2019年も中盤になり、生産緑地の指定解除によって発生する「2022年問題」が、声高に叫ばれるようになりました。生産緑地の所有者の方など、関係のある方は「解除のルールや条件をあらためて知りたい」と思うことも多いでしょう。
この記事ではそのようなニーズに答えるため、下のような内容をまとめていきます。
- 生産緑地の指定解除の要件
- 解除・買取の申請のやり方
- 申請の必要書類
これらの内容を読んでいただくことで、生産緑地の解除に必要な知識をまとめて理解し、解除後の土地活用をよりスムーズにしていただけるでしょう。

解除された生産緑地は、自治体に買い取られることがほとんどありません。大部分は「普通の農地として売却」することになります。
そのため、通常の農地と同様、多くの業者から見積もりをとることで有利になるものです。そのためにおすすめの一括査定サイトが、下のイエウールです。
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Contents
生産緑地の解除とは?
生産緑地の解除のルールなどを説明する前に、そもそも「生産緑地とは何か」「それを解除するとはどういうことか」を知る必要があります。ここではその内容を説明していきます。
生産緑地とは…農業をすれば税金が安くなる土地
生産緑地とは、簡単にいうと「農業をしていると、税金が安くなる土地」です。
- 指定を受けたら、農業をしなければいけない
- 代わりに、固定資産税などの税金を払わなくていい
辞書の定義
ブリタニカ国際大百科事典では、下記のように定義されています(コトバンクから引用)。
都市における良好な生活環境の保全や都市災害の防止,あるいは将来の公共施設整備に対する土地の確保を目的として,市街化地域内の農地を対象に指定される地区。この地区指定により,農地所有者は営農義務が生じるが,固定資産税の免税措置が図られる。なお,生産緑地法の改正により,1992年から生産緑地の指定は 30年以上営農継続の意志のある場合に限られ,それ以外は宅地並み課税となった。
コトバンク「生産緑地」
解除とは…普通の土地に戻すこと。自由に使えるようになる
生産緑地の解除(正確には「指定解除」)は、普通の土地に戻すことです。生産緑地としてのルールがなくなるため、売却でも住宅の建設でも、あるいは土地貸しでも、すべて自由にできるようになります(そのエリアのルールの範囲内で)。
解除は自分でできる?…要件を満たせばできる
上で説明してきた生産緑地の解除は、自分の意思でできるのか―。これは「要件を満たせばできる」となります。
その要件とは何かを、次の段落で説明していきます。
うちは該当する?生産緑地の指定解除の要件・3つ
生産緑地の解除の要件は、簡単に書くと下の3つです。
- 30年経過した
- 主な従事者が死亡した
- 主な従事者が故障した(農業ができないほど)
以下、それぞれ解説していきます。
30年経過(公示日から起算して)
生産緑地として指定(公示)された日から30年が経過すると、指定が解除されます。生産緑地法は1992年に制定されたため、多くの生産緑地は「2022年」に解除が可能となります(解除しなくてもかまいません)。
なぜ期間を定めるのか
これは「土地所有者に我慢を強いる」ためです。「ずっと農業を続ける」という我慢です(もちろん、その土地で農業をしたい人にとっては我慢ではありません)。
生産緑地の目的は、「国・自治体のため」のものです。下の3つの目的のために、「一定の量の農地を残しておきたい」わけです。
- 生活環境の保全
- 災害防止
- 将来のための空き土地の確保
いずれも「個人のため」ではありません。このような「国・自治体のため」の理由で「農地の状態を維持してほしい」と依頼するわけです。
その見返りとして「免税」があるわけですが、それにしても「期限」がほしいでしょう。さすがに「永遠」という条件だと、孫やひ孫の代まで影響が出てしまうため、いくら免税措置があっても受けない人が多かったはずです。
(そもそも日本が永遠に今の日本政府の領土であるという保証もないですし、「永久」という契約は法律学的にもできないことが多いのではないかと思われます)
何にせよ、このような理由から「30年」という期間が定められたわけです。
主たる従事者が死亡
「農業を続ける」と約束しても、農業には技術が要ります。その技術を持った人が亡くなってしまったら、続けたくても続けることはできないでしょう。
そのため、主たる従事者(たとえば父親や祖父)が亡くなってしまったときにも、生産緑地の指定を解除することができます。極端な話、指定されてから5年後などの短期間でもOKだったわけです。


