」は、親が住んでいた部分のみに適用されます。たとえば1階だったら「1階だけ適用」ということです。
そして、2階に子供世帯が住んでいたら、こちらの売却益については課税されてしまうことが多くなります(最終的には売れた金額次第ですが、控除を受けられない分、課税されやすいのは確かです)。
二世帯住宅は「相続税の節税」に有効
二世帯住宅は、相続税の節税につながります。理由は「生前から親と一緒に住んでいた」=「その家は、相続する前から半分自分のもの」といえるためです。
相続税は「親から子供に財産を移すとき」にかかるものです。逆にいえば「最初から子供の財産だった」としたら、その分の相続税はかからなくなります。
以下、二世帯住宅による節税について、下のような項目で解説していきます。
以下、それぞれの説明です。
「小規模宅地の特例」が適用される
上の内容を専門的に説明すると、節税になるのは「小規模宅地の特例」が適用されるためです。小規模宅地の特例とは、簡単にいうと「相続前に親と住んでいた家は、相続税が軽減される」というものです。
より正確な説明を補足していくと、下のようになります。
- 親に限らず、祖父母や兄弟なども対象
- 家だけでなく店舗なども対象
- 店舗の場合は「一緒に事業をしていた」ことが条件
- 正確には「相続税が軽減される」のではない
- 相続税の「課税価格」が減額される
- 結果、相続税が安くなるかゼロになる
まず「なぜこのような特例があるのか」という点から説明します。
この特例が適用される理由
理由は「相続が原因で、家から出ていかなければならない」というケースの発生を防ぐためです。この特例がないと、相続税が高くなります。相続税が高くなると「払えない」ケースも出てくるわけです。
税金が払えないなら「家を売って支払う」しかありません。このような理由で「住んでいた家から、(国によって)追い出される」可能性があります。
国としてはそのようなことをしたくないので、この特例を用意しているわけです。


どのくらいの面積で「小規模」となるか
これは「330㎡以下」です。330㎡がどのくらいの広さかというと、「一般的な一戸建ての面積の約3倍」です。
総務省の「住宅・土地統計調査」などの資料によれば、日本の一般的な一軒家の面積は「約130㎡」です。330㎡ならこの3倍近い面積になるため「ほとんどの住宅は、小規模宅地の特例に当てはまる」ということです。
(二世帯住宅は多少広くなりますが、それでもせいぜい普通の2倍程度なので、大抵は特例が適用されます)
なぜ広い家には適用されないのか
これは「お金持ちからは、しっかり相続税をとりますよ」ということです。所得税の累進課税と同じ発想で、相続税に関しても「こういう相続をする人たちはお金持ちだろう」と判断されるケースでは、優遇されなくなります。
(もちろん、これは格差が固定されないために良いことです)
どのくらい節税できるのか
住宅の場合「80%減額」となります。たとえば5000万円の住宅を相続する場合、80%減額されると「1000万円相続するだけ」となります。
相続税は「3000万円以上の遺産」のみにかかります。このため、5000万円だったら「2000万円の部分に相続税がかかっていた」はずが、この特例で「完全非課税」となるのです。
(1000万円なら、3000万円に遥か届かないため)
なお、この特例が適用されると、極端な話「1億5000万円の家を相続しても非課税」となります。家以外にも資産があったら別ですが、家だけの場合は1億5000万円まで大丈夫という、強力な特例なのです。


なお、ここで説明している「80%・330㎡」というルールは「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」のルールです。国税庁のページでは他に事業用のルールが多く書かれていますが、宅地に関してはこの「被相続人等の~」だけを見ればOKです。
国税庁の説明
補足として、国税庁がこの「小規模宅地の特例」を同説明しているかを紹介します。まず、全体については下のように書いています。
(前略)
相続又は遺贈により取得した財産のうち、
(中略)
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等(中略)については、
(中略)
一定の割合を減額します。
相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
リンク先に書かれている注意点を箇条書きすると、下記の通りです。
- 相続した後10カ月間は、その宅地に住むこと
- 土地の一部を貸し出していると、減額率が50%に下がる
- ↑(土地の広さの上限も200㎡に下がる)
最後の2つの「貸し出していると不利になる」というのは「生活に必要な宅地ではない」と判断されるためです。あくまで「重い相続税のせいで家を出ていくことがないようにする」ということが、この特例の目的となっています。
「人に土地を貸すほどの余裕がある」なら、そこまで優遇しなくてもいいだろう、と国は判断するわけです。
まとめ
以上、二世帯住宅の売却のポイントや、売れにくい原因などをまとめてきました。最後に要点を整理すると、下のようになります。
- 完全分離型ならテラスハウスにするといい
- 非完全分離型なら、シェアハウスや民泊にするといい
- 二世帯住宅のまま売るなら、高値で売ることを諦める
- 二世帯住宅は構造が独特なので、そのままでは売れにくい
- 新築時の価格にこだわると市場の重要とずれるので、こだわりを捨てる
- 完全分離型で片方の世帯の名義で登記していると、税金で不利になる
特に最後の税金についてのポイントなど、税理士などの専門家に相談しないとわからない高度な内容は多くあります。現時点ですぐ売却する予定がなくても「いつか売却するときにより有利にする方法はないか」という相談を、早めに専門家にしておくといいでしょう。