農地転用にかかる費用の一覧と相場のまとめ ~行政書士報酬や必要書類の発行手数料など~

農地転用にかかる費用の目安は「10万円~16万円」です。

市街化区域 約10万円
市街化調整区域 約16万円

上記のように区域によって差が出ます。この目安の算出の条件は以下の通りです。

  • 手続きはすべて専門家に依頼
  • 費用に幅があるものは「中間値」をとる
  • 面積は一般的な住宅の土地面積である「40坪」で計算

以下、実際にどのような費用がかかるのか詳しくまとめていきます。




農地転用でかかる費用・一覧

農地
まず、かかる費用の目安を一覧にすると下記の通りです。

法人の登記簿謄本(法人のみ) 600円
土地の登記簿謄本 600円
土地の位置を示す地図(土地計画図・農業振興地域区域図) 450円
申請に係る土地に設置しようとする施設の位置を明らかにした図面 3000円
残高証明書 800円
融資証明書(必要な場合) 7000円
土地改良区の意見書 2000円
土地改良区域除外決済金 39600円
土地改良手続報酬(行政書士に依頼) 10000円
転用手続き報酬(行政書士に依頼) 35000円
合計 99050円

これは「市街化区域内」の場合です。「市街化調整区域」の場合は、最後の「転用手続き報酬」が95000円前後となり、6万円高くなります。そのため、総額は「15万9050円」が目安です。

どちらにしてもあくまで目安なので、特に土地の広さによって金額が大きく変動すると理解してください。

売野くん
数百円や数千円の出費より、万単位の出費に注目した方がよさそうですね。
不動先生
その通りです。まず万単位の出費から詳細に説明していきます。

農地転用にかかる費用で、金額や変動の割合が大きい順に並べると下記のようになります。

  1. 土地改良区域除外決済金
  2. 転用手続き報酬
  3. 土地改良手続き報酬

以下、それぞれの費用について解説していきます。

土地改良区域除外決済金

土地改良区域除外決済金の相場は下の通りです。

地目
1㎡当り 用排水区域 用水区域 排水区域 特別区域 排水区域
地区除外決済金 370円 208円 208円 208円 160円
農地改良 210円 208円 48円 208円

地区除外決済金について(元荒川上流土地改良区)

上記の表から金額を出すと、48円~370円となります。208円がもっとも多いので、大体数百円といえます。

他の地域では最高500円程度のケースもあり、全体的な相場としては「100円~500円」といえるでしょう。この幅なら中間の金額は「300円」になるので、当記事の試算では300円としています。

そして、これは1平方メートルあたりの金額です。一般的な住宅の宅地面積は40坪で、平方メートルに換算すると約132㎡です。

ここから「300円×132㎡=3万9600円」と計算しました。土地の種類によっても面積によっても、この金額は大きく変わるものです。そのため、あくまで目安の金額ととらえてください。

転用手続き報酬

転用手続きを行政書士に依頼する場合、報酬の相場は下記のようになります。

市街化区域内 3~4万円
市街化調整区域内 9~10万円

当記事の冒頭の試算では、上記の中間をとってそれぞれ「3万5000円・9万5000円」としました。

土地改良手続き報酬

土地改良手続きは、正確には土地改良区申請(地区除外申請)といいます。この相場は1万円前後です。

行政書士事務所によっては数千円というところもありますが、下のような理由で当記事では1万円前後としました。

  • 数千円といっても「相談料」などの名目で諸費用が追加されることがある
  • 数千円の事務所が近場にあるとは限らない

全国どこでも追加料金ほぼなしで依頼できる報酬としては、大体1万円前後といえます。

売野くん
こうして見ると、一番大きいのは2つ目の「転用手続き報酬」ですね。
不動先生
そうですね。ここが農地転用の費用の半分程度を占めます。

農地転用をする土地が広い場合は比率も変わってきますが、特に「市街化調整区域内」のときは、転用手続きの行政書士報酬が一番高い(9万5000円程度)と考えていいでしょう。

ここから先は、諸々の必要書類の発行手数料をまとめていきます。



農地転用の必要書類&発行手数料一覧

書類

農地転用の必要書類と、発行にかかる手数料の目安を一覧にすると以下の通りです(当記事冒頭の一覧から書類以外の費用をカットした表です)。

法人の登記簿謄本(法人のみ) 600円
土地の登記簿謄本 600円
土地の位置を示す地図 450円
申請に係る土地に設置しようとする施設の位置を明らかにした図面 3000円
残高証明書 800円
融資証明書(必要な場合) 7000円
土地改良区の意見書 2000円
地区除外申請書 0円
合計 14450円

大体「書類だけで1万5000円」と考えるとわかりやすいでしょう。以下、それぞれの書類について詳しく解説していきます。

  1. 法人の登記簿謄本(法人のみ)
  2. 土地の登記簿謄本
  3. 土地の位置を示す図
  4. 申請に係る土地に設置しようとする施設の位置を明らかにした図面
  5. 残高証明書
  6. 融資証明書(住宅ローンなどを利用する場合のみ)
  7. 土地改良区への意見書
  8. 地区除外申請書

