農地を維持するのは難しいもの。後継者不足や事業の不振などで、農地の転用を考えることも多いでしょう。そのとき「転用したいけど、費用がいくらかかるかわからない」と悩む方は多いものです。
結論をいうと、転用の手続きだけなら「10~16万円ほど」でできます。市街化区域なら10万円、市街化調整区域なら16万円が目安です。
しかし、これはあくまで「手続き」の費用。ほとんどの場合は土地の改良工事が必要ですが、その費用は数百万円を超えることも多くあります。
多額の出費が必要になって後悔することがないよう、このページでは以下のような内容をお伝えします。
- 手続きにかかる費用
- 転用の完了後にかかる費用
- 宅地にすると課される税金
これらの内容を理解していただくことで、農地転用にどれほどのコストがかかるか、転用すべきかどうかを正確に判断していただけるようになるでしょう。

サキヨミ!
農地の転用は、申請しても通るとは限りません。仮に通るにしても、多くの費用と時間がかかります。
そのため「農地を転用せず、そのまま収益化する」方法も検討するといいでしょう。土地活用を得意とする不動産会社であれば、そうしたプランで有効なものを、多く提案してくれます。
上の「タウンライフ土地活用」は、そのような不動産会社による収益最大化のプランを、一括請求できるサービスです。3分程度の簡単な情報入力で、全国200社以上の中から、複数社のプランを取り寄せることができます。
利用は完全無料のため、リスクやデメリットは一切ありません。「転用でも何でも、とにかく農地を有効活用したい」と考えている方は、一度タウンライフの一括請求を試してみるといいでしょう。
Contents
何にいくらかかる?農地転用の費用・一覧
まず、かかる費用の目安を一覧にすると下記の通りです。
法人の登記簿謄本(法人のみ) | 600円 |
---|---|
土地の登記簿謄本 | 600円 |
土地の位置を示す地図(土地計画図・農業振興地域区域図) | 450円 |
申請に係る土地に設置しようとする施設の位置を明らかにした図面 | 3000円 |
残高証明書 | 800円 |
融資証明書(必要な場合) | 7000円 |
土地改良区の意見書 | 2000円 |
土地改良区域除外決済金 | 39600円 |
土地改良手続報酬(行政書士に依頼) | 10000円 |
転用手続き報酬(行政書士に依頼) | 35000円 |
合計 | 99050円 |
これは「市街化区域内」の場合です。「市街化調整区域」の場合は、最後の「転用手続き報酬」が95000円前後となり、6万円高くなります。そのため、総額は「15万9050円」が目安です。
どちらにしてもあくまで目安なので、特に土地の広さによって金額が大きく変動すると理解してください。


農地転用にかかる費用で、金額や変動の割合が大きい順に並べると下記のようになります。
以下、それぞれの費用について解説していきます。
土地改良区域除外決済金
土地改良区域除外決済金の相場は下の通りです。
地目 田 畑 1㎡当り 用排水区域 用水区域 排水区域 特別区域 排水区域 地区除外決済金 370円 208円 208円 208円 160円 農地改良 210円 208円 48円 208円 –
上記の表から金額を出すと、48円~370円となります。208円がもっとも多いので、大体数百円といえます。
他の地域では最高500円程度のケースもあり、全体的な相場としては「100円~500円」といえるでしょう。この幅なら中間の金額は「300円」になるので、当記事の試算では300円としています。
そして、これは1平方メートルあたりの金額です。一般的な住宅の宅地面積は40坪で、平方メートルに換算すると約132㎡です。
ここから「300円×132㎡=3万9600円」と計算しました。土地の種類によっても面積によっても、この金額は大きく変わるものです。そのため、あくまで目安の金額ととらえてください。
転用手続き報酬
転用手続きを行政書士に依頼する場合、報酬の相場は下記のようになります。
市街化区域内 | 3~4万円 |
---|---|
市街化調整区域内 | 9~10万円 |
当記事の冒頭の試算では、上記の中間をとってそれぞれ「3万5000円・9万5000円」としました。
土地改良手続き報酬
土地改良手続きは、正確には土地改良区申請(地区除外申請)といいます。この相場は1万円前後です。
行政書士事務所によっては数千円というところもありますが、下のような理由で当記事では1万円前後としました。
- 数千円といっても「相談料」などの名目で諸費用が追加されることがある
- 数千円の事務所が近場にあるとは限らない
全国どこでも追加料金ほぼなしで依頼できる報酬としては、大体1万円前後といえます。


農地転用をする土地が広い場合は比率も変わってきますが、特に「市街化調整区域内」のときは、転用手続きの行政書士報酬が一番高い(9万5000円程度)と考えていいでしょう。
ここから先は、諸々の必要書類の発行手数料をまとめていきます。
必要書類は?発行手数料もセットで解説!
