山林を売却したい!売り方&税金の計算方法は?

「親や祖父母から山林を相続したけど、いらないので売却したい」という方も少なからずいるでしょう。あるいは「子どもたちが相続したがらないので、自分の代で山林を処分したい」という方もいるかと思います。

この記事では、そうした方々のために「山林を売却する方法」や、売値の相場、税金のルールなどについて解説していきます。山林の売却や処分を検討している方には、きっと参考にしていただけるでしょう。


なお、山林のような特殊な不動産でも、大体の相場は一括査定で把握できます。売却の計画を立てるためにも、おおよその相場を最初に理解しておく方がいいでしょう。一括査定についてはこの分野でもっとも歴史が長い、NTTデータグループのHOME4Uをおすすめします。

この記事を読んでわかること
  • 山林を売却する方法
  • 山林売却での税金・確定申告のルール
  • 山林はいくらで売れるのか(相場)

山林を売却する方法

山林

まず、山林を売る方法を大別すると下の2通りになります。

以下、それぞれ解説していきます。

「山ごと売る」のが一般的

「山林を売却する」というと「山ごと丸々全部売る」というイメージを持つ人が多いでしょう。実際その通りで、ほとんどの山林売却ではそのように売られます。

  • その方が大抵売値が高くなる
  • 手続きがシンプルでお互いわかりやすい

主に上記の2つの理由からです。

「木だけ売る」方法もある

一方「山自体は売らない」「山に生えている木だけ売る」という方法もあります。いわゆる林業です。

これは「山自体は手放したくないけど、何らかの方法で現金化したい」という人に向いています。しかし、実際にこの選択肢がとられることはめったにありません。

林業をゼロから始めるのは極めて厳しい

想像はつくでしょうが、林業は長年やってきた専業の方でも、楽に生活できるお仕事ではありません。まして、初心者がゼロから始めるというのは、極めて難しいものです。

伐採・輸送・間伐など、林業ではあらゆる場面で莫大なコストがかかります。このため「木だけ売る」という選択肢はあるものの、現実に実行に移すのは限りなく難しいといえます。

山林は誰に売るのか

山に入る女性あ

山林の売却は誰に(どこに)対してするのか、一覧にすると下のようになります。

それぞれ詳しく説明していきます。

不動産業者

山林は、扱っていない不動産会社が多くなります。一般的にはほとんど需要がないためです。

このため、かなり数が限られますが、売却したいなら最初に相談するのは地元の不動産屋です。山林は地元の業者ですらアクセスに苦労することが多いため、遠方の大手などに依頼するケースは少数派といえます。小規模でも「地元の業者に頼むのが一般的」と考えてください。

「訳あり不動産に強い業者」がいい

山林は広い意味では「訳あり不動産」に含まれます。事故物件のようなトラブルは起きていなくても、「扱いにくい物件」ではあるためです。

このため、訳あり不動産を積極的に扱っている業者なら、山林の買い取りにも応じてくれやすいといえます。地元の業者の中でも、そのような業者から探してみるのもいいでしょう。

農地の売買実績が豊富な業者もおすすめ

山林と農地はよく似ているので、農地の売買実績が豊富にある、という業者もおすすめです。そのような業者はあまり多くはないでしょうが、もし地元に存在するのであれば、一度相談してみるといいでしょう。

農地(田んぼ)の売却については、下の記事でも詳しくまとめています。

田んぼを売る時は宅地に転用するのがベスト!工事費用の相場は東京で約740万円

2018.10.09

森林組合

森林組合は半分公的な団体です。「半分」というのは、森林組合には下の2種類があるためです。

  • 森林組合(狭義の森林組合)
  • 生産森林組合

前者は市町村のエリアがそのまま対象となっており、全国で631あります。後者は民間の林業事業者が集まって作る団体で、全国で3053あります(2019年1月時点で確認できるデータ)。

このような意味で「半分公的」な団体です。この森林組合には「山林を買いたい」という希望も集まっています。そのため、組合に照会すれば購入希望者を紹介してもらえる可能性があるわけです。