以下、それぞれの書類と発行手数料についての解説です。

法人の登記簿謄本

正式名称で「法人登記事項証明書」ともいいます。あなたが法人なら必要です。

法人を運営している方なら、法務局で登記簿をもらえることはよくご存知でしょう。ただ、方法によって若干手数料が変わるので、それを一覧にします。

法人登記簿取得の手数料

法人登記簿の取得には下の3通りの方法があり、それぞれわずかに手数料が違います。手数料の違いは微々たるものですが、3通りの方法を知っていれば時間の節約をしやすくなるでしょう。

書面請求/窓口交付(法務局に行く普通のやり方) 600円
オンライン請求/郵送交付 500円
オンライン請求/窓口交付 480円
不動先生
オンライン請求なら、郵送交付でも窓口交付でも手数料はほとんど変わりません。
売野くん
いや、うまい棒2本分は大きいですよ!
不動先生
まあ、売野くんにとっては大きいでしょうが、時間の節約を考えると「オンライン請求&郵送交付」がベストです。

なお、即日受け取りたい場合で、法務局で待たされずに済む方法は「オンライン請求&窓口交付」です。

土地の登記簿謄本

正式名称で「不動産登記事項証明書」といいます。発行手数料は法人登記簿と同じく1通600円、オンライン請求なら480円~500円です。

土地の登記簿を取得するときは「地番」を覚えておくと楽です。住所からでも取得できますが、地番なら番号を入力するだけなので、簡単に作業が終わります。

土地の位置を示す地図

土地の位置を示す地図とは、公図・位置図のことです。奈良県の公式サイトの「農地転用」のページでも、必要書類の部分に「土地の位置を示す地図(公図・位置図)」と書かれています。

そして、この発行手数料は「430円・450円」のいずれかです。

  • 書面請求(法務局で請求)…450円
  • オンライン請求&郵送…450円
  • オンライン請求&窓口交付…430円

このように、オンライン請求でも郵送で受け取る場合は法務局で請求するのと変わりません。また、一番安いオンライン請求&窓口交付のやり方でも20円安くなるのみです。

このため、土地の位置を示す図の発行手数料は「450円」といっていいでしょう。

なお、上記の料金は法務局の「登記手数料について」というページで「地図等情報」として記載されています。地図等とあるように、公図・位置図(土地所在図)のどちらでも同じ料金です。

申請に係る土地に設置しようとする施設の位置を明らかにした図面

これは専門家など誰かに依頼すると数千円程度です。しかし、特別な資格は必要ないため無料で作成することもできます。

図面のイメージは下のようなものです。

図面
栃木県公有財産事務取扱規則

見ての通り、描こうと思えば自分でも描けるものです。パソコンのワード・パワーポイント・ペイントなどのソフトで描く方が綺麗ですが、定規などを使って手書きで描いてもかまいません。

ただ、専門家に依頼しても数千円でできることが多いため、専門家に依頼した方がいいでしょう。

残高証明書

残高証明書は大体700円~1000円程度で、銀行・信用金庫などの金融機関から発行してもらえます。たとえば三菱UFJ銀行の場合756円(税込)となっています。

これは1通ごとなので、複数発行するときにはその枚数分必要です。

農地転用で残高証明書が必要な理由

これは「農地を潰したことが無駄にならないようにする」ためです。農地転用はわかりやすくいうと「宅地などにするため、農地を潰す」ということです。

(わかりやすく「潰す」という表現を使っていますが、もちろん悪い意味ではありません)

そうしてせっかく農地を宅地にしたにもかかわらず「資金がなくなって住宅が建てられませんでした」などとなると、問題があるわけです。そのようなことが起きないよう、農地転用をするときは申請者の資金力を確認することになっています。

融資証明書

住宅ローンなどの融資を受けて住宅や事務所などを建てる場合、融資証明書が必要になります。融資証明書というのは大きな括りで、具体的には下のような書類があります。

  1. 融資決定通知書
  2. 融資見込証明書
  3. 融資審査完了通知書
  4. 融資見込額通知書
  5. 事前審査(仮審査)の結果通知書

上から順に「効力の強いもの」です。最後の「仮審査の結果通知書」は、場合によっては融資証明書と見なされないこともあります。

この審査の厳しさは自治体やその土地の立地、建設しようとしている建物の内容など諸条件によって変わります。とりあえず、最も申請が通る可能性が高いのは「融資決定通知書」だと思ってください。

融資証明書の発行手数料の目安は、6000円~1万3000円程度です。十六銀行の「融資関係手数料」というページでは、実際に融資が発生するものは「1万2960円」、農転許可など形式的に証明が必要なだけのものは「6480円」となっています。

土地改良区への意見書

土地改良区への意見書の発行手数料(正確には事務手数料)は、数千円です。具体的な自治体の例をあげると下記のようになります。

あぶくま川水系角田土地改良区(宮城県) 2000円
羽生領島中領用排水路土地改良区(埼玉県) 3000円

多くの土地改良区が2000円~3000円となっているので、高めに見て「3000円」と考えておけば間違いないでしょう。

地区除外申請書

地区除外申請書は基本的に0円となっています。これはただの「申込書」のようなものだからです。

地区除外申請書は、同時に添付書類として「土地改良区への意見書」を提出する必要があります。この事務手数料が2000円~3000円かかるため、地区除外申請書も混同され「数千円かかる」と思われがちです。

