借地の売却には相場がありません。自分に所有権がある更地を売却するときと比べて、権利などの諸条件が複雑だからです。
条件が複雑ということは、その条件によって売値も大きく変わることになります。このため、借地売却には相場がないのです。
相場はないものの、価格を割り出す参考になるポイントはいくつかあります。まとめると以下の通りです。
以下、これらのポイントも交えて、借地の売却の相場について解説していきます。

借地を高値で売却したい場合に最も大切なことは、『借地の売却を得意とする専門の不動産会社』に依頼するということです。
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借地権価格の3分の1~3分の2程度になることが多い
借地権にも「借地権価格」という目安の数値があります。しかし、実際の借地の売却でこの価格通りに売れるわけではありません。
たとえば借地権価格が900万円の場合、実際の売却で決定する可能性は、金額帯ごとに下記のようになります。
0~150万円 | ほぼない |
---|---|
150万円~300万円 | あり得る |
300万円~600万円 | 確率が高い |
600万円~750万円 | あり得る |
750万円~900万円 | ほぼない |
中盤の300万円~600万円が「3分の1~3分の2」の金額帯です。このゾーンで決定する可能性がもっとも高いといえます。


借地売却の3つの選択肢
借地を売却するときの選択肢は、下の3つです。
以下、それぞれの選択肢について解説していきます。
地主に売る
一番シンプルなのは、地主(貸主)に買い取ってもらうことです。これは地主にとってもメリットになる可能性があります。理由は下の通りです。
- 地主は「底地権」を持っている
- しかし、底地権だけでは土地の価値が下がる(高く売れない)
- 借地権が解除されて、完全な所有権になると土地を高く売れる
つまり、地主がその土地を売りたいと思っている場合には、借地権の買い取りは地主にとっても利益があるということです。逆に「今後も貸し続けて地代収入を得たい」と考えていたら、地主にとってデメリットになります。
コーヒーカップ・ソーサー理論
上記の発想は、不動産の世界で「コーヒーカップ・ソーサー理論」と呼ばれるものです。コーヒーカップとソーサーは、単独では価値がありません。
まったく無価値ということではありませんが、本来の価値よりは下がってしまいます。セットになって初めて本来の価格で売買できるのです。
同じように、借地権(借主の権利)と底地権(地主の権利)についても、セットになって初めて価値が上がるということです。「セットにして高く売りたい」と思っている地主に対しては交渉の余地があります。
第三者に売る
まったく関係がない第三者に借地を売ることもできます。ただ、これは勝手にはできません。地主の許可を得る必要があります。
第三者に売却する場合の相場はケースバイケースですが、第三者には上に書いた地主の例のようなメリットがありません。「借地権と底地権がバラバラで不自由なまま」です。
「それでも買いたい」と思ってもらえるかは立地条件などのあらゆる要素で決まります。好条件の物件で、タイミングよくその物件を欲しがっている買い手に出会えれば、比較的高い値段で売ることができるでしょう。
不動産業者に売る
不動産業者に売る方法は、ケースによっては特に高く買い取ってもらえるパターンとなります。理由は下の通りです。
- 借地権が買い叩かれるのは「地主との関係が難しい」からである
- しかし、不動産会社なら地主との交渉も有利
- つまり、彼らなら借地を有利な条件で運用できる
一般人だったら有利に使いこなせない借地でも、不動産会社だったら有利に使いこなせることが多い、というわけですね。ただ、これは当然ながら会社によります。
借地権の売買に強い会社もあれば、そうでない会社もあるでしょう。このあたりは、複数の不動産会社に相談をして見積りをとった上で比較するべきといえます。
(最初は不動産一括査定サイトを使ってみるのもいいでしょう。一括査定サイトについては下の記事を参考にしていただけたらと思います)
借地を相続したときの選択肢・一覧
自分で契約した借地でなく、父母・両親が亡くなるなどして、借地を相続するケースもあるでしょう。この時に子供がとるべき選択肢は下記のようになります。
- 契約を継続して自分が住む
- 契約を継続するが、アパートなど別の建物を建てる
- 土地を地主から買取り、所有者となる
- 借地権を地主に買い取ってもらう
- 借地権を第三者・不動産会社に売る
- 土地が広い場合は「等価交換」によって土地所有者になる
