隣地境界に関する4つのルールと、境界線を確認する2つの方法~トラブル事例も解説~

隣地境界に関する4つのルールと、境界線を確認する2つの方法~トラブル事例も解説~

隣地との境界では、トラブルが起きやすいものです。

  • 「隣人から受けた抗議の内容が、法律的に正しいのかわからない」
  • 「そもそも境界がどこなのかわからない」

上記のような悩み・疑問を抱える人もいるでしょう。この記事ではこれらの悩みや疑問に答えるため、下の2点を解説します。

これらの内容を理解していただくことで、隣家・隣人との境界トラブルを回避しやすくなるでしょう。

隣地との境界に関するルール

建物の境界

隣地との境界に関しては、下のようなルールがあります。

  1. 建物は、境界線から50cm以上離す
  2. 窓や縁側は境界から1m以上離すか、目隠しをする
  3. 地域の慣習によっては、これらのルールは守らなくてもいい
  4. 防火地域で耐火構造なら、50cm未満でもいい

以下、それぞれのルールについて解説していきます。

建物は、境界線から50cm以上離す

建物は境界線から50cm以上離す

建物を建てるときは、隣地との境界線から50cm以上離さなければいけません。この時「どこから50cmか」という点が気になるでしょう。

これは「壁から」となります。「屋根や軒から」ではありません。

民法234条に書かれている

この「50cmルール』は、民法234条に書かれています。「建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。」という条文です。

窓や縁側は境界から1m以上離すか、目隠しをする

窓や縁側は境界から1m以上離す
「50cm以上」という条件をクリアしていても、窓や縁側がある場合は別です。窓や縁側があって50cmでは近すぎるので、この場合は下のいずれかを選ぶ必要があります。

  • 1m以上離す
  • 目隠しをする

条件はどちらかを満たせばいいので、1m以上離したら、目隠しをつける必要はありません。逆に目隠しを付けたら、50cmの距離でもOKです。

民法第235条に書かれている

この「窓・縁側のルール』は、民法第235条に書かれています。

境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
民法第235条(Wikibooks)

ここで気になるのは「目隠しとは何か」「どのくらいのレベルを言うのか」という点でしょう。これについては、後半の段落で解説します。↓

目隠しとは、どのような種類・程度を指すのか

地域の慣習によっては、これらのルールを守らなくてもいい

上記の50cmルールは絶対ではありません。地域の慣習によっては、50cm未満の距離で建設してもOKとなっています。

民法236条では「前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。」と書かれています。この「前二条」というのは、ここまで書いてきた2つのルールのことです。

「地域の慣習」の定義は?

これも明確な定義はありませんが「多くの建物が50cmや目隠しのルールを守っていない」といえる場合はOKです。特に「隣家が守っていない」という場合は、その隣家に要求されても従う必要はないといえます。

防火地域で耐火構造なら、50cm未満でもいい

地域の慣習以外でも「防火地域&耐火構造」という条件なら、50cmルールがなしになります。正確にいうと、下のどちらかの地域です。

  • 防火地域
  • 準防火地域

外壁の耐火構造については、もちろん正式な検査が必要です。これらの条件を満たせば、外壁が隣地境界線に接しても問題ありません。

「建築基準法第65条」に書かれている

このルールが書かれているのは民法ではなく、建築基準法です。65条で「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。」と書かれています。

具体的にどんなケースか

これは「都会の繁華街」を連想するとわかるでしょう。雑居ビルが15cmくらいの隙間で立ち並んでいる風景をよく見かけるかと思います。

人間が住むには良い環境とはいえません。しかし、繁華街では土地を有効活用する必要があり、これが認められているのです。

もちろん、このような建て方では火災時の延焼のリスクが大きくなります。そのため、上に書いた「防火地域・耐火構造」という条件が必要になるのです。

隣地との境界を確認する方法

測量図

隣地との境界線を確認するには、下の2つの方法を併用します。

境界杭(境界標)を現地で確認する

どんな土地でも、境界を示すために何らかの杭が打ち込まれています。これを境界杭(境界標)といいます。

「コンクリートの四角形の杭」といえば、わかる人も多いでしょう。境界杭でもっとも多い種類はコンクリート製のものです。

境界杭がずれたり破損したりしていなければ、基本的にその杭に従った境界線が正しいものとなります。そのため、まずは現地で境界杭を確認する必要があるのです。

境界杭の見方

境界杭は1つの地点に打ち込むものなので、境界の「線」を示すことはできません。示すのは「点」です。

ということは「四角形の杭のうち、どこが境界点なのか」を示す必要があります。この示し方は下の3通りです。

杭の真ん中に鋲がある その鋲が境界点
杭の真ん中に十字の線がある その十字の中心が境界点
杭に赤い矢印が描いてある その矢印の先端が境界点

こうして境界点を把握したら、あとは測量図を見ながら「点と点を結ぶ線」を現場で想定し、そこを境界線と見なします。

測量図を確認する

境界杭を確認することは必須ですが、これだけでは境界線を正確に把握することはできません。

  • 杭がずれている可能性がある
  • 点と点を結ぶ境界線の形を、測量図で確認する必要がある

後者については、土地の境界線があまり複雑な形で引かれていることはありません。そのため、現地で杭を見るだけでも大体はわかるのですが、それでも測量図を確認する必要があります。