上の不動先生の説明の通り、そもそも「生産緑地の指定が解除される」というのは、土地の所有者にとって不利なこともあります。宅地として売る手はずなどが整っていればいいでしょう。
しかし、そうでない場合は「活用方法が見つかるまで、使ってもいない土地に税金を払い続ける」ということになってしまうのです。このため、30年未満の期間で「わざと死亡する」などの方法で契約を解除することはあり得ません。
このような理由から、30年未満であっても、主たる従事者が死亡したときには、生産緑地の指定が解除されるのです。
主たる従事者が故障(就業が困難な程度)
故障とは「ケガ・病気」の両方を含みます。どちらにしても「主たる従事者が働けない」という時には、上の段落の「死亡」と同じ理由で、生産緑地の指定が解除されます。
どの程度で就業が困難となるかは、実際の作業内容などによって多少変化します。ほとんどの作業を人力でこなすか機械でこなすかによって、「就業が困難」と判断されるかが分かれます。
どうやって申請する?生産緑地の指定解除の手順
生産緑地の指定を解除したいと考えたとき、特に気になるのはその手順でしょう。ここでは、流れの中でも特に重要な3つのステップを解説していきます。
1年以内に「生緑様式第1号」の書類を提出する
1年以内というのは「決められたやり方で農地を管理することが困難になってから1年」です。大抵は「死亡・故障」になるでしょう。
「30年経過」については、その段階では「管理が困難」ということは特にないはずです。ただ、この場合は30年という条件を満たしているので、特に死亡・故障などの困難がなくても申請できます。こちらについては「1年以内」というルールは関係ありません(原則いつでもOKです)。
「生緑様式第1号」の書類とは
これは、正式名称を「生産緑地に係る農業の主たる従事者についての証明願」といいます。多くの自治体が、ホームページでエクセル・PDFなどのファイルでダウンロードできるようにしています。
それをパソコン、あるいは手書きで記入して市区町村の農業委員会に提出します。
農業委員会による審査(現地確認など)
書類を提出したら、農業委員会がその内容について審査をします。内容は書類審査に加えて、現地確認などがあります。
また、自治体によっては審査の前に「事前相談」を義務付けているところもあります。たとえば神奈川県の藤沢市は、公式サイトで「事前相談申込書で必ず事前にご相談する」という内容を明記しています。
このように事前相談が必要なのは「そもそも生産緑地のルールをよくわかっていない状態で申し込んでくる人」もいるためです。審査に通すべき案件であることを確認するために、事前相談のルールを設けているのだといえます。
証明書が発行される
審査の結果、問題がなければ証明書が発行されます。証明書の正式名称は「生産緑地に係る主たる従事者についての証明書」です。
たとえば主たる従事者が父親だったら「父親についての証明書」といえます。何を証明するかというと「死亡・故障している」ということです。