以下、それぞれの選択肢について説明していきます。
契約を継続して自分が住む
借地権を相続するときは、大抵両親や祖父母が住んでいた家屋が残っているものです。その家屋にそのまま住み続けていいと感じた場合は、契約を継続して自分で住むのもいいでしょう。
最低限の手続きはありますが、負担が一番小さい方法はこの選択肢になります。
契約を継続するが、アパートなど別の建物を建てる
「借地権を売ったり解消したりするのは面倒だけど、親の住んでいた住居に住むつもりはない」ということもあるでしょう。別にその住宅が嫌ということではなく、仕事の勤務地と離れているので住めない、などのケースも多いはずです。
そのような場合、借地権契約だけは継続しつつ、建物だけ建て替えるという方法があります。たとえばアパートを建てて賃貸経営をするなどの選択肢が代表的なものです。
- 初期投資が必要
- 利用用途変更の申請が必要(地主に対して)
上記の2点のみ注意が必要ですが、うまく運営する自信があれば、このように借地を活用するのもいいでしょう。アパート経営だけでなく駐車場経営などの選択肢もあります。
土地を地主から買い取り、所有者となる
地主に底地権がある限り、借地を売却するのも活用するのも何かと制限が多いものです。これが厄介だと感じたら、まずは地主から土地を買い取るのがいいでしょう。
ただ、これには相応の資金が必要ですし、買い取ったあとでどのように活用するのかというプランも綿密に練る必要があります。素人がいきなり賃貸経営などを始めて成功させるのは難しいため、信頼できる不動産会社などのアドバイスを受けるようにしましょう。
借地権を地主に買い取ってもらう
「借地なんていらない」という場合は、借地権を地主に買取りしてもらうのも選択肢の一つです。買い取ってもらう以上、自分に現金が入ってくるというのもメリットです。
ただ、親が亡くなってしばらくの期間は、処理しなければならない問題が多く、一般的に疲弊する人が多いものです。それを気遣ってくれる地主もいれば、逆にそこにつけ込んで買い叩こうとする地主もいます。
「買値がいくらでもいいから早く処分したい」という気持ちにつけ込んで買い叩くというわけですね。そのような地主は少数派ではありませんがゼロではないので、売却はあまり急がないようにしましょう。
借地権を第三者・不動産会社に売る
借地権を第三者や買取業者に売るという選択肢もあります。貸主が法外な条件を突きつけて来た場合などは、このような方法で売るのがいいでしょう(売りたい場合)。
ただ、借地を売るには貸主の許可がいります。売却の妨害のために許可を出さない貸主も稀にいますが、どうしても売りたい場合は調停や裁判によって決着をつけることが可能です。
大抵は裁判までいかずに調停で決着がつくことが多いものです。
土地が広い場合は「等価交換」によって土地所有者になる
借地が広い場合は「建物が建っているスペースはわずか」「後は何もない土地」ということもあるでしょう。この場合、等価交換と呼ばれる下のような方法を使えます。
- 「何もない土地」の借地権を、貸し主に買い取ってもらう
- それで得たお金で「建物がある土地」の借地権を買い取る
これによって、建物は土地も含めて完全に自分のものになり、借地もゼロとなって面倒な契約関係もなくなるということです。
借地がゼロになるかはもちろん面積や交渉によります。あまりに土地が広かった場合、必要金額分を買い取ってもらっても、まだ借地権が残っているということもあるでしょう。
逆にそれほど土地が広くなかった場合、建物がある分の土地を買い取るにも、いくらか「自腹」を切る可能性があります。何にしても、このような方法で底地権(借地の土地所有権)を手に入れる選択肢もあるということです。
地主が更新を拒否した場合の借地の売却
契約期間が満了すると、通常は借地契約が更新されます。しかし、地主が土地を使いたいなどの事情で、更新が拒否されることもあるでしょう。
あるいは、更新料を高額にするなどの方法で「暗に立ち退きを要求する」というケースもあります。このような状況での対処法のポイントをまとめると、下の通りです。
以下、それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
地主に対しては、借地権の買い取りだけでなく立ち退き料を請求できる
借地契約に関しては、土地を借りている借地人の方に強い権利があります。土地を追い出されたら生きていくのが難しくなるため、法律は借主側を保護するようになっているのです。
そのため、地主に更新を拒否されたら借地権を買い取ってもらえるだけでなく、立ち退き料(明け渡し料)を請求することもできます。
立ち退き料とは?
