借地権での建て替え・3つのポイント ~地主の許可が必要になる条件は?~

借地権での建て替え・3つのポイント ~地主の許可が必要になる条件は?~

借地権によって利用している建物でも、建て替えはできます。借地権での建て替えについては、下のような疑問を持つ人が多いでしょう。

  1. 地主の許可が必要なのか?
  2. どのくらいのレベルの建て替えで、許可が必要になるのか
  3. 許可をもらう場合、承諾料の相場はいくらになるのか?

それぞれの結論を書くと、以下の通りです。

  1. 原則、地主の許可が必要
  2. 軽微なリフォームは不要、大規模な工事は必要
  3. 承諾料は、更地価格の2~5%が相場

以下、これらのポイントもふまえて「借地権での建て替え」について解説します。

借地権での建て替え・3つのポイント

ポイント

借地権での建て替えには、上に書いたような3つのポイントがあります。まずこの3つのポイントについて解説していきます。

原則、地主の許可が必要

借地権での建て替えには、基本的に地主の許可が必要です。これは法律で決まっているわけではありません。しかし、ほとんどの契約では「建て替えをする場合には地主の許可をとる」という内容が定められています(この点は下の記事でもわかります)。

※参考…借地上の建物の建替え(センチュリー21)
https://century21-sell.jp/faq/20180507.html

判例には例外もある

なお、過去の裁判での判例を見ると、上のような取り決め(地主の許可が必要という取り決め)があっても「それを無視して工事をした借り主の行為が認められた」という判例もあります。この判例の詳細は下の段落で解説しています。

「地主の許可が必要な増改築を、無断でやっても許された」判例

軽微なリフォームは不要、大規模な工事は必要

すべての建て替えで地主の許可が必要になるわけではありません。壊れた部分の修理は生活するために当然必要なものですから、修繕と判断される内容なら、許可は不要となります。具体的には下のようなリフォームです。

  • 壁のひびを埋める
  • 窓枠を直す
  • 雨漏りを直す

逆に「建物そのものの価値や雰囲気が変わってしまう」というような大掛かりなリフォームになると、地主の許可が必要となります。迷った場合は地主に相談するようにしましょう。

もし「地主に先に相談すると条件をふっかけられそう」という心配がある場合は、不動産屋などに先に相談するべきです。「具体的にどのようなケースで、リフォームでも許可が必要になるか」は、下の段落で詳しくまとめています。

借地権のリフォームで、地主の許可が必要になるケース

承諾料は、更地価格の2~5%が相場

借地権での建て替えの承諾料は、更地価格の2~5%が相場とされています。たとえば更地価格が1000万円の土地だったら、20万円~50万円ということです。

※参考…承諾料の算出方法は?(底地.com)株式会社サンセイランディック運営
https://www.sokochi.com/qanda/entry/000187.html

なお、建物の種類や構造を変える場合は「更地価格の10%程度」となります。これは上記URLで「借地条件変更承諾」の部分に書かれています。

借地権のリフォームで、地主の許可が必要になるケースは?

リフォーム

借地権のリフォームが大規模なものになると、地主の許可が必要なのかどうか迷うことが多いでしょう。ここでは、よくあるケース別に許可が必要かどうかをまとめていきます。

  1. 浴室・キッチンなどのフルリフォーム
  2. 老朽化・朽廃した建物のリノベーション
  3. 非堅固建物を堅固建物に建て替える

以下、それぞれのケースでの説明です。

浴室・キッチンなどのフルリフォーム

浴室・キッチンを同時にフルリフォームするような大規模な内容でも、建物が自分のものなら地主の承諾は不要です。借地権の建て替えで地主の承諾が必要になるのは「増改築」の場合となります。

そして、浴室やキッチンなどのリフォームは増改築には当たりません。これは専門家が下のように書いています。

(前略)
内部のリフォーム程度は増改築に当たらないと考えられます。借地法には増改築の定義がないので、建築基準法の定義を準用するものと考えられます。
(中略)
増改築に該当するかどうかを念のため役所の建築指導課に確認しておけば、その分説得力が増すでしょう。(ほぼ該当する可能性はゼロです)
リフォームしようとしたら、地主に言われました。(専門家プロファイル)