農地転用の必要書類と、発行にかかる手数料の目安を一覧にすると以下の通りです(当記事冒頭の一覧から書類以外の費用をカットした表です)。
法人の登記簿謄本(法人のみ) | 600円 |
---|---|
土地の登記簿謄本 | 600円 |
土地の位置を示す地図 | 450円 |
申請に係る土地に設置しようとする施設の位置を明らかにした図面 | 3000円 |
残高証明書 | 800円 |
融資証明書(必要な場合) | 7000円 |
土地改良区の意見書 | 2000円 |
地区除外申請書 | 0円 |
合計 | 14450円 |
大体「書類だけで1万5000円」と考えるとわかりやすいでしょう。以下、それぞれの書類について詳しく解説していきます。
- 法人の登記簿謄本(法人のみ)
- 土地の登記簿謄本
- 土地の位置を示す図
- 申請に係る土地に設置しようとする施設の位置を明らかにした図面
- 残高証明書
- 融資証明書(住宅ローンなどを利用する場合のみ)
- 土地改良区への意見書
- 地区除外申請書
以下、それぞれの書類と発行手数料についての解説です。
法人の登記簿謄本
正式名称で「法人登記事項証明書」ともいいます。あなたが法人なら必要です。
法人を運営している方なら、法務局で登記簿をもらえることはよくご存知でしょう。ただ、方法によって若干手数料が変わるので、それを一覧にします。
法人登記簿取得の手数料
法人登記簿の取得には下の3通りの方法があり、それぞれわずかに手数料が違います。手数料の違いは微々たるものですが、3通りの方法を知っていれば時間の節約をしやすくなるでしょう。
書面請求/窓口交付(法務局に行く普通のやり方) | 600円 |
---|---|
オンライン請求/郵送交付 | 500円 |
オンライン請求/窓口交付 | 480円 |



なお、即日受け取りたい場合で、法務局で待たされずに済む方法は「オンライン請求&窓口交付」です。
土地の登記簿謄本
正式名称で「不動産登記事項証明書」といいます。発行手数料は法人登記簿と同じく1通600円、オンライン請求なら480円~500円です。
土地の登記簿を取得するときは「地番」を覚えておくと楽です。住所からでも取得できますが、地番なら番号を入力するだけなので、簡単に作業が終わります。
土地の位置を示す地図
土地の位置を示す地図とは、公図・位置図のことです。奈良県の公式サイトの「農地転用」のページでも、必要書類の部分に「土地の位置を示す地図(公図・位置図)」と書かれています。
そして、この発行手数料は「430円・450円」のいずれかです。
- 書面請求(法務局で請求)…450円
- オンライン請求&郵送…450円
- オンライン請求&窓口交付…430円
このように、オンライン請求でも郵送で受け取る場合は法務局で請求するのと変わりません。また、一番安いオンライン請求&窓口交付のやり方でも20円安くなるのみです。
このため、土地の位置を示す図の発行手数料は「450円」といっていいでしょう。
なお、上記の料金は法務局の「登記手数料について」というページで「地図等情報」として記載されています。地図等とあるように、公図・位置図(土地所在図)のどちらでも同じ料金です。
申請に係る土地に設置しようとする施設の位置を明らかにした図面
これは専門家など誰かに依頼すると数千円程度です。しかし、特別な資格は必要ないため無料で作成することもできます。
図面のイメージは下のようなものです。
見ての通り、描こうと思えば自分でも描けるものです。パソコンのワード・パワーポイント・ペイントなどのソフトで描く方が綺麗ですが、定規などを使って手書きで描いてもかまいません。
ただ、専門家に依頼しても数千円でできることが多いため、専門家に依頼した方がいいでしょう。
残高証明書
残高証明書は大体700円~1000円程度で、銀行・信用金庫などの金融機関から発行してもらえます。たとえば三菱UFJ銀行の場合756円(税込)となっています。
これは1通ごとなので、複数発行するときにはその枚数分必要です。
農地転用で残高証明書が必要な理由
これは「農地を潰したことが無駄にならないようにする」ためです。農地転用はわかりやすくいうと「宅地などにするため、農地を潰す」ということです。
