借地権と底地は、セットにすることでより高く売れます。この「セットにする」方法の一つが同時売却です。この同時売却について、下のような疑問を持つ人は多いでしょう。
- 同時売却とは、具体的にどんな行動か
- 利益が出たら、地主・借地人でどうやって分けるのか
- 契約書はどう書けばいいのか
この記事では上記の疑問への答えを中心に、借地権と底地の同時売却について解説していきます。借地人の方にとっても地主さんにとっても、きっと役立つ内容になるでしょう。
なお、同時売却でも通常の売却でも、借地権や底地はなかなか売りにくいものです。こうした権利関係が複雑な不動産は、通常の業者より「専門業者」の方が有効活用できます。そのため、専門業者に売却する方が高い値段がつきやすいのです。
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- 借地権・底地の同時売却とは何か
- 借地人・地主の取り分の割合はどうなるか
- 契約書の書き方のルール
- 国が底地を所有している場合はどうなるか
借地権と底地の同時売却とは
まず「借地権と底地の同時売却とは何か」を説明すると、下のようになります。
以下、それぞれ解説していきます。
借地人と地主が共同で、借地・底地を売ること
借地権と底地の同時売却とは「借地人と地主が共同して、借地と底地を同時に売ること」です。借地人は借地を持ち、地主は底地を持っています。
この「それぞれが持っている土地」を「一緒に売る」のが同時売却です。
同時売却は高値で売れる
なぜ同時売却をするかというと「高値で売れる」ためです。借地と底地は、どちらも「片方だけ」では不自由なものです。
- 借地だけ…あらゆる場面で地主の許可が必要
- 底地だけ…土地をまったく使えない(地代はもらえる)
上記のように、どちらもデメリットがあります。このため「片方だけだと価値が落ちてしまう」のです。
これがセットになると「自由に使える」ということで価値が上がります。そのため「同時に売る」と、売値も高くなるのです。
売った利益をどう分けるかが問題になる
同時売却して買い手がつくと、それによって利益が出ます。この利益を借地人・地主でどう分けるかが難しいところです。
これは一番重要なところでもあるので、次の段落で説明します。
底地と借地の同時売却での割合
底地と借地を同時売却するとき、借地人と地主が受け取る利益の割合について書くと、下のようになります。
以下、それぞれ解説していきます。
割合で揉めるのはなぜか
借地権と底地の同時売却において、割合(利益の配分)で揉めるのは、地主・借主の考えがそれぞれ下のように異なるからです。
- 地主…もともと自分の土地なので、取り分は多めに欲しい
- 借主…借地権割合は大体60%~70%なので、そのくらいは欲しい
どちらの考えも自然であり、強引に決める法律上のルールもないため、同時売却では常に両者が慎重に話し合う必要があります。
借地権割合は通じない
借地権の世界には「借地権割合」というものがあります。借地権割合とは「ある土地が借地になっていたとき、借地人が何割の権利を持っているか」という割合です。
一般的には、借地権割合は「60%~70%」とされます。これで土地の価値が1億円だった場合、借地部分の価格は「6000万円~7000万円」ということです。
しかし、同時売却ではこの借地権割合が通じません。
借地権割合は税金の計算で使うもの
本来の借地権割合は、税金の計算で用いられるものです。
- 相続税
- 贈与税
上記のような、主に「借地の権利が移動するとき」の税金計算で使います。国が借地権割合を定めているのはそのためです。税金の徴収のためにはどうしてもこの割合を決める必要があるわけです。
税金の計算と関係のない場所では、借地権割合は原則無効となる
上記のように、あくまで「国が税金の計算のために定めただけ」の数字が借地権割合です。そのため、税金の計算と関係のない場所では「原則無効」となります。


例えば借地権を単独で売却する場合、どうしても「その借地の価値はいくらなのか」を計算する必要があります。その客観的な根拠の1つとして、国が定めている借地権割合は説得力があるわけです。
このため、借地権の売買などの場面で、借地権割合が使われることもしばしばあります。しかし、本来は「税金の計算のために使うもの」であり、同時売却での割合計算に使えるとは限らないのです。
補足…国税庁の説明
国税庁は借地権割合について、下のように説明しています。
この借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表に表示されています。路線価図や評価倍率表は、国税庁ホームページで閲覧できます。
借地権の評価(国税庁)
簡単にいうと「借地権割合はエリアごとに決まっている」「路線価図・評価倍率表に書かれている」ということです。
「単純に半分ずつに分ける」ことが多い
最終的にどう分けるかというと「単純に半分ずつ」となるケースが多いとされます。この理由は下の通りです。
- わかりやすい
- 先例が多い
- 借地権割合も平均的に6~7割なので、さほど離れていない
地主からしたら「もともと自分の土地なのだから、半分では少ない」という不満もあるでしょう。しかし、借地権割合だと60~70%が平均的なので、それよりはマシなわけです。
また「半分ずつ」というのはもっとも単純でわかりやすく、「多くの先例がそうなっている」ことからも、この割合が採用されることが多くなっています。
借地権・底地の同時売却での契約書のポイント
借地権と底地を同時に売却する際における、契約書作成のポイントは下の通りです。
以下、それぞれ詳しく説明していきます。
「不可分一体」の特約条文を入れる
底借同時の売却では、契約書に「不可分一体」の特約条文を入れる必要があります。これは下のような意味です。
- 借地権・底地を一体として売る
- 片方の売却が不成立になったら、もう片方も不成立になる
- 両方の売却が成立しない限り、売却は一切発生しない
なぜこのようなルールが必要なのかを説明します。
主に買い手の利益を守るため
底借同時の売買では、買い手は「セットだから買う」わけです。「セットでなくなったら、話が違う」わけですね。
そのため、たとえば借地権だけ先に買って、その後に成立するはずだった底地の売買が不成立となると、買い手は困るのです。このようなときは、買い手が契約をキャンセルできるようにする必要があります。
このために契約書に書き込む内容が「不可分一体の特約条文」ということです。
その他の書き方は自由
上記のルールさえ守れば、その他の書き方は自由です。これは底借同時の売却に限った話ではありません。
不動産でもその他の世界でも、基本的に「契約書の形式は自由」なのです。「当人同士が決めるべきこと」が書かれていたら、それで問題ありません。