(組合が直接山林を買い取るということは、特殊なケースを除けばあまりありません)

国(寄付)

これは「売却」ではなく「寄付」になります。しかし「何でもいいから処分したい」というときは、一番手っ取り早い選択肢の一つでもあります。

ただ、現実的には寄付を受け付けてもらえることはほとんどありません。理由は下の2点です。

  • 個人がいらない土地なら、自治体も大抵いらない
  • 寄付を受ければ、固定資産税の税収がその分減る

このように、自治体にとっては、悪くいえば「邪魔な上に税収も減る」ことになるわけです。例外的に「個人にとって無価値でも自治体にとっては価値がある」という山林もあり、そのようなケースでは寄付を受け付けてもらえるでしょう。

しかし、基本的には寄付も難しいと思ってください。寄付も受け付けてもらえない山林では「ひたすら毎年固定資産税を払い続ける」という事態になります。

自然保護団体(寄付)

最近、山林の寄付先として注目を集めているのが「自然保護団体」です。彼らの目的は文字通り「自然を保護すること」なので「使い道のない山林」がむしろ重要ということもあります。

売野くん
彼らの目的は「山を使わせない」ことですからね。
不動先生
はい。企業などにとってのデメリットが、逆にメリットになるわけです。

このような理由でNGOに寄付される山林は増えています。ただ、NGOも管理費を自分たちで負担する必要があり、受け入れられる量に限界があるのも事実です。

一つのNGOで断られたら、他のNGOに交渉するなど、根気よく寄付先を探す努力が必要といえるでしょう。

山林売却での確定申告

コインと緑

山林売却の確定申告については、下の3つのポイントを押さえる必要があります。

3つ目の「計算方法」のみ、長くなるので別の段落で分けて説明します。

山林売却の収入は、他の収入とは区別される

山林を売って得た利益は、他で得た利益とは区別されます。会社のお給料などの給与所得はもちろん、不動産を得た利益の「譲渡所得」などとも別です。

山林売却で得られた利益は「山林所得」と呼ばれます。

山林所得とは

山林所得とは「山まるごと、もしくは山の木を売って得た利益」です。国税庁は下のように説明しています。

山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得をいいます。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採又は譲渡した場合は、山林所得ではなく事業所得か雑所得になります。
山林所得(国税庁)

上にも書かれている通り「山を手に入れてから5年以内」では、山林所得とはなりません。

  • 事業所得
  • 雑所得

両者のどちらかになります。短期間での転売は「林業というよりは不動産業」と見なされるためです。

山林所得の計算方法

花畑の電卓

山林所得の計算方法は、簡単に書くと下のようになります。

 売上-コスト-控除=山林所得

普通の確定申告を経験している人なら、この原理は「普通の確定申告と同じ」というのがわかるでしょう。それぞれの単語をより正確に書くと、下の通りです。

以下、それぞれ解説していきます。

売上…総収入金額

これはそのままで「山林がいくらで売れたか」です。「総収入金額」という言葉が使われますが、収入というよりは売上です。

たとえば、これから説明するコスト(譲渡費用)の方が大きければ、当然収支は「赤字」になります。それでも総収入金額は、たとえば1億円で山を売った場合「1億円」となります。

不動先生
総収入金額が0円より下になることは、原則ないということですね。

コスト…取得費・管理費・譲渡費用など

コストについては、上の見出しのように「あらゆる費用」が含まれます。売る時にかかったコストだけでなく「山林を持っている期間すべて」でかかったコストを含むわけです。

取得費 山林を「買う」のにかかったお金(最初のコスト)
管理費 そのまま
譲渡費用 山林を「売る」のにかかったお金(最後のコスト)