(わかりやすく「潰す」という表現を使っていますが、もちろん悪い意味ではありません)
そうしてせっかく農地を宅地にしたにもかかわらず「資金がなくなって住宅が建てられませんでした」などとなると、問題があるわけです。そのようなことが起きないよう、農地転用をするときは申請者の資金力を確認することになっています。
融資証明書
住宅ローンなどの融資を受けて住宅や事務所などを建てる場合、融資証明書が必要になります。融資証明書というのは大きな括りで、具体的には下のような書類があります。
- 融資決定通知書
- 融資見込証明書
- 融資審査完了通知書
- 融資見込額通知書
- 事前審査(仮審査)の結果通知書
上から順に「効力の強いもの」です。最後の「仮審査の結果通知書」は、場合によっては融資証明書と見なされないこともあります。
この審査の厳しさは自治体やその土地の立地、建設しようとしている建物の内容など諸条件によって変わります。とりあえず、最も申請が通る可能性が高いのは「融資決定通知書」だと思ってください。
融資証明書の発行手数料の目安は、6000円~1万3000円程度です。十六銀行の「融資関係手数料」というページでは、実際に融資が発生するものは「1万2960円」、農転許可など形式的に証明が必要なだけのものは「6480円」となっています。
土地改良区への意見書
土地改良区への意見書の発行手数料(正確には事務手数料)は、数千円です。具体的な自治体の例をあげると下記のようになります。
あぶくま川水系角田土地改良区(宮城県) | 2000円 |
---|---|
羽生領島中領用排水路土地改良区(埼玉県) | 3000円 |
多くの土地改良区が2000円~3000円となっているので、高めに見て「3000円」と考えておけば間違いないでしょう。
地区除外申請書
地区除外申請書は基本的に0円となっています。これはただの「申込書」のようなものだからです。
地区除外申請書は、同時に添付書類として「土地改良区への意見書」を提出する必要があります。この事務手数料が2000円~3000円かかるため、地区除外申請書も混同され「数千円かかる」と思われがちです。
しかし、これについてはほとんどの改良区で無料であると理解して下さい。
手続き後にも支払いが!農地転用後にかかる費用
ここまでは「農地の手続きにかかる費用」について書いてきました。しかし「手続きの後にかかる費用」もあります。
ここでは、その費用について主な2つを見ていきましょう。
地目変更の登記申請費用
まず結論として金額から書くと、下のようになります。
手続きを自分でする場合 | 数百円程度 |
---|---|
専門家に依頼する場合 | 4万円前後から |
要は、自分でやれば数百円、専門家に頼めば4万円以上ということです。
そもそも何の費用か
農地転用をすると、土地の地目が「農地」から「宅地」になります。この届出の費用です。
通常、不動産がらみの届出では「登録免許税」がかかります。しかし、地目変更ではかかりません。
そのため「必ずかかるお金」が数百円と少ないのです。添付書類も転用許可書のみで、「添付書類を集めるのにかかるお金」もほとんどありません。
どの専門家に頼むのか
頼むとしたら「土地家屋調査士」などになります。この場合、一般的な金額は「4万円前後から」という相場です。
ただし、土地の登記を分ける「分筆」などの特殊な手続きが必要なときには、数十万円など高額になることもあります。
宅地工事にかかる費用
農地の転用は、手続きをして終わりではありません。宅地にするための工事が必要です。この費用も「農地転用後にかかるお金」の1つといえます。
この金額は、下のような条件によって大きく変わります。
- 地域
- 面積
- 土地の状況
そのため、日本全体で共通する相場はありません。しかし、地域ごとに自治体が算出している「おおよその目安」はあります。ここでは、東京都が出しているデータを紹介します。
東京都の場合
※画像引用元:http://www.rosenka.nta.go.jp/main_h29/tokyo/tokyo/others/pdf/d210300.pdf(宅地造成費の金額表|平成29年分・東京都)※PDF
上の表を簡単にまとめると、まず下の3種類の費用があります。