上記の引用部分を要約すると、下のようになります。

  • 内部のリフォームは増改築ではない
  • 増改築については「借地借家法」で定義されていない
  • だから「建築基準法」の定義を見る
  • その定義に該当しないので、増改築ではない(つまり、承諾も不要)
  • 一応、役所に確認しておけばさらに安心

この要約で気になるのは「建築基準法での増改築の定義」でしょう。この点については別の段落で解説します。↓

建築基準法での「増改築」の定義

老朽化・朽廃した建物のリノベーション

これはやり方によりますが、基本的には地主の許可が必要になります。大抵は建築基準法上の「増改築」に該当するためです。

具体的にどう該当するかというと、建築基準法では「建築物の全部、または一部を除却する」工事が改築に当たります。この「除却」がポイントです。

除却とは簡単にいうと「取り壊し」のことです。取り壊しをした後「まったく同じ建物を新しく建てた」としても、それは改築と見なされるのです。

売野くん
ということは、老朽化した建物でも「取り壊し」をしなければいいわけですね?
不動先生
そうなります。ただ、廃屋に近いレベルで老朽化した建物だと、人が住めるようにするために一部は取り壊すことが多いといえます。

つまり「一切取り壊しをしなくていい程度の老朽化」だったら改築に該当しません。しかし、大抵は多少の取り壊しは必要となるので、改築に該当する=地主の許可が必要になるということです。

このあたりはあくまで老朽化のレベルによるので、一度不動産会社で相談するのがいいでしょう。借地権に関する相談については、下の記事で詳しく解説しています。

借地権の相談はどこにする?弁護士・不動産業者で無料相談可能!

2018.11.01

不動産会社による説明

参考までに、不動産会社が公式サイトでどう説明しているかも紹介します。

借地上の建物が老朽化したなどの理由により建替えを行う場合には、地主さんの建替え承諾が必要となり、その際には建替承諾料を支払います。
借地権物件の取り扱い方(株式会社マーキュリー)※センチュリー21グループ

この記述からも、老朽化した建物のリフォームは大抵増改築に当たり、地主の許可が必要になるといえます。

非堅固建物を堅固建物に建て替える

非堅固建物を堅固建物に建て替えるという場合、ほぼ確実に地主の許可が必要になります。具体的には「木造建物を鉄骨造・コンクリート造にする」などの工事です。

これは「借地条件の変更」に該当します。ほとんどの借地契約で「借地条件の変更では地主の承諾が必要」となっているため、このケースでは相談が必須と考えて下さい。

借地権での建て替えに関する法律・判例の補足

法律

ここまで説明した内容で、建築基準法や判例が絡む内容は、長くなるため省略してきました。ここでは、それらの内容を補足としてまとめます。

  1. 建築基準法での「増改築」の定義
  2. 「地主の許可が必要な増改築を、無断でやっても許された」判例

以下、それぞれの詳細です。

建築基準法での「増改築」の定義

建築基準法では、増築・改築に分けて、それぞれ下のように定義されています。

増築 床面積を増やす工事。同じ敷地内に別の建物を建築する場合も含む
改築 建築物の全部・一部を除却し、用途・規模・構造の著しく異ならない建築物を建てる

※参考…Wikipedia「建築行為」
https://ja.wikipedia.org/wiki/建築行為

1つ目の増築の方はわかりやすいかと思います。床面積が増えるような工事をすれば、その建物が古い建物とつながっていようがいまいが増築になる、ということです。

わかりにくいのは2つ目の改築でしょう。後半で書かれている「用途・規模・構造が異ならない」という条件は、キッチンなどのリフォームも該当するのではないか、と思うかもしれません。改築に該当するのであれば、地主の承諾が必要となります。

しかし、これはその続きが重要です。「建築物を建てる」とあるので、キッチンのリフォームなどの内部の工事は該当しないといえます。

「用途などが変わらない」という点では該当しますが「建築物を建てる」という行為ではないためです。当記事の前半部分で引用した専門家の言葉で「内部のリフォーム程度は増改築に当たらないと考えられます」とあるのは、このような理由からといえます。

