借地の立ち退き料の相場はいくら?7つの算定要素を解説!

借地の立ち退き料の相場はいくら?7つの算定要素を解説!

借地の立ち退き料の相場は、明確には決まっていません。しかし「算定要素」と呼ばれる7つの補償項目があり、この補償金額を合計して決めることが多くなっています。

「合計すると大体土地価格の何割になる」などの相場はありません。引越し費用や営業保証、慰謝料の性格を持つ費用までさまざまな項目があり、完全にケースバイケースとなるためです。

このように「算定方法はあるが、相場はない」という前提で、借地の立ち退き料について解説していきます。




借地料の立ち退き料の7つの算定要素

計算

借地の立ち退き料は、下の7つの算定要素の金額を合計して決めることが多くなっています。

  1. 借地権に対する補償
  2. 引っ越し費用の補償
  3. 新たな借地契約にかかる費用の補償
  4. 立ち退き前後の賃料差額の補償
  5. 営業補償
  6. 投下資本を回収できないことへの補償
  7. 社会的・地縁的変化についての補償

以下、それぞれの算定要素について解説していきます。

借地権に対する補償

借地人(土地の借主)には、借地権があります。借主に対して立ち退きを迫ることは、この権利を奪うことです。

権利を奪うには相応の補償が必要であり、この「借地権に対する補償」が、立ち退き料の大部分を占めているといえます。この補償の計算方法は以下の通りです。

  • その土地の更地価格(実勢価格)を調べる
  • その更地価格の50~70%が「借地権価格」になる
  • その借地権価格の何割かが、借地権の補償金額になる

たとえば、下のような条件だったとしましょう。

  • 更地価格…1000万円
  • 借地権価格…更地価格の60%
  • 借地権の補償金額…借地権価格の3割

この条件で計算すると、1000万円×0.6×0.3=180万円となります。あくまで大雑把な計算ですが、「借地権に対する補償」だけで1000万円の土地なら180万円程度の立ち退き料が必要になるということです。

売野くん
まだ他にも立ち退き料があるんですよね?
不動先生
はい。ケースによってはここからの金額の方が多くなるでしょうね。

引っ越し費用の補償

借地契約を貸主の都合で打ち切ったのであれば、借主の引越しにかかる費用も貸主が負担すべきといえます。引越費用とは具体的には下のようなものです。

  • 引越業者に支払う費用
  • 引越し先までの交通費
  • 住民登録の届け出などに必要な諸費用

最後の届け出の諸費用を「移転する際の雑費」として、引越し費用とは別に分類する専門家もいます。どのような分類でもかまいませんが、このような移転・引越しに伴う費用はすべて貸し主側が負担することが多くなると考えてください。

新たな借地契約にかかる費用の補償

これまで借地で生活や事業経営をしていた以上、借主は次の拠点でも土地を借りる必要があると考えられます。このため、新たに借地契約をする場合はそれにかかる費用も貸し主の負担とすべきです。

具体的な費用項目としては下のようなものがあげられます。

  • 権利金
  • 礼金
  • 仲介手数料(不動産会社に支払うもの)

この際、借主は「立ち退き前の土地と同レベルの土地」を借りる必要があります。それ以上のレベルの土地を借りてもいいのですが、その場合は「レベルが上がって高くなった分」を差し引くのが普通です。

立ち退きに便乗して高級な土地を借り、その初期費用を前の貸し主に負担させる、ということは当然ながらできません。

立ち退き前後の賃料差額の補償

上の契約費用と同じく、同レベルの土地で賃料が高くなった場合は、その差額も元貸し主が補償する必要があります。貸し主が立ち退きを迫らなければ、借主はその高い地代を払う必要はなかったからです。

営業補償

借主がその土地で事業を営んでいた場合、立ち退きによってしばらく休業するか、廃業することになります。貸し主はこの損害も補填することが必要です。

損害金額の計算は、借主の売上や利益などから判断します。一般人同士の議論で決着がつく可能性は低いため、弁護士や場合によっては税理士なども参加して議論し、算定する必要があります。

投下資本を回収できないことへの補償

特に事業者の場合、借主は土地を借りて数千万円や1億円などの投資をして、建物や施設を建てています。この初期投資を回収するためには、一定期間継続して事業を営む必要があったでしょう。

途中でそれを中断させられたということは、投下資本が回収できなくなったということです。借主にはこの損害も請求する権利があります。

売野くん
さっきの「営業補償」との違いは何ですか?
不動先生
極端な話、営業補償は「建物なし」でも成り立つものです。

たとえば、借主が土地を借りて「資材置き場」の運営をしていたとしましょう。この場合、建物にかかる投下資本はほぼゼロです。そのため、この点については貸し主が保証する必要はありません。

しかし、資材置き場の利用者がいたら、借主はそれによって毎月収益を得ていたわけです。それが失われるので、営業補償はする必要があります。

もちろん、土地を借りた人が何も建物を建てない、プレハブすら設置しないということはめったにありません。これはあくまで例外的なケースです。ただ、投下資本への補償と営業補償の違いは理解していただけるかと思います。

社会的・地縁的変化についての補償

これは特に住宅などの居住用不動産に当てはまるものです。長くその土地に住んでいればいるほど、ご近所との関係が深まる、友人ができるなどの地縁的なメリットが発生することが多くあります。

それを失うことに対する補償が必要ということですが、わかりやすくいうと「慰謝料」のようなものです。慰謝料とは「精神的な苦痛に対する賠償」ですが、この補償も同じ性格を持っています。

もちろん、人によっては「隣人とうまくいっていなかった」「友達などいなかった」ということもあるでしょう。この場合は、仮に裁判までもつれ込んだ場合、貸し主は隣人や友人の証言を要求できます。

契約期間終了時の更新拒絶でも、立ち退き料は支払われる?

