更地渡しとは「建物を解体して更地にして売る」ことです。物件の販売情報では「解体更地渡し可」などと書かれています。
更地渡しのメリットは、売主の場合「建物・更地の両方の購入希望者にアピールできる」こと。買主の場合は「立地は良いが建物がジャマ」というときに、土地だけ買えることです。
デメリットは、売主の場合「解体費用がかかる」こと。買主の場合「もともと更地の物件と比べると、手続きがやや面倒」ということです。
この記事では、上記の内容を中心に「更地渡し」についてまとめます。売主・買主のどちらの方にとっても、更地渡しの物件を売買するときの参考にしていただけるでしょう。

更地渡しは、買い手の土地活用の自由度が高い分、高値で売却できる可能性が高いもの。更地にするか、あるいは売るかどうかの判断も含めて、まずは一括査定で売却時の相場観を把握するのがいいでしょう。
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更地渡しのメリット
更地渡しは、売主・買主のそれぞれにとって、下のようなメリットがあります。
以下、それぞれ詳しく解説していきます。
売主…建物・更地、両方の購入希望者にアピールできる
土地つきの建物を売るとき「更地渡し可」とすることで、購入希望者が増えます。建物が欲しい人、更地が欲しい人の両方にアピールできるためです。
買主…「理想の立地だが建物が邪魔」というときに、土地だけ買える
「建物は自分で建てたい。まずは理想の土地を買いたい」という買主もいるでしょう。そのような買主にとっては、更地渡し可の物件は魅力的です。「理想の土地だけど建物がジャマ」というときに、土地だけ手に入れることができるためです。


「更地渡し可』の物件の場合、基本的に解体費用は売主が負担します。この点で「土地だけ欲しい」買主にとってメリットが大きいのです。
更地渡しのデメリット
更地渡しのデメリットは、売主・買主のそれぞれで下のようになります。
以下、それぞれ詳しく解説していきます。
売主…解体費用がかかる
更地渡し可では、ほとんどのケースで売主が解体費用を負担します。この費用は建物の構造や大きさによってケースバイケースです。
大雑把な相場としては「90~250万円」となります。この計算の根拠は、当サイトの下の記事をご覧ください(該当の段落に直接ジャンプします)。
買主…もともと更地の場合と比較すると、手続きが面倒
更地渡し可は、買主にとってデメリットがほとんどありません。通常より選択肢が増えるので、プラスになることはあってもマイナスになることはないのです。
ただ、強いて言うなら「もともと更地の物件と比べると面倒」という点が挙げられます。
- 売買契約の内容が複雑になる
- 解体工事が終わるまで待たないといけない
上記2つが主な理由です。さらに、これから解体工事をする場合「地中の埋設物・廃棄物などが出てくる」という可能性もあります。
その場合は土地改良でさらに時間がかかったり、内容によっては「その土地に住めなくなる」という恐れもあるのです。この場合もお金を支払うことはないのですが「待たされて結局買えない」という可能性もゼロではありません。