上記3つが主なものとなります。その他にも下のような費用がコスト(必要経費)とされます。

育成費 下草刈りなど、木・山を育てるのに必要な経費全般
伐採費 そのまま
搬出費 樹木を切り出して運ぶ費用

上記の3種類については、特に伐採・搬出について「これらをやったかどうかで、費用の金額が大きく変わる」部分です。林業をやっていればこれらの金額は自然と大きくなります。逆に「ただ山を持っていただけ」では、ほとんど発生しません。

取得費には、植林費用も含む

上ではわかりやすく「買う費用」と書きました。しかし、山林とは文字通り「林」も重要です。林が最初からなかった場合は、自分で「手に入れる」ことになります。

具体的には植林をするわけですが、この場合、植林費用が「取得費」となります。すでに育っている林に追加したなら「育成費」ですが、ほとんど林がなかった状態では、取得費です。

売野くん
といっても、どの道コストとして差し引かれるなら同じですよね。
不動先生
はい。税金の計算的には、まったく同じです。一応知識として補足しています。

譲渡費用には、仲介手数料も含む

譲渡費用の「売るためにかかったコスト」ですが、一番大きいものは大抵「仲介手数料」です。不動産業者に払う「成立金額の数%」といった費用です。

山林なら規模によっては1億円を超えるものも多くあるため、数%の仲介手数料でも数百万円に上ることが多くなります。その他の譲渡費用でも、案件によっては高額になるケースもありますが、大抵は「仲介手数料が特に大きい」といえるでしょう。

(もちろん、業者に仲介を依頼しなければ仲介手数料は発生しません。しかし、山林を自力で売るのは厳しいので、業者に任せる方がいいでしょう)

山林売却での2つの税金控除

コインと木の模型

控除はどんな税金の計算にもあります。山林所得税については下の2つです。

それぞれ詳しく説明していきましょう。

概算経費控除

これは簡単にいうと「50%控除される」ものです。

  1. まず「売上-コスト」をする
  2. 残った金額の50%を控除する

上記のような流れになります。たとえば「売上-コスト」が1000万円となったら、普通はこの1000万円が山林所得となり、税金がかかります。

1000万円に対する税率(所得税率)は23%なので、単純計算で「230万円」の税金になります(本当はここからさらに控除がありますが、ここでは省略します)。

「50%控除」されるとどうなるか

ここに50%控除(概算経費控除)が入るとどうなるか―。先ほど課税された1000万円は「500万円」となります。

500万円に対する税率は「20%」です。つまり、税金は「100万円」となります。

  • 概算経費控除「前」…230万円
  • 概算経費控除「後」…100万円

このように、50%控除によって「130万円」も税金が安くなっています。

売野くん
50%控除なのに「2倍以上安くなる」んですね。
不動先生
はい。累進課税の逆なので、2倍以上のペースで減っていきます。

概算経費控除が適用される条件

実は、この概算経費控除の適用には条件があります。「15年前の12月31日より前から、山林を所有していた」というのが条件です。

要は「長期間、保有してきた山林を売る」というケースのみ適用される「優遇措置」といえます。長期保有者が優遇されるのは、言うまでもなく「日本の山林を守るため」です。

森林計画特別控除

これは、簡単にいうと「10~20%が確実に控除される」ものです。先ほどの「概算経費控除」は、条件つきで「50%」でした。

それと比較すると節税効果は小さくなりますが「誰でも適用される」というのがメリットです。

10%と20%の違い

これは「売上-コスト」の金額です。この金額の「2000万円」を境目として、10%になるか、20%になるかが決まります。

  • 2000万円「以下」…20%
  • 2000万円「超」…10%

上記のような違いです。「何の10%・20%か」というと「売上-コスト」です。

具体的な計算例

例えば下のような売却だったとしましょう。

  • 売上…1億円
  • コスト…7000万円
  • 利益…3000万円

この場合、利益が2000万円を超えているので「超」の方に入ります。つまり「10%」です。「3000万円×10%」で、300万円が控除されます。

10%の方には「200万円控除」のおまけもある

補足すると、10%の方には「+200万円」の控除もあります。つまり、上の例だと「300万円+200万円」で、500万円控除されます。

もし「20%」だったら「600万円の控除」なので、10%控除のルールでも、20%の方にかなり近づくわけです。高い利益を出してもこのように税制で優遇されるのは、山林保護がそれだけ重要だからです。

もう一度整理すると?