要は下のようにいえます。
- 決めるべきことを決めておかないと、自分たちが困るだけ
- 自分たちが困っても、国や他人には関係ない
- だから、国は契約書の形式を決めていない
ということです。もちろん「関係ない」といっても、当人同士が裁判に持ち込んだら、そこで裁判所は動きます。
しかし、逆に言えば「そうなるまでは関係ない」わけです。また、裁判になったらなったで「詳しく双方の言い分を聞いて判決を下す」ので、契約書の内容がどうであろうと「裁判官が困る」ということはありません。
このような理由から「契約書の書き方は自由」なのです。
ネット上の雛形を使うか、司法書士などに任せる
多くの場合、契約書はインターネット上のひな形(テンプレート)が使われます。名前や住所など、一定の項目を記入するだけで完成するものです。
このため、ワードやエクセルなどのソフトを使えれば、特に難しいことはありません。また、これらのソフトが使えない高齢者の方なども、PDFをダウンロードして印刷し、それに手書きで記入する方法もあります。
また、迷ったら司法書士などの書類作成の専門家に相談しましょう。不動産の契約での司法書士への相談・依頼については下の記事にまとめています。
国が底地を所有している場合
底地を所有するのは、個人や企業だけとは限りません。国が所有しているケースもあります。「国の土地を、借地人が借りている」というケースです。
この場合のルールなどをまとめると、下のようになります。
以下、それぞれ詳しく説明していきます。
買受の申し込みをすれば、必ず買える
底地の買い受けとは、あなたが借地権者だったら「地主から底地を買う」ということです。そうすると、あなたの借地権と底地がセットで、完全な「一つの土地の所有権」となります。
個人の地主が相手の場合、これが必ずできるとは限りません。押し売りならぬ「押し売らせ」はできないのです。
あなたがどれだけ買いたくて、どれだけ破格の条件を提示したとしても、地主が「売らない」といったら、それであなたは買受けできません。しかし、国だったらそのようなことはなく「必ず買える」ということです。
年に1回ほど、底地購入のお知らせが届く
実は、国は底地を売りたがっています。国から土地を借りている場合、大体毎年1回ほど「底地購入のお知らせ」というものが届くのです。
これは「あなたに底地を売るけど、買いませんか?」という一種のセールスです。国としても、底地では資産価値が落ちる上に、地代の徴収などの管理が煩雑なので、できるだけ底地・借地の関係を解消したいのでしょう。
国が第三者に底地を売ることはない
これは借地人としては安心できる点です。国があなた(借地人)以外の人に底地を売ることはありません。
つまり、ある日突然地主が国から個人に変わり、その地主に横暴な条件を突きつけられる、という心配はないのです。この点は国が地主であることのメリットの1つといえるでしょう。
借地権での譲渡・建て替えは必ずできる
底地を国が持っている場合、あなたが借地権を譲渡(売却)することは自由にできます。また、借地権があるということは建物を持っているわけですが、その建物の建て替えも必ずできます。
個人の地主の場合、反対されるとできない
地主が国でなく個人の場合、売却にしても建て替えにしても、反対されたらできません。一応裁判に持ち込めば「裁判所が指定した金額の承諾料を地主に払う」という条件で、できます。
そのため「反対されても最終的に譲渡や建て替えをする方法はある」のですが、かなりの手間がかかります。国が地主の場合はこのような手間がかからず、最初からOKをもらえるということです。
(ただし、承諾料は原則として支払うことになります)
借地権での建て替えについて詳しく知りたい場合、下の記事を参考にしていただけたらと思います。
抵当権の設定はできない
あなたが借地権を持っている場合、借地の上に建物を持っています。この建物の所有権はあなたにあるわけです。
そのため、その建物(一戸建て)を担保として、お金を借りることができます。この「担保に入れること」を「抵当権を設定する(抵当権設定)」といいます。
抵当権設定は地主の承諾があればできるが…
借地権(付き建物)に抵当権を設定することは、地主の承諾があればできます。しかし、自分が底地を持つ物件に抵当権がつくことは、大抵の地主が嫌がるものです。
そのため、許可をもらえないケースも多くあります。そして、国が地主の場合、抵当権の設定は一切できません。許可をもらうための交渉などの余地はなく「最初から完全にダメ」ということです。


なお、抵当権設定も含めて、借地権絡みで専門家に相談したいことがあれば、下の記事を参考になさってみて下さい。
まとめ
以上、借地権と底地の同時売却について解説してきました。最後にポイントをまとめると、下のようになります。
- 同時売却をすることで売値が上がる
- 割合は「半々」が多い
- 借地権割合は「税金計算用」なので適用されない(ことが多い)
- 契約書のルールは「不可分一体」の条項を入れること
- それ以外のルールはなく、ネットの雛形で十分
- 国が地主の場合、買受けは必ずできる
特に重要なポイントをまとめると、やはり「自分の主張だけを通そうとせず、相手との交渉をまとめる」ということです。あなたが借地人なら地主の立場を考え、地主なら借地人の立場を考えましょう。
交渉が決裂するよりは、同時売却で高く売れる方がお互いにとっていいのです。そのため、「損して得取れ」の精神で、ある程度譲歩する気持ちも持つようにしてください。