更地渡しの流れ
更地渡しは下のような流れで進みます。
以下、それぞれの手順について説明していきます。
売買契約
建物があってもなくても、売買契約は当然交わします。更地渡しならではのポイントとしては「下のような条項が契約書に追加される」ということです。
条項名 | 内容 |
---|---|
建物解体更地渡し | ○月○日までに更地にする |
建物滅失登記 | 滅失登記の費用は売主が負担する&○月○日までに登記する |
撤去改良費用 | 地中埋設物などが見つかったときは、売主が撤去する |
条項名については正式に決まっているわけではありません。そもそも、不動産の売買契約書の形式は自由だからです。
- どんな条項を盛り込むか
- 条項の名前を何とするか
- どんな順番で書くか
これらのルールはすべて自由です。大手不動産情報サイト「オウチーノ」が運営するブログでは、下のように書かれています。
不動産を売買するとき、売主・買主双方が契約条件について合意したら、売買契約を締結します。この契約は、「法令に違反する」「公序良俗に反する」などの問題がない限り、原則として自由です。
不動産の売買契約書、ここに注意!(ヨムーノ ※オウチーノ運営)
契約書も契約の内容も自由なので、上記の条項名は「一般的にこう呼ばれることが多い」「内容もこのようなものが多い」という意味だと思ってください。
建物解体
契約を締結したら、建物の解体を始めます。解体工事は、業者選びさえすれば後はすべて「業者がやってくれる」ものです。
- 工事開始前の市区町村への届け出
- 現場の隣近所への挨拶
これらの作業は、すべて解体業者がやってくれます。
届け出は自分でもできるが…
届け出は自分でもできますが、一般的には業者に代行してもらいます。理由は「産業廃棄物の見込み量」などを記載する必要があるためです。
届け出の代行手数料は、解体工事全体の費用に比べれば微々たるものです。ここで慣れない手続きをして1万円や数万円を浮かせるより「安く信頼できる解体業者を探す」ことに労力を使う方がいいでしょう。
隣近所への挨拶は、自分もした方がいい?
理想としては、隣近所への挨拶は自分もした方がいいでしょう。特にその建物にこれまで住んでいた場合は、ご近所付き合いもあったはずです。
「○○さん、建物を壊すのに挨拶もしないで出ていったわ」と思われると、後々どこかで縁があったときに不利になります。また、土地を買った買主もその後の生活で少々不利になるでしょう。
買主への土地の引き渡しが終わったあとも良好な状態を維持するために、できれば挨拶は自らもした方がいいといえます。


引き渡し
解体が済んだら、更地を引渡します。これは「普通に渡すだけ」です。
売主・買主とも、土地の状態を確認するなどの最低限の仕事はありますが、問題がなければ「渡すだけで終わり」となります。
売主には翌年の固定資産税の支払いもある
引き渡し後も続く売主の仕事としては、翌年の固定資産税の支払いがあります。固定資産税は「1月1日にその資産を保有している人」にかかるためです。
どんなタイミングで売ろうと、1月1日の時点では売主が土地を持っていたはずです。たとえば2019年1月1日に売ったとしても、その前年の2018年1月1日~12月31日までの固定資産税を、売主が2019年4月に払うことになります。
つまり、売主の固定資産税の支払いは、どのタイミングで売っても必ず次の4月に来るものです。これが引き渡し後の売主の最後の仕事となります(その後、買主からの苦情などがなければ)。
更地渡しでの不動産会社の選び方・3つのポイント
更地渡しで物件を売る時の不動産会社の選び方のポイントをまとめると、下の3点となります。
以下、それぞれのポイントについて説明します。
不動産業者の選び方は、通常の売却と変わらない
売却を仲介してくれる不動産業者の選び方は、通常の土地建物の売却と変わりません。「高く売る技術」は、更地渡しでも普通の物件でも変わらないためです。
具体的には、下のような点に着目して業者を選ぶのがいいでしょう。
- 業歴の長さ
- 販売実績の豊富さ
- 口コミ・評判
- 仲介手数料の安さ
- 担当営業マンの信頼性
3つ目の口コミ・評判については、Web上ではいわゆる「やらせ」もあるので、あくまで参考程度にしましょう。また、仲介手数料については必ずしも安ければいいとは限らないので、あくまで総合的に判断するための1つの材料にすべきです。
更地渡しならではのポイントは「解体業者選び」
普通の物件と違う更地渡しならではのポイントとしては「解体業者選びが重要」という点です。「デメリット」の部分で書いた通り、更地渡しの注意点は「解体費用がかかる」ということにあります。
この解体費用をいかに安く済ませ、解体に関して一切問題を起こさないか、という点が重要となります。そのような安心できる工事を低価格でしてくれる解体業者を探すことが重要です。
(この点については下の記事で詳しく解説しています)
どちらの業者でも一括査定がおすすめ
不動産業者を選ぶときも解体業者を選ぶときも、まずは「一括査定サイト」「一括見積もりサイト」を使うのがおすすめです。呼び方の違いは「一括査定サイト=不動産業者」「一括見積もりサイト=解体業者」となっています。不動産業者が出すのは査定価格で、解体業者が出すのは見積価格だからです。
どちらにしても、多くの業者を簡単に比較するには、一括査定・一括見積もりのサイトを使うのが有利といえます。「サイトを使ったらいずれかの業者と契約しなければいけない」というルールはありません。
あくまで「査定・見積りをとるだけ」なので、どことも契約しなくてもいいのです。極端な話「大体の目安を知るためだけ」に使ってもかまいません。
一括サイトを使わずに自力で探す場合でも、やはり相場は事前に把握しておくべきです。相場を知るための参考として、一括サイトを気軽に使ってみるのもいいでしょう。