あらためて整理すると、利益の金額ごとに、森林計画特別控除は下のようになります。

  • 2000万円以下…20%
  • 2000万円超…10%+200万円

このように「20%」か「10%+200万円」かの、どちらかになるわけです。

不動先生
200万円を先に登場させると複雑になったので、こうして後から説明しました。

補足…「の部分」に適用される

さらに補足すると、先ほどの控除率(税率ではありません)は正確には下のようになります。

2000万円以下の「部分」 20%
2000万円超の「部分」 10%+200万円

このように、本当は「部分」が付きます。つまり「3000万円」の利益が出たとしても、2000万円以下の「20%」という控除率は生きているのです。

利益2000万円にかかる控除率 20%
利益1000万円にかかる控除率 10%+200万円

上記のようになります。これで実際に計算すると、各段の控除金額は下の通りです。

  • 2000万円の分…400万円
  • 1000万円の分…300万円

これで「合計700万円」です。3000万円の利益から、700万円控除されます。

これは「概算経費控除」と違い、誰でも控除される金額です。つまり、単純計算ではありますが「山林売却で3000万円の利益が出たら、必ず700万円控除される」といえます。

(この場合、課税対象は2300万円。支払う税金は単純計算で、1000万円ほどとなります)

「森林計画特別控除」には「もう一つ」ある

実は、森林計画特別控除には「もう一つの計算」があります。簡単に書くと下のものです。

 売上の50%-コスト

もし、この金額がここまで書いてきた「利益の10%・20%」より小さい場合、こちらが適用されます。控除額が小さくなるので、国民の側としてはやや不利になります。

正確な計算

上記の「売上の50%-コスト」というのは、かなり簡略化した説明です。国税庁の正確な説明を引用すると、下のようになります。

立木の伐採等に係る収入金額(伐出費、譲渡経費を除く。)の50%相当額から必要経費(伐出費、譲渡経費及び森林経営計画が定められている区域内に係る被災事業用資産の損失の金額を除く。)を控除した残額
山林所得に係る森林計画特別控除(国税庁)

これを簡単に説明しようと思うと、それだけで長文になるため、説明は割愛します。要は「売上の50%-コスト」だと思ってください。

売野くん
たとえばコストが売上の半分かかっていたら、ゼロになるわけですね?
不動先生
はい。そうなると控除ゼロとなり、税金が高くなります。

森林計画特別控除・まとめ

最後に整理すると、森林計画特別控除は下の2通りがあります。

呼称 控除金額
収入金額基準 利益×20%、利益×10%+200万円(2000万円が境目)
所得金額基準 売上の50%-コスト

いずれにしても、どちらかの控除は確実に受けられます。

山林売却の相場(売値の目安)

山を点検する人

山林売却の相場は、種類別に下のような金額が目安とされています。金額はすべて「1平方メートルあたりの金額」です。

都市近郊林地 約1000~5000円
農村林地 300円未満
林業本場林地 100円未満
山村奥地林地 100円未満

上記はあくまで「大雑把な目安」と考えてください。

まとめ

山林

以上、山林の売却についてまとめてきました。最後に要点を整理すると下のようになります。

  • 山林は「山ごと売る」「木だけ売る」の2通りがある
  • 売る先は不動産業者・森林組合
  • 寄付先は自治体・自然保護団体
  • 税金の計算は「売上-コスト-控除」×税率、が基本
  • 山林の売却に関する控除は2種類ある
  • 売却相場は、山林の種類によって変わる

山林の売却は何かと複雑なものです。しかし、一つ一つの作業を順番にこなしていくことで、高値ではなくても確実に売却・処分できます。

「山林を処分したい・売りたい」と思っている人は、まずその第一歩として、一括査定を受けることから始めてみましょう。