- 整地費
- 土盛費
- 土止費
そして、1つ目の整地費に下の3種類があります。
- 整地
- 伐採・抜根
- 地盤改良
それぞれの「1平方メートルあたり」の金額が、下のようになります。
整地 | 700円 |
---|---|
伐採・抜根 | 600円 |
地盤改良 | 1500円 |
これらの作業は、全部必要になることもあれば、1つか2つで済むこともあります。たとえば以前が果樹園だったら伐採や抜根が大量に必要になりますが、田んぼの場合は木がないので、伐採・抜根は不要です。
(田んぼの宅地転用については、下の記事を参考にしていただけたらと思います)
土盛り・土止めをする場合
次に、土盛り・土止め(土留め)をする費用です。金額から書くと、1平方メートルあたり、それぞれ下のような相場になります。
- 土盛費…4800円
- 土止費…5万6700円
上記はあくまで「1平方メートルあたり」の金額です。「実際に土地全体」で支払う金額」を、ここから見ていきましょう。
平均的な日本の宅地の場合
日本の宅地の平均的な面積は115㎡です(30~40坪)。そのため、ここまで書いた金額に「115」を掛けます。その金額は下記の通りです。
整地費 | 8万500円 |
---|---|
伐採・抜根費 | 6万9000円 |
地盤改良費 | 17万2500円 |
土盛費 | 55万2000円 |
土止費 | 652万500円 |
あくまで相場なので「1万円以下の位」を切り捨てて一覧にすると、下のようになります。
- 整地費…8万円
- 伐採・抜根費…6万円
- 地盤改良費…17万円
- 土盛費…55万円
- 土止費…652万円
「東京都で一般的な面積の宅地」という条件だと、項目ごとにこのような金額が必要になるということです。どの項目が必要になるかは、状況によって異なります。
圧倒的に大きいのは「土止費」
上記の一覧を見て、最初の3つについては「それほどの金額ではない」と感じる方が多いでしょう。普段の生活で8万円~17万円というのは大金です。しかし「農地を宅地にする」という人生の一大イベントにしては「それほどでもない」と感じるかと思います。
土盛費の「55万円」は大きな金額です。しかし、これも農地を保有しているような方なら「それで家計が傾くほどではない」ということが多いでしょう。
一方「家計が一時的に傾く恐れがある」のは、土止費です。一度に650万円以上の支払いが必要になったら「少々苦しい」という方も多いでしょう。
もちろん、まともな利用用途なので「不動産に関するローン」を組める可能性もあります(事業系も含めて)。それでも、最終的に650万円程度支払うことには変わりないので、この項目には特に注意が必要です。


農地転用は増税される!転用後にかかる税金
農地転用でかかる税金は、主に下の3つです。
以下、それぞれの税金について解説していきます。
固定資産税
固定資産税はすべての土地や家屋、償却資産(鉄道・船舶など)にかかる税金です。農地でもかかりますが、農地では税率が低く抑えられています。
実際にいくらになるかは転用する地目や市区町村、立地条件などによってケースバイケースですが「農地よりは高くなる」と思ってください。ただし、宅地などに転用した後すぐに売却できれば、その売却した月以降の固定資産税は払わずに済みます。




都市計画税
都市計画税は、必ずしも発生するとは限りません。1971年以後は「原則として市街化区域だけに課税する」とされています。
このため、市街化区域内での農地転用をする場合は、課税されることが多いと考えてください。最終的には都市計画税の裁量は市区町村に任せられているので、住んでいる地域によります。
償却資産税
これは下のような事業用資産にかかる税金です。
- 構築物
- 機械
- 運搬具
- 器具・美品
構築物は、具体的には下のようなものを指します。
- 門・塀・庭などの外構全般
- 看板・広告塔
- 受電・変電設備
- 予備電源設備
主に農地を工業用地に転用するときにかかる税金だと思ってください。
時間・日数はどれくらい?農地転用にかかる期間
農地転用の手続きは、通常の不動産登記よりも時間がかかります。ここでは、主なケースごとに「大体どのくらいの期間がかかるか」という目安を示していきます。