更地渡しをするかどうかは、大きな判断の分かれ目。この判断の参考にするためにも、売却時の相場を事前に把握することが重要です。
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更地渡しの補足知識
ここまで書いた内容に加えて、更地渡しについて重要な知識を補足すると以下のようなものがあります。
以下、それぞれの詳しい説明です。
融資特約(ローン特約)
融資特約(ローン特約)とは、「買い手が融資を受けられなかった場合に、買い手を優遇するルール」です。融資特約があるかないかでは、下のような違いがあります。
(いずれもローン審査に落ちた場合のものです)
特約あり | ペナルティは何もない |
---|---|
特約なし | 現金一括で買うか、手付金を放棄して契約を白紙に戻す |
融資特約は、どんな更地渡しでも必ず存在するわけではありません。しかし、多くの人は土地を買うときに現金一括では買えないものです。
大抵は住宅ローンを組むことになりますが、その審査に100%通るとは限りません。売買契約の段階ではまだ仮審査しか通っていない、あるいは仮審査すら申し込んでいないものです。
(正式な審査結果は、売買契約が成立しないと金融機関も出せないためです)
仮審査に通っていれば、本審査も通ることが多くなります。しかし、落ちてしまう場合もあるでしょう。このため、更地渡しの売買契約でも融資特約を付けるかどうかを決める必要があります。
解体工事は、ローン審査が終わってから始める
買い手が住宅ローンの審査に落ちると、その土地(まだ建物が建っている)を購入できなくなることが多くなります。そのため、更地渡しの解体工事は「ローン審査に通ってからする」のが普通です。
そこまで待たなくていいケースは「買い手が現金一括で買える」と約束した場合です。「一応住宅ローンに申し込むが、落ちたら現金一括で買う」ということです。
この場合、売り手としては解体工事を始めてしまっても問題ありません。万が一買い手が約束を守らなかったら、損害賠償を請求するのみです。
一般的には、現金一括で土地を買える人は少ないといえます。そのため、住宅ローンの審査が終わるまで待ち、落ちたら契約が白紙に戻るのが普通です。
手付金とは
更地渡しでの手付金は、通常の不動産売買での手付金と同じです。「あなたとの契約が100%完了するまで待つので、その待機分の保証金をもらう」ということです。
もし買い手がローン審査に落ちて契約が白紙になったら、この手付金は返さなくていい、というのが普通です。逆に手付金が戻って来る、あるいは最初から手付金を払わなくていいというのは「融資特約あり」のケースとなります。
融資特約の内容は自由に決めていいのですが、大抵は上に書いた2つ「手付金が戻る」「そもそも手付金がない」のどちらかになります。
建物滅失登記とは?自分でできる?
建物滅失登記とは「建物が消滅しました」という届け出です。災害などで倒壊した場合も含みますが、ほとんどは「自分で解体して届け出る」ものです。
建物滅失登記は自分でもできます。この手続きに限らず、不動産の登記はすべて自分でできるものです。ここでは、自分で登記する場合に必要となる下の情報をまとめます。
以下、それぞれ説明します。
建物滅失登記の必要書類
必要書類は下の4つです。
- 登記申請書
- 建物滅失証明書
- 解体業者の法人登記簿謄本
- 解体業者の法人印鑑証明書
どちらも形式は自由で、自分でWordなどで作ってしまってかまいません。登記申請書については、法務局の公式ページでPDF・Word・一太郎のひな形が提供されています。
建物滅失証明書とは?
これは、解体業者が「この工事をしました」と書く証明書です。法務局の公式ページでは下のように説明されています。
建物が取り壊されたことの証明書です。
建物を取り壊した工事請負人の証明書を添付してください。
滅失登記申請書・記載例(法務局)※PDF
太字部分の「工事請負人の証明書」というのが、下の2つです。
- 法人登記簿謄本(全部事項証明書)
- 印鑑証明書
業者が法人でなかった場合は、その代表者個人の印鑑証明書となります。
建物滅失登記にかかる費用
滅失登記を自分でする場合、費用はほとんどかかりません。土地と建物の登記簿謄本をそれぞれ取得しますが、1通500~600円なので、2通で1000~1200円かかるのみです。
登記簿謄本を取得しなくていいケースもある
そもそも、登記簿謄本の取得も義務ではありません。上に書いた通り、登記で提出する書類の中に入っていないためです。
では、何のために謄本を取得するのかというと「申請書に不動産番号・家屋番号・地番などを書く」ためです。これらの情報がわかっていれば、謄本を見なくても書けるので取得しなくてもかまいません。
つまり、自分で滅失登記をする場合「絶対にかかる費用」はゼロとなります。
登録免許税もかからない
建物滅失登記では、登録免許税もかかりません。みずほ不動産販売の公式ページでも、下のように書かれています。
滅失登記は建物所有者等の申請によって行なわれるが、申請は滅失の日から1ヵ月以内にしなければならないとされている。登録免許税は非課税である。
建物滅失登記(みずほ不動産販売)
不動産の登録免許税は相続でも贈与でも数万円かかるのが一般的ですが、それが滅失登記ではかからないということです。申請者にとって経済的なプラスがないことが理由といえます。