測量図の種類は「確定測量図」がベスト

測量図には下の3種類があります。

  1. 確定測量図
  2. 地積測量図
  3. 現況測量図

このうち、もっとも信頼できるのは確定測量図です。その理由の説明として、3種類の測量図の違いをまとめます。

3種類の測量図の違い

確定測量図 土地が隣り合う関係者・官公庁職員が全員立ち会って測量をし、境界線が確定した図
地積測量図 法務局に登記されている図。公的な測量図だが、土地によっては存在しないこと、測量した時代が古くて精度が低いことなどがある
現況測量図 関係者の立ち会いなしで、単純に現場を測量したもの。杭や壁などの位置はわかるが、どこが境界かはこの図ではわからない

わかりやすく「境界線の確認に使えるか、使えないか」をまとめると下のようになります。

  • 確定測量図…100%使える
  • 地積測量図…使えないものもある
  • 現況測量図…使えない

確定測量図は「隣人も立ち会って境界線を決めるもの」なので、少なくともその隣人との境界トラブルは、この測量図ができた時点で解決します。

確定測量図の取得方法

確定測量図は、取得しなくても「自宅にあるはず」です。法務局が管理する地積測量図と違い、確定測量図は「契約書」のようなものだからです。

  • 過去に、あなたと隣人が立ち会って測量をした
  • そして、確定測量図が完成した
  • お互いにサインをして、測量図をそれぞれ保管した

このような経緯があるはずです。この確定測量図を紛失していない限りは「自宅のどこかにある」といえます。

確定測量図をなくしたらどうすればいいか

この場合は、もう一度隣人に頼んで立ち会ってもらうことになります。当然ながら、その時の測量費用はあなたがすべて持つことになるでしょう(大体数十万円が相場です)。

地積測量図の取得方法

地積測量図は法務局が管理しているので、あらためて測量をしなくても取得できます。管轄外の土地の測量図でも、最寄りの法務局で取得できることがほとんどです。

(一部の法務局は管轄内の土地の測量図しか取得できないため、管轄外の法務局に行く場合は事前に確認しましょう)

地積測量図は、下の3通りの方法で取得できます。

  • 窓口申請
  • 郵送申請
  • オンライン申請

簡単なのは窓口かオンラインです。郵送は非常に面倒です。所定の請求書・登記印紙・返信用切手&封筒などを、すべて送る必要があるためです。

不動先生
もちろん、移動が不自由・ネットが使えないなどの事情がある方にとっては一番便利な方法です。

地積測量図は1通450円なので、請求の費用はほとんどかかりません。

隣地境界に関する補足知識

立ち並ぶ家

隣地境界のルールに関して、下のような補足知識が必要になることもあるでしょう。

  1. 目隠しとは、どのような種類・程度を指すのか
  2. 隣家の屋根が原因で問題が起きている場合はどうなるか

以下、それぞれ詳しく説明していきます。

目隠しとは、どのような種類・程度を指すのか

目隠しとは
これは明確な定義がありません。しかし「一般的に考えて目隠しになっていると言える」のであればOKです。

実際の相談事例と、公的な組織による回答を見るとわかりやすいでしょう。

新しく建つ隣家の窓についての相談事例

この相談では「新しく建つ隣家」に、下のような3つの窓がありました。

窓A 2階の普通の窓。相談者の2階のベランダに接している
窓B 1階にある小窓。2mの高さにある(主に換気・採光用)
窓C 1階の普通の窓。新築の家は、この窓の前にフェンスがある

距離はいずれも60cmで、「1m未満」という法律に引っかかっています。このため「家の建主に対して設計の変更などを請求できないか」という相談でした。

公的組織の回答

これについて、公益社団法人・不動産流通推進センターは下のような回答をしています。

  • 窓A・窓Cは法的に問題となる
  • 窓Bは基本的に問題ない(2m以上の高さのため)

まず、上記が基本の回答です。そして、補足として下のように答えています。

  • 窓Aは、相談者のベランダのフェンスが事実上の目隠しになっているなら、問題ない可能性がある
  • 窓Cは、建設中の家のフェンスが目隠しになるなら、同じく問題ない可能性がある

原文を紹介すると以下の通りです。

窓Aについては、自分の家のベランダのはめ板等によって、また、Cについては、境界線上のフェンスによって、それぞれ事実上の目隠しになっているのであれば、話は別である。
なお、窓Bについては、その位置が床から2m以上の高さのところにあるので、問題となることはないと考えられる。
近接建物に対する「目隠し」設置請求の条件(公益社団法人・不動産流通推進センター)

これらの内容を一言でまとめると「一般的な感覚で問題ない状況なら、大丈夫」と要約できます。こう要約できる理由は下の通りです。

  • いずれの窓も「窓に何も付けなくていい」としている
  • 窓Aにいたっては「家の建主が何かをする」わけではない
  • 「相談者のベランダの壁が目隠しになるから」という理由でOKとされる(可能性がある)