通常…1カ月半~2カ月半
過去の徳島県の公式サイトに掲載されていたQ&Aでは「1ヶ月半~2カ月」が目安でした。手続きの流れを書くと、下のようになります。
- 毎月10日までに申請
- 月末に審査
- 翌月18日前後…許可
最初と最後だけ書くと「10日まで申請したら、翌月18日に許可が出る」ということ。極端な話、10日ジャストで申請したら、48日にかかります。
逆に一番長くなる「11日」に申請した場合、プラス約30日となるので、78日です。
- 最短…48日
- 最長…78日
これを簡単にいうと「1カ月半~2カ月半」となります。
上記データについて
上記のデータは、徳島県の公式サイトが「農地転用の許可を得るには手続きにどの程度の期間が必要ですか?」という質問に回答していた内容です。現在では同サイトの移転にともない、該当ページが削除されています。
しかし「役所の手続きにかかる期間はすぐには変わらない」「都道府県ごとの差も小さい」という理由から、上のデータを紹介しました。
田舎…2カ月半~3カ月半
これも上記の徳島県の公式回答に書かれていた内容です。「田舎・過疎地」と分類されるような市町村では、2カ月半~3カ月半程度かかることがあります。
徳島県の場合、理由は「一部地域は、審査が隔月でしかない」ためです。隔月ということは、単純に「通常より1カ月遅くなる」ということ。
このため、一般的な「1カ月半~2カ月半」という期間に1カ月をプラスして「2カ月半~3カ月半」となります。
青地…9カ月~1年3カ月
さらに難しいケースとして「青地」があります。青地とは「農業振興地域の整備に関する法律に定める農用地」に「指定された土地」です。
該当するケースは少ないですし、該当する方は「自身で知っている」でしょう。そのため「青地とは?」と思う方であれば、おおむね関係ないといえます。
もし該当する場合は「田舎」のパターンに加えて、さらに半年~1年程度が必要となります。このため、おおよそ9ヶ月~1年3カ月程度が目安ということです。
該当する場合は要チェック!特殊な2つのケース
農地転用では、下のような特殊なケースもあるでしょう。
これらの農地転用でかかる費用について解説していきます。
農地の一部を井戸に転用する
井戸は一見農地の一部のようですが、「地下水を汲み上げる装置・施設」ということで、農地とは別物と見なされます。たとえば、新潟県南魚沼市のホームページでは「井戸設置場所の地目が農地の場合は、農地転用許可証の写し」が必要と書かれています。
転用の手続きにかかる費用は、ほとんど宅地などと同じです。井戸の場合、どちらかというと「さく井工事」(井戸掘り工事)にかかる費用の方が大きいでしょう。
井戸工事の費用相場は立地などの諸条件によりますが、安値で20万円前後となっています。一般的には25万円前後といえるでしょう。
太陽光発電所に転用する
農地を太陽光発電所に転用することも可能です。ただ、許可申請の届け出をしても却下されるケースが多くあります。
理由は、農水省が農業を優先するためです。日本は1960年代の高度経済成長期に、大量の農地を宅地や工業用地に転用したために、食料自給率が劇的に下がっています。
そのため、反動として農地転用の手続きを厳しくしているのです。宅地は生きるのに必要ですし、工業も経済を支えるために必要なので、これらに対する開発許可はおりやすくなっています。
しかし、太陽光発電についてはまだ歴史が浅く「日本経済のために絶対に必要」「国民の住まいのために絶対に必要」とも認識されていません。もちろん、環境省などは「自然保護のために絶対に必要」と考えていますが、管轄のj役所が違うため、認められにくいというのが現状です。
農地の種類によって許可の下りやすさが違う
農地には下の3種類があります。
- 第一種農地
- 第二種農地
- 第三種農地
このうち、第二種・第三種については太陽光発電所の設置許可もおりやすくなっています。しかし、第一種農地は難しいという状態です。


上記の法律によって、現在は第一種農地でも転用が認められる例が増えてきています。特に「ソーラーシェアリング」の場合は転用・設置がしやすくなります。