土地家屋調査士に依頼する場合の報酬
建物滅失登記を専門家に依頼する場合、土地家屋調査士に頼みます。この時の報酬相場は4~5万円です。
上に書いた通り、滅失登記は必要書類も少なく、書類に書く内容もそれほどありません。日頃ワードなどを仕事で使っている人ならそれほど難しくないので、4~5万円を節約するために、自分で手続きをするのもいいでしょう。
ただ、その場合は上のみずほ不動産販売の文章のように「1ヶ月以内」にしなければいけない点に注意してください(この期限は土地家屋調査士に依頼しても同じです)。
補足…司法書士・不動産鑑定士は関係ない
土地の登記に関しては、司法書士や不動産鑑定士がするものも多くあります。一般的には司法書士の出番が多いものです。
しかし、滅失登記に関しては上に書いた通り「土地家屋調査士」の仕事となります。
固定資産税は、売主・買主でどう分担する?
固定資産税は「日割り計算」で分担します。
- 売主が土地を持っていた日数分…売主が払う
- 買主が土地を買ったあとの日数分…買主が払う
たとえば固定資産税が10万円で、ちょうど年の半分で売却したら、それぞれ5万円ずつ払うことになります。


やり方は自由ではあるものの、慣習として日割り計算にするのが一般的です。
まとめ
以上、更地渡しのメリットやデメリット、手続きの流れなどを解説してきました。最後にポイントをまとめると、下のようになります。
- 更地渡しは、物件が売れる確率が高くなるので売り手におすすめ
- 買い手にとっても選択肢が増えるので、買い手のデメリットは特にない
- 売り手は取り壊し費用がかかるのがデメリット
- 解体費用の相場は90~250万円程度
- 通常の物件の売買にはない条項を、契約書に盛り込む必要がある
解体費用については「建物つきのまま売れたら発生しない」ものです。つまり「更地渡し可」として売り出した時点では、売り手のデメリットはありません。
そして、解体費用が発生するということは「物件が売れた」ということですから、これは喜ぶべきことです。このように更地渡しは売り手にとってデメリットが小さいため、建物付きの土地を売る時には、積極的に考えるべき選択肢といえます。