この後の段落でも説明していきますが、最終的に生産緑地が自治体に買い取られることはほとんどありません。大部分のケースは「普通の農地に戻り、通常の土地のように売却や賃貸をする」ことになります。
そのような活用の選択肢は、多くの不動産会社からプランや見積もりをとって決めるべきです。そのためには一括査定サイトが便利ですが、特に下のイエウールは、全国1700社超という多くの会社から見積もりをとれるため、おすすめです。
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解除後の農地は買い取ってもらえる?自治体への申し出のやり方
ここまでは「指定解除のやり方」を説明してきました。しかし、解除してもまだ土地が手元に残っています。「これを自治体に買い取ってもらうことはできるのか?」という点が気になるでしょう。
これはもちろん可能なので、その申請の方法を説明していきます。
「生産緑地買取申出書」を提出
まず「生産緑地を買い取ってほしい」という書類を自治体に提出します。「生産緑地買取申出書」という書類ですが、「生緑様式第2号」とも呼ばれます。
このような書類がわざわざ用意されているのは、そもそも「自治体がほしがる土地」だからです。欲しがる(農地として維持しておきたい)からこそ、わざわざ生産緑地というルールを生み出したわけです。
このため、その指定が解除されたら「かなりの確率で買い取りますよ」ということが、約束されているわけです。そのため、このような申請書も正式に用意されています。
自治体の買取りの可否が、30日以内に決まる
上の段落で説明した通り、多くの生産緑地は自治体にとって「確保しておきたい土地」です。しかし、必ずしも確保できる(買い取りできる)とは限りません。
- 財政難のこともある(破綻した夕張市のように)
- その土地の価値が30年の間に落ちた可能性もある(土壌汚染などで)
- 自治体の都市計画が変わり、不要になった可能性もある
このような理由から、自治体が買い取らない(あるいは買い取れない)ということもあります。そのような結果の連絡が30日以内に郵送で届きます(買い取る場合も、買い取らない場合も)。

買取り成立は1~2%程度(ほぼ不可になる)
上のように説明してきたものの、実はほとんどの買取りは「不可になる」とされています。買取りが成立するのは全体の1%~2%程度と、極めて少ないのが実情です。
これは「2022年問題」と呼ばれるほど、30年を経過する生産緑地が急増しているためです。このため、買取り不可になったときにどうなるかも、次の段落で解説していきます。
買い取り不可ならどうなる?
生産緑地の売却を考えている場合「自治体が買い取ってくれなかったらどうなるのか」という点も気になるでしょう。ここでは、その場合の流れを解説していきます。
次の従事者を自治体があっせん
買い取りできない場合、自治体(正確には、そのエリアの農業委員会)が、次の農業従事者を斡旋してくれます。農業従事者なので、要するに「農家」を紹介してくれるということです。
- 自治体は土地を買い取れない
- しかし、あなたは土地を売りたい
このような理由から「誰か、自治体以外の買い手」を見つける必要があります。その人が買ってくれれば、自治体が買い取らなくても「生産緑地」の状態を維持できるのです。


自治体は、必ずしも維持したがっているとは限りません。30年間の間に事情が変わり「もう、生産緑地としての必要がなくなっている」という可能性もあります。それが理由で買い取らないこともあるでしょう。
そのような場合、特にあっせんも熱心にはされません。場合によっては斡旋がないこともあるでしょう。
斡旋があってもなくても、買い手となる次の農家が見つからなければ、もう「生産緑地として維持していく」ことはできなくなります。そのため、次の段落のようになります。
従事者が見つからなければ、ただの農地に戻る
ここまでの内容をまとめると、下記のようになります。
- 自治体は買い取らない
- あなたは土地を売りたい
- 他に買い取ってくれる農家もいない
こうなると、現実的に生産緑地としてやっていくことはできないので「ただの農地」に戻ります。自治体としても「何が何でも生産緑地の状態を維持したい土地ではない」ので、それでかまわないのです(本当に必要なら買い取ります)。