なお、太陽光発電所の設置にかかる費用は大体200万円前後が目安となっています(広さや立地条件によります)。
農地は転用せずに「そのまま収益化する」3つの方法
ここまで説明してきた通り、農地転用は特に土地の改良工事などで、多額の費用がかかるものです。また、そもそも農地法によって「転用自体が許可されない」こともあります。さらに申請が通るまでに半年程度かかることも考えると「転用してから売却する」のは難しいといえるでしょう。
しかし、「転用せずに農地のままで収益化する」方法があります。これなら手続きの費用や手間もかからず、土地改良工事の費用もかかりません(工事なしで収益化する方法を選択する場合)。
この方法は、主に下の3つに分かれます。
- 他の農家に「貸す」
- 他の農家に「売る」
- 市民農園として「貸す」


以下、これら3通りの方法について説明していきます。
他の農家に「貸す」
農地も普通の土地と同じく「貸し出す」ことができます。この借り手をどう探すかですが、方法は主に下の3通りです。
- 自分で探す
- 不動産会社に相談する
- 農協・農地バンクに相談する
要は「自分・私企業・公的団体」の3通りです。「自分で探す」については解説の必要はないため、他の2つについて解説します。
農協・農地バンクに相談する
農協は当然、地域の農家と多くのつながりを持っています。そのため「土地を欲しがっている農家・農業法人」の情報も自然に集まります。
農協にとって、地域の農業が発達することは嬉しいことです。そのため、「土地を欲しがっている農家の人を知らないか?」と尋ねれば、知っている範囲で喜んで教えてくれるでしょう。
農地バンクとは?
農地バンクは、正式名称を「農地中間管理機構」といいます。これは農林水産省が管理する組織で、完全に公的な団体です。
農協も半分は公的団体ですが、半分は私企業の信用金庫などに近い部分があります。農協は「農家の集まり」であり、農家一人ひとりは「私企業」です。そのため、農協も「半分は私企業」といえるのです。
このように、農協よりさらに公的になった団体が農地バンクと考えてください。名前に「農地バンク」「農地中間管理」とあるように、仕事はもっぱら「農地の仲介」です。
農地を借りたい人・貸したい人の情報は、近年では農協よりも農地バンクに集まるようになっています。そのため、農地を貸したい場合は農地バンクにも必ず相談し、より多くの選択肢が見つかるようにしましょう。
不動産会社に相談する
ほとんどの不動産会社は、農地の取り扱いを苦手としています。
- 農家しか売買できないため、需要が小さい
- 農業は特別な知識が必要なため、活用のアドバイスをしにくい
このような理由でほとんどの業者は、農地を取り扱っていません。あるいは、扱っていてもあまりいい条件での売買はできません。
しかし、稀に「農地に強い不動産会社」もあります。農業が盛んな地域ならそのような会社も存在するでしょう(そうした会社は、自らも農業を手がけていることがしばしばあります)。
もし、そのような会社がエリア内にあれば、その会社に相談してみるのもいいでしょう(基本的には例外的なパターンだと思ってください)。
他の農家に「売る」
売る場合も貸すときと同様、買い手を「自分で探す・農協に相談する・業者に相談する」という3通りがあります。先ほど説明した「農地バンク」は貸し借り専門のため、売る場合には使えません。
このため、売る場合には特に農協・業者が頼りになるといえます。
農地の売買価格の目安
たとえば千葉県では、下のように公的なデータが算出されています。
田んぼ(10アール当たり) | 174万7000円 |
---|---|
畑(10アール当たり) | 355万6000円 |
これは、一般財団法人・千葉県農業会議の「平成29年度 田畑売買価格等に関する調査結果」というPDFでわかります。上の金額は「農用地区域内」のデータであるため、市街化区域・市街化調整区域などでは、ある程度金額が変動すると考えてください。
1ヘクタールを売った場合のシミュレーション
上の金額で1ヘクタールの農地を売った場合、田んぼ・畑でそれぞれ下のような利益が出ます(1ヘクタールは10アールなので、上の金額を10倍するだけです)。
田んぼ | 1747万円 |
---|---|
畑 | 3556万円 |