お金

契約期間満了のタイミングで、地主が更新を拒絶することもあります。この場合も立ち退き料の支払いは必要です。

売野くん
期間が満了しても支払うというのは、厳しすぎませんか?
不動先生
地主からしたらそうですね。しかし、借りている方は生活や事業の基盤があるので、法律は借主を優先しているんです。

契約終了時の更新拒絶に関して、立ち退き料(明け渡し料)のポイントをまとめると下記のようになります。

  1. 基本的な計算は通常と変わらない
  2. 「正当事由充足割合」の分だけ差し引かれる

以下、これらのポイントについて説明していきます。

基本的な計算は通常と変わらない

契約満了時であっても、基本的な立ち退き料(明渡し料)の計算は、ここまで書いたものと変わりません。7つの算定要素をもとに計算されます。

「正当事由充足割合」の分だけ差し引かれる

正当事由とは文字通り「契約を解除するだけの正当な事由」のことです。その事由をどれだけ満たしたかという割合が「正当事由充足割合」となります。

この割合が仮に100%だった場合、「契約解除は完全に正当である」とされ、立ち退き料を払う必要はなくなります。逆に0%だったら、7つの算定要素で算出された金額の全額を、貸し主が支払うことになります。

借地の立ち退き料が減額される正当事由・4つの例

土地と家

正当事由に該当する可能性があるのは、下の4つのようなケースです。

  1. 貸主がその土地に住む必要がある
  2. 貸主がその土地で事業を営む必要がある
  3. 貸主がその土地を維持できない事情がある(経済的困窮など)
  4. 借主が信頼関係を壊すような行為を働いた

以下、それぞれのケースについて解説していきます。

貸主がその土地に住む必要がある

貸主の事情が変わり、「これからその土地に住む必要がある」という場合には、正当な理由と認められます。たとえば下のようなケースです。

  • 長い転勤生活から解放されて、両親のいる地元に住めるようになった
  • 地主の子どもが結婚し、家族で住む家を建てるための土地が必要になった

1つ目については、契約期間が満了していなければ正当な事由とは認められにくいでしょう。しかし、契約期間が満了したならある程度の割合で認められる可能性があります。

特に父母が要介護状態であるなど「近くにいるべき理由」がある時には、正当事由の充足割合が高くなるものです。逆にそのような事由がなく「何となく地元に住みたい」というのでは弱いでしょう。

2つ目も同様で、やはり契約終了のタイミングであれば「一定の必要性がある」と判断されます。特に結婚した子どもが、さらに子供を何人か生んでいた場合には認められやすいでしょう。

貸主がその土地で事業を営む必要がある

これは少々珍しいケースですが「どうしてもその土地でなければその事業ができない」というときには認められます。具体的には「その立地だからこそできるビジネスプラン」などが考えられるでしょう。

ただ、これは「生きるために絶対に必要」というものではありません。あくまで貸主の野心を達成するためのものですから、正当事由としてはやや弱いといえます。

反面、その事業がNPO法人の事業など公益性の高いものであり、林業や農業などで「その土地でなければできない」という事情があれば認められやすいでしょう。

貸主がその土地を維持できない事情がある(経済的困窮など)

貸主が経済的に行き詰まり、その土地を売却しなければならないなどの事情があれば、これも正当事由として認められます。「どのような理由で経済的に困窮したのか」という事情にもよりますが、現実に売却する必要があるなら認められるものです。

金銭的な問題以外で貸主が土地を維持できなくなる事情としては、たとえば健康問題などがあげられます。これも後継者の有無などの諸事情によって、正当性の度合いが変わります。

借主が信頼関係を壊すような行為を働いた

土地を借りている借地人が、信頼関係を壊すようなことをした場合には、契約解除は正当と認められます。具体的には下のような行為です。

  • 借地料を支払わない
  • 契約時の申告と異なる用途で土地を使用している
  • 土地の価値を毀損した

いずれも重大な契約違反のため、立ち退き料を払わなくていいだけでなく、場合によっては損害賠償を求めることも可能です。特に最後の「土地の価値を毀損する」ことは重大な問題です。

具体的には汚染物質・汚水などを流すなどの行為があげられます。このような問題を起こす人はめったにいないでしょうが、特に資材置き場などの用途で貸し出していた場合、置いている資材によってはこうした問題が起きる可能性もあるでしょう。

借地料の支払い遅延については、回数が少ない・日数が短いというケースではそこまで重大な問題とは見なされません。たとえば「2カ月以上の遅延」など、明らかに悪質な支払い遅延については契約解除が正当と認められる可能性が高くなります。




借家・賃貸物件の立ち退き料の相場は?