農地に戻ったら、農地法の範囲内で売却・活用できる
普通の農地に戻ったら、ある程度自由に売却や賃貸などの活用をできます。農地ということで一定の制限はありますが、その範囲内での活用はできるということです。
- 農家や農業法人には自由に売れる
- 条件を満たせば宅地への転用もできる
- 農地のままで、売却でなく賃貸することもできる
このように、さまざまな選択肢があります。特に売却については下の記事で詳しく解説しているので、興味がある方はこちらを参考にしていただけたらと思います。
生産緑地のままだと、免税のメリットがある代わりに、売却も賃貸も自由にできません。それと比較すると、農地法の制限があるとはいえ「だいぶ自由」になるといえるでしょう。
手続きで必要な書類は?解除・買取の2通りで説明
どんな手続きでも、難しいのは「書類を揃える」こと。生産緑地の指定解除や買取申出ではどのような書類が必要なのかを解説していきます。
解除…農地基本台帳・地番表示図・位置図など
指定解除に必要な書類は、メインとなるものが「生産緑地に係る農業の主たる従事者についての証明願」です。「生緑様式第1号」とも呼ばれます。
そして、これに添付する書類として、下のものが必要になります。
当該生産緑地の位置図 | 付近の案内図(自分で作図してOK) |
---|---|
地番表示図 | 公図・地積図など。隣地の地目と所有者が記入されていること |
所有者一覧 | 名寄せの写しなど |
農地基本台帳 | 農業委員会事務局で交付してもらう。所有農地(各筆)の今後の経営状況を記入する |
理由書 | 30年経過・死亡・故障などの理由 |
委任状 | 本人が行くなら不要。代理で手続きを頼む場合のみ必要 |
上記が「すべてのケースで必要になる書類」です。個別のケースでは下のような書類が必要になります。
故障の場合 | 医師の診断書 |
---|---|
死亡(相続登記済み)の場合 | 特になし |
死亡(相続登記がまだ)の場合 | 相続関係説明図・遺産分割協議書・除籍謄本など |
共有名義 | 名義人全員の署名・捺印(必要書類は同じで、上の一覧の書類すべてに全員の署名・捺印が必要) |
このように、それぞれのケースでさまざまな書類が必要になります。死亡の場合は、相続登記さえ済んでいれば、特別に必要な書類はありません。「相続があった」ということ自体が、死亡の証明になるためです。
共有名義の場合の手続きについては、下の記事も参考にしていただけたらと思います。
買取…公図・実測図・案内図など
買取申出(買取り依頼)をする場合は、メインの書類は「生産緑地に係る農業の主たる従事者についての証明」です。先程のメインの書類と似ていますが、並べると違いがわかります。
- 解除…生産緑地に係る農業の主たる従事者についての証明願
- 買取…生産緑地に係る農業の主たる従事者についての証明


要は、1つ目の「願」の方は「2つ目の書類を発行してください」という「お願い」であるわけです。「発行申請書」といえます。そして、実際に発行された書類が、買取りの方の「~証明」です。
買取り申出の場合の添付書類
買取りを申し出る場合も、メインの書類に加えて添付書類が必要になります。これもおおむね「解除」の時と同じですが、下の通りです。
案内図 | 土地の位置がわかる図 |
---|---|
公図(写し) | 登記所で発行してもらう |
実測図(写し) | 土地の一部だけ買取りを申し出る場合 |
土地長期投資(写し) | 登記所(法務局)で発行、最新のもの |
印鑑証明書(原本) | これと同じ実印を、買取申出書に捺印 |
その他 | 死亡・故障の場合など、必要に応じて |
最後の「その他」は、「解除」で説明したとおり、下のようなものが必要になります。
- 故障…診断書など
- 死亡…遺産分割協議書など(相続がまだの場合)
他にも例外的なパターンとしては、抵当権が設定されている場合には、誓約書などが必要になります。
わからなければ司法書士に相談するのもおすすめ
ここまでの説明を読んで「難しい」と感じたら、司法書士などの専門家に依頼するのもいいでしょう。司法書士に相談できる内容や費用相場などは、下の記事で詳しく解説しているため、こちらを参考にしていただけたらと思います。
まとめ
記事中で書いた通り、生産緑地を自治体が買い取ってくれることはほとんどありません。そして、次の農家の斡旋も、大抵は決まらずに終わるものです。
そのため、多くの生産緑地は「ただの農地」に戻り「農地としての売却」を考えることになります。つまり「普通の不動産と同じ売却ノウハウ」が必要になるわけです。
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