つまり、この相談者が役所に訴えたら、役所はこう回答する可能性があるということです。

「確かに少し気になるでしょうが、あなたの家はベランダの壁があるから、窓Aから覗かれることはないですよね?なので、お隣さんの建築には問題ありません」

わかりやすくするため少々軽い表現にしましたが、要はこういうことを言われる可能性があります。「お隣は何も努力していないけど、実際に覗かれないなら問題はない」ということです。

もともとこの土地に住んでいた相談者としては納得が行かないでしょう。しかし、こういう結論になる可能性もあるということです。

売野くん
逆に「向こうが目隠しを付けることになる」可能性もありますよね?
不動先生
はい。上の公益社団法人の回答も、明確な結論は出していません。

なお、窓Bや窓Cについては、窓Aよりは問題がないといえます。

  • 窓B…高い位置につけている
  • 窓C…家の建主がフェンスを建てている

このように「建主側の努力・労力」があるためです。

隣家の屋根が原因で問題が起きている場合はどうなるか

「50cmルール」「窓・縁側のルール」は「壁」に関するルールです。これらのルールをクリアし、壁の問題は解決していても、屋根の問題が起こることがあります。たとえば下のような問題です。

  • 隣家の屋根によって、日照が遮られる(あるいは自分が遮る)
  • 隣家の屋根を伝った雨水がこちらの土地に流れてくる(あるいは自分が流している)

これらは、建築基準法に違反する内容である場合、最初から建築できません。そのため、建築後や建築の決定後にこのようなトラブルが起きるのは被害者(と出張する側)の感覚によるものです。

実際に問題があるケースもあれば、被害者側が自己中心的なだけ、というケースもあります。

建築基準法に違反していなければ問題はないのか

これは状況によりますが、裁判になったら勝つことが多いでしょう。ただ、裁判までした隣人と隣同士で生活していくのは、精神的に厳しいかと思います。

このため、できるだけ円満に解決することが必要です。

明らかに問題がなくても、調停を強要されるケースがある

弁護士ドットコムで「請求できない事案で、日照件を主張された場合での慰謝料請求について」というタイトルの相談が寄せられています。
https://c-1012.bengo4.com/b_527277/

この内容を要約させていただくと、下のようになります。

  • 法的に何も問題のない家を建築中
  • しかし、隣人が「3階建てを2階建てにして欲しい」と主張
  • 建築メーカーを通して、穏便に断ってきた

この時点で、この相談者(家を建てている人)には何も問題はありません。しかし、その後下のような展開になりました。

  • 相手側が近隣の住民と10数名で自治体に相談に行った
  • このため、自治体から調停をするようにいわれた

調停とは「裁判の一歩手前」です。これも拒否することはできるのですが、ここまでいわれることが一種の強要ともいえます。

法律的に何も問題がなくても、隣人の性格によってはこのような事態も起こるということです。

このケースで、相談者はどうすれば良かったのか

これは極めて難しい問題です。弁護士は「一切応じないと回答し、一度で調停を打ち切ってもらう」というアドバイスをしています。調停に関してはそれがベストでしょう。

問題は「これからその隣人、近所の人たちと生活していかなければいけない」ということです。近所の人たちが10数名協力したということは、引越し後は村八分状態になるでしょう。

しかし、相談内容を見る限り、相談者の方には一切落ち度がなかったのです。一般的に考えて「問題のない3階建てを2階建てにするように要求する」という隣人は、かなり横暴です。

このため、相談者の方はタイトル通り慰謝料の請求も視野に入れたわけですが、仮に裁判で慰謝料を勝ち取っても、やはりその家で生活していくのは精神的に厳しいでしょう。

売野くん
広い土地を買うか、隣人が少ない田舎に家を建てるしかなかった…、という感じでしょうか。
不動先生
それしかなかったでしょうね…。ここまでひどい隣人や近所の人は普通はいないので、かなり不運なケースだったといえます。

このように、「法律を遵守していても境界トラブルを100%回避することはできない」ということを覚悟し、できるだけ隣人を刺激しないようにしましょう。

(紹介させていただいた例は、もちろん隣人への刺激もなしていなかったと思われますが…)

まとめ

ボーダーラインに立つ二人

以上、隣地との境界に関するルールや、境界線を確認する方法などをまとめてきました。最後にポイントを整理すると、下のようになります。

  • ルール…50cm以上、窓は1m以上か目隠し
  • 確認方法…現地で境界杭を見る&測量図を見る
  • 測量図…確定測量図があれば一番、なければ地積測量図

上記は「法律的・物理的」なポイントですが、精神的にはやはり「どれだけルールを守ってもトラブルが起きる可能性がある」というのが、特に重要なポイントといえるでしょう。仮に自分の側に一切問題がなくても「隣人の性格に問題がある可能性」を考えて、トラブルを起こさないように注意を払っていただけたらと思います。