しかし、これについてはほとんどの改良区で無料であると理解して下さい。

農地転用でかかる税金

お金

農地転用でかかる税金は、主に下の3つです。

  1. 固定資産税
  2. 都市計画税
  3. 償却資産税

以下、それぞれの税金について解説していきます。

固定資産税

固定資産税はすべての土地や家屋、償却資産(鉄道・船舶など)にかかる税金です。農地でもかかりますが、農地では税率が低く抑えられています。

実際にいくらになるかは転用する地目や市区町村、立地条件などによってケースバイケースですが「農地よりは高くなる」と思ってください。ただし、宅地などに転用した後すぐに売却できれば、その売却した月以降の固定資産税は払わずに済みます。

売野くん
固定資産税って、4月に1年分払うんですよね?
不動先生
そうです。ただ、年度の途中で売却した分は、残りの月の税金を買主から受け取ることができます。
売野くん
「あなたの分の税金も先に払っておいたから、その分私にお金をくれ」みたいな?
不動先生
そういう感じです。そのため、固定資産税については早めに売れれば心配する必要はありません。

都市計画税

都市計画税は、必ずしも発生するとは限りません。1971年以後は「原則として市街化区域だけに課税する」とされています。

このため、市街化区域内での農地転用をする場合は、課税されることが多いと考えてください。最終的には都市計画税の裁量は市区町村に任せられているので、住んでいる地域によります。

償却資産税

これは下のような事業用資産にかかる税金です。

  • 構築物
  • 機械
  • 運搬具
  • 器具・美品

構築物は、具体的には下のようなものを指します。

  • 門・塀・庭などの外構全般
  • 看板・広告塔
  • 受電・変電設備
  • 予備電源設備

主に農地を工業用地に転用するときにかかる税金だと思ってください。




特殊なケース

太陽光発電
農地転用では、下のような特殊なケースもあるでしょう。

  1. 農地の一部を井戸に転用する
  2. 太陽光発電所に転用する

これらの農地転用でかかる費用について解説していきます。

農地の一部を井戸に転用する

井戸は一見農地の一部のようですが、「地下水を汲み上げる装置・施設」ということで、農地とは別物と見なされます。たとえば、新潟県南魚沼市のホームページでは「井戸設置場所の地目が農地の場合は、農地転用許可証の写し」が必要と書かれています。

転用の手続きにかかる費用は、ほとんど宅地などと同じです。井戸の場合、どちらかというと「さく井工事」(井戸掘り工事)にかかる費用の方が大きいでしょう。

井戸工事の費用相場は立地などの諸条件によりますが、安値で20万円前後となっています。一般的には25万円前後といえるでしょう。

太陽光発電所に転用する

農地を太陽光発電所に転用することも可能です。ただ、許可申請の届け出をしても却下されるケースが多くあります。

理由は、農水省が農業を優先するためです。日本は1960年代の高度経済成長期に、大量の農地を宅地や工業用地に転用したために、食料自給率が劇的に下がっています。

そのため、反動として農地転用の手続きを厳しくしているのです。宅地は生きるのに必要ですし、工業も経済を支えるために必要なので、これらに対する開発許可はおりやすくなっています。

しかし、太陽光発電についてはまだ歴史が浅く「日本経済のために絶対に必要」「国民の住まいのために絶対に必要」とも認識されていません。もちろん、環境省などは「自然保護のために絶対に必要」と考えていますが、管轄のj役所が違うため、認められにくいというのが現状です。

農地の種類によって許可の下りやすさが違う

農地には下の3種類があります。

  1. 第一種農地
  2. 第二種農地
  3. 第三種農地

このうち、第二種・第三種については太陽光発電所の設置許可もおりやすくなっています。しかし、第一種農地は難しいという状態です。

売野くん
農家から発電王への華麗なる転身は難しいということですね。
不動先生
全体的にはそうですね。ただ、2013年11月22日に「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」という法律が交付されました。

上記の法律によって、現在は第一種農地でも転用が認められる例が増えてきています。特に「ソーラーシェアリング」の場合は転用・設置がしやすくなります。

なお、太陽光発電所の設置にかかる費用は大体200万円前後が目安となっています(広さや立地条件によります)。

まとめ

農地

以上、農地転用にかかる費用について説明してきました。最後に要点を整理すると、下記のようになります。

  • 一般的な広さの宅地(40坪)にする場合、約10~16万円
  • 特に高いのは行政書士への「転用手続き報酬」で、約3~10万円
  • 土地の広さに応じて、「土地改良区域除外決済金」が高くなっていく
  • すべての必要書類の発行手数料を合計すると、約1万5000円

農地転用にかかる費用は意外に安く、特に太陽光発電など利益を生み出せる用途に転用するなら、初年度から黒字を出せる可能性も十分にあるといえます。

農地や休耕地の使い道に困っている方は、転用も検討してみてはいかがでしょうか。