次に、この金額で「どれだけ税金がかかるか」を見ると、下のようになります。
田んぼ | 349万円 |
---|---|
畑 | 711万円 |
これは「控除」を抜きにして、単純に「譲渡所得税20%」で計算しています。800万円や1500万円の控除を受けるには「農地バンクに売る」などの条件があり、必ずしも満たせるとは限らないためです。
この税金を利益から差し引いた「本当の利益(経常利益)」は、下のようになります。
田んぼ | 1398万円 |
---|---|
畑 | 2845万円 |
あくまで「1ヘクタール・農用地区内・千葉県」という条件ですが、税引き後に大体上のような利益が出るわけです。不動産会社に仲介を依頼した場合は、さらに数%の手数料がかかりますが、得られる利益はそれなりに大きいといえるでしょう。
市民農園として「貸す」
農家ではなく「一般市民の方」に貸し出す方法です。「市民農園」という名称で多くの自治体がシステムを整備しているため、始めるハードルは比較的低いといえます。
収益のシミュレーション
月額は、1区画で「年額1万8000円」が目安です。これは東京都東村山市のデータで、1区画は同市では「30平方メートル」です
仮に1ヘクタールの農地を貸し出すと、年間でこの3倍の売上となります。そのため、おおよそ「5万4000円」の利益です。行政が仲介するため手数料がほとんどかからず、売上はほぼすべて利益になります。
ただ、金額は見ての通り「1ヘクタールでも年間5万円~6万円程度」と、それほど高くありません。


マイナスをなくせるのがメリット
農地を放っておくと、下のようなデメリットがあります。
- 税金がかかる(遊休農地)
- 不法投棄の被害に遭う
税金よりも怖いのは不法投棄です。捨てられるものによっては水銀などが土地に染み込み「農地として致命的なダメージ」を受けるリスクがあります。
人が管理していれば、不法投棄のリスクは大幅に下がる
不法投棄は、基本的に「管理されていない土地」にされるものです。これは自分が捨てる側になれば理解できるでしょう。
- 近いけどしっかり管理されている土地
- 少し遠いけど、放置されている土地
上記の2か所であれば、誰でも「少し遠くても、放置されている土地に捨てる」はずです。通報されるリスクに比べれば、30分程度余分に車を走らせることなど、大したデメリットではないためです。
このため「貸し出して、誰かに小ぎれいな畑を作ってもらう」というだけでも、大いに意味があります。万が一不法投棄をされても、半分は借り手の責任にもなるため、ダメージは単純計算で半分になります。
このように、市民農園としての活用は「マイナスをなくすため」「農業をやってみたい人に喜んでもらうため」という気持ちで取り組むといいでしょう。
収益化は土地活用のプロに相談を!
ここまで説明したどの方法にしても、やはり最終的には「エリアによる、土地の状況による」もの。その土地ならではのアドバイスは、専門家だからこそできるものです。そのため、どんな方法を選択するかも含めて、まずは土地活用の専門家に相談するのがいいでしょう。
下のリンク先の「タウンライフ土地活用」では、複数の不動産会社からの収益化プランを、無料で取り寄せることができます。Web上で3分程度の簡単な手続きで、資料の請求が可能です。
もし「転用しなくても要は収益化できればいい」と考えているのであれば、このような専門家のプランを取り寄せてみるのもいいでしょう(取り寄せても、いずれも採用せずに終わるのはもちろんOKです。費用は一切かかりません)。
まとめ
以上、農地転用にかかる費用について説明してきました。最後に要点を整理すると、下記のようになります。
- 一般的な広さの宅地(40坪)にする場合、約10~16万円
- 特に高いのは行政書士への「転用手続き報酬」で、約3~10万円
- 土地の広さに応じて、「土地改良区域除外決済金」が高くなっていく
- すべての必要書類の発行手数料を合計すると、約1万5000円
農地転用にかかる費用は意外に安く、特に太陽光発電など利益を生み出せる用途に転用するなら、初年度から黒字を出せる可能性も十分にあるといえます。
農地や休耕地の使い道に困っている方は、転用も検討してみてはいかがでしょうか。