専門家の言葉を引用した部分

「地主の許可が必要な増改築を、無断でやっても許された」判例

ここまで「借地権の建て替えで地主の許可が必要になるケース」を説明してきました。しかし、それらの許可が必要なケースでも無断で工事をし、それが裁判所から認められたという判例があります。

正確には「そういう工事を無断でした場合、地主は利用者を追い出していい」という契約でした。しかし、その契約が無効とされた(追い出せなくなった)という判例です。

まず、その判例での裁判官の結論(主文)を引用します(引用の後で解説しやすくするため、句点ごとに改行しています)。

  1. 建物所有を目的とする土地の賃貸借中に、
  2. 賃借人が賃貸人の承諾をえないで借地内の建物の増改築をするときは、
  3. 賃貸人は催告を要しないで賃貸借を解除することができる旨の特約があるにかかわらず、
  4. 賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合において、
  5. 増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、
  6. 土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、
  7. 賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは、
  8. 賃貸人は、前記特約に基づき、
  9. 解除権を行使することは許されないものというべきである

昭和39(オ)1450・最高裁判例(裁判所公式サイト)

上記をわかりやすく書き換えてみましょう。

まず「下のような特約があった場合」と、話がスタートしています。

 →「地主の許可なしで増改築をしたら、地主は土地を取り上げていい」という特約

上記が1行目~3行目の要約です。次の4行目では、下のように書いています。

 →そういう特約があるのに、借り手が勝手に増改築をした場合―。

その場合にどうなるかというのが、5~7行目に書かれている内容です。結論を書くと「下のようなケースでは、地主は土地を取り上げることができない」としています。

  • 借り手の土地の使い方として、まともである(5行目)
  • 貸し手(地主)に大きな影響を及ぼさない(6行目)
  • 信頼関係を破壊するというほどではない(7行目)

そして、8行目・9行目では「土地を取り上げることができない」という結論を書いています。要約すると下の通りです。

  • 8行目…ここまで書いた特約は、
  • 9行目…無効である(少なくとも土地を取り上げる権利については)

「土地を取り上げる」という表現で書いてきましたが、文中では「(借地権の)解除」としています。

この判決から言えること

この判決から言えることは下の通りです。

 「地主の許可なしで増改築をしたら土地を取り上げる」という特約があっても、その増改築に大きな問題がなければ、その特約は無効である。

売野くん
結構、借り手に甘いような気がしますね。事前に「取り上げる」という約束をしていたことを考えると…。
不動先生
確かに、借地権に関する争いは借り手が有利になるようできています。この件でも地主が納得できなかったので、最高裁まで争ったわけです。

借り手(借地人)がなぜ保護されるかというと「追い出されたら生活できない」可能性があるためです。

  • 住宅の場合…生活の場所がなくなる
  • 店舗・事業所の場合…事業ができなくなる

どちらにしても、土地を借りている人にとって「借地権を取り上げられる」というのは、大抵生活に大打撃を与えるわけです。一方、地主は「土地を貸すほどの余裕がある」ということで、大抵はその借地権が継続してもマイナスはありません。

もちろん「借り手が地代を払っている限り」ということです。払っている限りは「多少不自由やいさかいがあっても収入源になる」わけですから、地主はそんなに困らないのです。

このため、借地借家法は借り手が有利になるようにできています。また、法律に明記されていない内容を裁判で争うときも、大抵は借り手が有利になります。

まとめ

建築業者との相談

以上、借地権での建て替えについてのルールを解説してきました。最後にポイントをまとめると、下のようになります。

  • 原則として地主の許可が必要
  • キッチンや浴場などの内部の修繕なら、フルリフォームでも許可は不要
  • 外部の修繕でも生活上必要で正気場合おなものなら不要
  • 老朽化した建物の一部を取り壊すようなリフォームでは、許可が必要
  • 地主の許可が必要な場合、承諾料として更地価格の2~5%程度を払うのが相場

仮に法的に問題がなくても、地主(あるいは逆に借り主)とトラブルを起こして得することは基本的にありません。できるだけ穏便に事を運べるよう、うまくコミュニケーションを取るようにしてください。