立ち退き料には借地権の買い取り金額も含まれることがありますが、それを除くと下のような費用です。
- 引越しにかかる費用
- 新居の契約にかかる費用(敷金・礼金・不動産会社の仲介手数料など)
上記が基本的なもので、他にも事業を営んでいた場合には下のような補償が受けられます。
- 営業補償
- 投下資本を回収できなかったことに対する補償
1つ目の営業補償は「立ち退きによって営業できなくなった期間の売上・収益を補償してもらう」というものです。地主の更新拒否さえなければ得られたはずの利益なので、これは借り主側が請求できるのです。
もちろん、この売上・収益については実際に発生したものではないので「おそらくこのくらいは稼げていただろう」という収益価格を想定します。この根拠になるのは過去の売上や利益です。
2つ目の投下資本を回収できなかったことに対する補償というのは、アパートなどの建物を建てたときに適用されるものです。アパートを建てるには当然初期費用がかかりますが、最初は赤字となります。
それを10年や20年かけて取り戻すという前提で投資をしていたのに、途中で地主の都合によって契約を打ち切られてしまったとなると、投資が無駄になってしまいます。
そのため、無駄になった分を地主に補填してもらえるのです。資本を投下した内容にもよりますが、大抵はアパート1棟で数千万円などの金額になるので、そのうち回収できなかった金額が1000万円を超えることもあるでしょう。
立ち退き料で特に大きな金額は、この2つ(営業補償・投下資本への補償)だといえます。借地の立ち退き料については下の記事で詳しく解説しています。
更新料の値上げが不当なものなら、借地借家人組合連合会などに相談する
地主側が更新を拒否したわけではないものの、更新料を大幅に値上げするというケースもあるでしょう。賃貸借契約の内容で値上げが許可されているなら、それ自体は違法ではありません。
しかし、その値上げの仕方が明らかに不当なものであると感じたら、借地借家人組合連合会などに相談してみましょう。地元の不動産会社に相談すると、逆にマイナスになるケースもあります。
理由は、不動産会社にとっては地主の方が「良いお客様」だからです。地主は他にも土地権利を持っている可能性があり、今後土地活用のためにアパートを建てて大家になるなど、不動産会社とあらゆる場面で繋がる可能性があります。
そのため、地元の不動産会社にとって経済的利益が大きい相手は地主の方なのです。もちろん、借り主の味方をしてくれる会社もあるでしょうが、確実に借り主側の味方であるとわかっている借地借家人組合連合会に相談する方が安心といえます。
立ち退き料は、地主の「正当事由充足割合」に応じて値引かれる
立ち退き料は一定の値引き率で減額されることもあります。この値引率は「正当事由充足割合」によって決まるものです。
正当事由充足割合とは「その立ち退き要求や更新拒否について、正当な自由があるか」という割合のことです。たとえば下のようなものはある程度正当事由として認められます。
- 地主の子供が結婚したので、家族で住める家を建てるために土地権利が欲しい
- 地主がその土地でなければできない事業を始めたい


正当事由充足割合が多いほど、地主が支払う立ち退き料(明渡し料)は安くなります。逆に割合が低いほど立ち退き料は高くなり、撤退する借り主側がもらえるお金が大きくなる仕組みです。
借地権を売却するときの譲渡承諾料の相場
借地を売却するためには、地主の承諾が必要です。この承諾を得るための料金が「譲渡承諾料」と呼ばれます。
譲渡承諾料の相場は「借地権価格の10%」とされています。借地権価格は下のように計算します。
- 「実勢価格」を用いる
- 実勢価格とは「客観的な評価額(時価)」である
- 客観的な評価には「鑑定委員会による評価」が必要である
つまり、不動産鑑定士などの専門家でも個人ではダメで、委員会のような組織による「正式な不動産鑑定評価が必要」ということです。
これを借地権譲渡許可の裁判に対して、委員会から提出する必要があります。
地主が売却に応じてくれない場合は、どうすればいい?