アパート

土地でなくアパートや戸建住宅などの借家の場合、立ち退き料にはある程度の相場があります。ポイントをまとめると以下の通りです。

  1. 家賃の5~6ヶ月分が目安
  2. 期間満了日の6ヶ月~1年前に通知する
  3. 店舗物件はケースバイケース

以下、それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。

家賃の5~6ヶ月分が目安

借家の立ち退き料は、家賃の5カ月~6ヶ月分を大家側(賃貸人側)が支払うことが多くなっています。この金額は下のような諸費用をすべて含んだものです。

  • 新しい住居を探す費用(礼金・敷金・保証金・不動産屋の仲介手数料など)
  • 引越し費用

たとえば家賃が5万円の物件なら、25万円~30万円を支払うということです。それだけあれば新居を探して引越しもできる、ということが多いでしょう。

もちろん、この5~6ヶ月分というのはあくまで目安です。実際には借主側(賃借人側)の事情も考慮し、双方で歩み寄りながら話し合いをする必要があります。

期間満了日の6ヶ月~1年前に通知する

アパート・マンションなどの賃貸物件は、契約が2年ごとに更新されることが多くなっています。大家側が立ち退きを要求する場合、この更新日の6ヶ月~1年前までには、書面・口頭の両方で通知することが必要です。

これは明確に法律で決まっているわけではありません。しかし、賃貸借契約を交わすときに契約書で記載していることがほとんどです。ルールは間に入った不動産業者が決めていることが多いでしょうが、大体上記のように「半年から1年前に口頭・書面の両方で通知」というルールになっています。

店舗物件はケースバイケース

住居ではなく飲食店などの店舗物件の場合、立ち退き料の相場は完全にケースバイケースです。店舗を移動させることは、個人が自宅を移すよりもはるかに難しいことです。

立ち退きによる経済的損失額も個人より断然大きいため、特に営業保証の金額が大きくなるでしょう。事業用に建物を貸す場合は特に、長期に渡ってその建物を貸したままになることを覚悟し、熟考するべきといえます。



借地・借家の立ち退き料に関する用語解説

土地とお金

この段落では、ここまでに解説しきれなかった借地・借家の立ち退き料に関する用語を解説していきます。

  1. 地上権
  2. 底地権
  3. 賃借権
  4. 借家権

以下、それぞれの用語についての解説です。

地上権

地上権は、簡単にいうと「土地の使用権」です。辞書の正確な表現では下記のようになります。

他人の土地において、建物などの工作物または竹木を所有するために、その土地を使用する物権。
コトバンク「地上権」

土地を借地に出している間は、借地の使用権は地主ではなく借主にあります。そのため、地主は土地の所有者であっても、土地に対して何もできません(その分、毎月地代をもらっているわけです)。

地上権の逆で「地下権」もあります。これは地上と地下が入れ替わっただけで「地下を自由に使っていい」というものです。同じように「空中権」もありますが、一般人にはあまり関係がありません。

(ただし、近年はドローンが普及してきたため、空中権に関する法律が新しく定められる可能性もあります)

底地権

底地権は地上権の逆で、簡単にいうと「土地の所有権」です。辞書の定義では下のようになっています。

借地権などの使用収益権が設定されている土地の所有権。
コトバンク「底地」

通常の所有権との違いは「現時点で土地を貸している」ということです。土地を貸していない場合はただの所有権ですが、貸すと使用権が失われて「底地権」になります。

賃借権

賃借権(ちんしゃくけん)は、その土地・建物を借りる権利です。辞書風にいうと「賃借人が契約の目的物を使用する権利」となります。

ここでは土地・建物と書きましたが、賃借権は家具や機械などにも適用できるものです。「何かを借りて使用する権利」が賃借権です。

借家権

借家権は「その建物を借りて住む権利」です。正確には「借家人がその建物に継続して住む権利」となります。

賃借権と似ていますが、賃借権と違い「住宅」に限定されているのが特徴です。賃借権は住宅以外でもすべての物品に対して発生する権利です。

ゴルフ会員権に価格があるように、あらゆる権利には価格があります。借家権にも「借家権価格」というものがあり、ここから立ち退き料を計算する方法が「借家権割合方式」です。

まとめ

土地のイメージ

以上、借地の立ち退き料の計算方法や、正当事由などについて解説してきました。最後にポイントをまとめると、下のようになります。

  1. 借地の立ち退き料の相場は決まっていない
  2. 主に7つの算定要素があり、その金額を合計して決める
  3. 「正当事由充足割合」が高いほど、立ち退き料は少なくなる
  4. 借家の立ち退き料では「家賃の5~6ヶ月分」という大体の相場がある

ポイントは以上になりますが、借地の立ち退き料に関してはお互いが相手の主張をよく聞き、トラブルにならないよう円満に解決することが重要です。当記事で紹介した算定方法なども参考にしつつ、双方が納得できるような気持ちの良い交渉を目指してください。