借地を売却しようとしても、地主が承諾してくれないこともあるでしょう。このような場合はどうすればいいのか、とるべき対策を説明していきます。
まず交渉し、ダメなら裁判(借地非訟)を行う
第三者への借地の売却を地主が承諾してくれなくても、条件によってはOKとなる可能性もあります。そのため、まずは粘り強く交渉しましょう。
しかし、それでも承諾してもらえない場合はあります。そのときは「借地非訟」という裁判を起こします。
借地非訟の「土地の賃借権譲渡」を適用
借地非訟には、下の5種類があります。
借地非訟の種類 | 借地借家法での条項 |
---|---|
借地条件変更申立事件 | 17条1項 |
増改築許可申立事件 | 17条2項 |
借地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件 | 19条1項 |
競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件 | 20条1項 |
借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件 | 19条3項・20条2項 |
この中の3つ目の「借地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件」を適用します。「又は」の後の「転貸の~」は賃貸のときのものなので、売却では関係ありません。前半の「借地の賃借権譲渡」が関係します。


裁判になる前から弁護士と連携しておくべき
当然ながら、上記のように裁判となったら、一般の方が「自分の力だけで行う」のは不利です。一般的に裁判の経験は地主の方が豊富なもの。さらに地主が弁護士をつけてくる可能性を考えたら、こちらも先手を打って弁護士をつけておくべきでしょう。
「裁判になってからつければいい」と思うかもしれませんが、「裁判の前からつける」方が有利になります。理由は下の通りです。
- 弁護士がつくことで、裁判まで行かずに交渉で決着がつく(ことが多い)
- 裁判になるにしても、弁護士と自分が連携して準備する時間が長い方がいい
前者の理由は納得しやすいでしょう。相手側に弁護士が出てきた時点で「裁判をしても負けるから、交渉で妥協しよう」と考える地主は多いものです。
後者については、特に「複雑な案件」の場合に有利となる点です。地主の側にも言い分があり「どのように決着するかわからない」というケースでは、あなたと弁護士がよく連携して裁判に臨む必要があります。早めに動く方が、そのための時間を確保できるということです。
士業との連携が強い買取業者に依頼するのがベスト
弁護士にも得意不得意があり、不動産に強い弁護士もいれば、そうでない弁護士もいます。もっというと、不動産に強い弁護士の中でも、借地非訟の経験が豊富な弁護士もいれば、そうでない弁護士もいるわけです。
このため「借地非訟でもっとも信頼できる弁護士」を探す必要がありますが、これは一般人にとっては難しいもの。その点、士業との連携が強い買取業者に相談すれば、弁護士もスムーズに探せます。弁護士とのパイプが多いというだけではなく「実際に借地非訟を一緒にこなす」などの経験も多くしているためです。
士業と連携する業者なら、クランピーリアルエステートがおすすめ
士業との連携が強い不動産業者で、特におすすめできるのは冒頭でも紹介した「クランピーリアルエステート」。全国800以上の士業ネットワークを持ち、借地非訟に強い弁護士とも、豊富なパイプを築いています。
交渉や裁判を有利に進められることに加え、同社自体も借地を積極的に買い取っています。このため、「地主の承諾を取り付けてすぐにクランピーリアルエステートが買い取る」ことも可能。借地活用の選択肢が多い同社では、他社以上の高額買取が期待できます。
同社は全国の物件の出張査定に無料で対応しているため、どのエリアで借地を持っている方も、お気軽に査定を受けることができます。詳しくは下のリンク先の公式サイトをご覧ください。

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- 現状のままで借地・底地を買い取り可能
- 売却後の登記や確定申告・必要書類のサポートも充実
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まとめ
以上、借地権の売却の相場についてまとめてきました。最後に要点を整理すると、下のようになります。
- 借地権売却の相場はない
- しかし、大体借地権価格の「3分の1~3分の2」の範囲になることが多い
- 売却する相手は主に地主・第三者・不動産会社の3通りに分かれる
借地は持ち続けるのも何かと大変ですが、売却するときもやはり手間が多いものです。トラブルを避けて円満な取引をするためには、信頼できる不動産会社・コンサルタント・FPなどの専門家の意見を聞いて参考にするのがいいでしょう。
自らも借地の売却についての勉強をしながら、スムーズに取引を進めるようにしてください。