借地権の登記のやり方は?建物がある場合は所有権保存登記、ない場合は賃貸借契約のみ

借地権の登記のやり方は?建物がある場合は所有権保存登記、ない場合は賃貸借契約のみ

借地権は「土地を借りて使用する権利」ですが、この登記について悩むことも多いでしょう。

  • そもそも登記できるのか
  • 登記しなければいけないのか
  • 費用はいくらかかるのか
  • 必要な書類やものは何か

上記のような疑問が浮かぶことが多いでしょう。結論をいうと「建物の所有権を登記すれば、借地権の登記は不要」となります。費用は主に登録免許税のみで、必要書類はこちらでまとめました。

この記事を読んでいただくことで、借地権の登記の具体的なやり方や、他の権利との違いなどの基礎知識も理解していただけるでしょう。



Contents

借地権の登記とは

家

借地権の登記について最初にポイントをまとめると、以下の通りです。

  1. 借地上の建物の「所有権」を登記すること
  2. 「土地を借りる権利」としての登記は不要
  3. 建物の所有権さえあれば、法的に借地権がある

それぞれのポイントについて解説していきます。

借地上の建物の「所有権」を登記すること

借地権の登記は「借地権という権利を登記する」わけではありません。借地の上に建っている「建物の所有権」を登記します。

売野くん
建物がない場合の登記はどうするんですか?
不動先生
それは「土地賃借権」を登記します。詳しくは下の段落で解説しています。

建物がなければ「借地権法上の借地権」はない

「土地を借りる権利」としての登記は不要

上に書いた通り、借地権の登記は「建物の所有権の登記」だけでOKです。「土地を借りる権利」を登記する必要はありません。

建物の所有権さえあれば、法的に借地権がある

建物の所有権さえ登記していれば、法律的にも「あなた(建物の所有者)に借地権がある」と見なされます。裁判などになっても負けることはありません。

建物の所有権だけで借地権になる理由は以下の通りです。

  • 当然ながら、人の土地に勝手に建物を建てることはできない
  • 自ら建てるだけでなく、人の土地に建っている建物を買うこともできない

まず、この二点はいいでしょう。あなたが地主だったとしたら、どちらのケースも黙っていないはずです。

つまり、地主が「建物の新築」や「土地上の建物の購入」を認めたということは「土地を貸すことも認めた」ということです。そうでなければ建物の新築も購入も認めないでしょう。

このため、法律では「建物の所有権があるなら、その所有者は借地権も持っている」と見なすようになったのです。この法律は「借地借家法」といいます。

「建物の所有権の登記」について

建物

「建物の所有権を登記する」ということについて、ポイントをまとめると下のようになります。

  1. 自分が建てた家でも、中古で買った家でもいい
  2. 建物を入手した時点で、自分が単独でできる

以下、それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。

自分が建てた家でも、中古で買った家でもいい

先にも書いた通り、建物は自分が建てても中古で買ってもかまいません。どちらにしても新築・購入したなら「所有権は自分のもの」になるでしょう。この時点で、借地権も確保したことになります。

建物を入手した時点で、自分が単独でできる

上ように書いたものの、建物を新築したり中古で買ったりしただけでは、まだ所有権はありません。法務局で「所有権登記」をして初めて、所有権が自分のものになります。

この手続きですが、あなた単独でできます。地主の許可や委任状、サインや押印などは要りません。

「所有権が確かにその人にある」ということがわかれば、地主のサインなどがなくても、法務局は登記をしてくれます。これは「建物の所有権に関する手続き」なので、土地の所有権を誰が持っていようと関係ないからです。

もちろん、建物の前の持ち主が地主の可能性もあります。地主が「土地は売らないけど建物だけ売る」というケースです。

その場合は「売買契約書」の時点では、当然地主のサインや印鑑が必要です。しかし、これはあくまで「売買契約」という民間の手続きであって、登記とは違います。

上記のケースでも、登記のときに地主のサインなどを用意する必要はありません。ただ、法務局に売買契約書を見せる必要があります。

売買契約書は「登記原因証明情報」として見せる

すべて登記手続きは「登記原因証明情報」というものが求められます。「こういう出来事があったので、この登記を申請しています」ということが伝わる書類です。

建物を買ったなら売買契約書、遺産相続をしたなら遺産分割協議書などとなります。

建物がない場合も借地権は登記できる?

土地

ここまでは「建物があるケース」について語ってきました。では「建物がない時」でも借地権は登記できるのでしょうか―。この点を説明すると下のようになります。

  1. 建物がなければ借地権(借地借家法上の借地権)はない
  2. 土地賃借権(民法上の借地権)となる

以下、それぞれ詳しく説明していきます。

建物がなければ借地権(借地借家法上の借地権)はない

借地権というのは「敷地上に建物があるとき」の権利です。言葉としてそうなっているというだけでなく、法律的にそうなっています。

借地権は「借地借家法」という法律によって規定される権利です。借地借家法は「借地上の住宅に住んで生活している人」「借地上の店舗で営業している人」の権利を守るための法律となります。

そのため、建物がなければ借地借家法から外れ、借地権も適用されないのです。

土地賃借権(民法上の借地権)となる

では、建物がないときにはどんな権利が発生するのかというと「土地賃借権」(ちんしゃくけん)となります。短縮して賃借権と呼ばれることもあります。

具体的にどのような場面で土地賃借権が適用されるかを見ていきましょう。

建物なしで土地を借りるケース

駐車場

建物がない土地を借りるケースでは、下のような用途で利用する場合が考えられます。

以下、それぞれのケースについて簡単に説明していきます。

駐車場

駐車場は大別して「建物がある駐車場・ない駐車場」があります。建物がある駐車場は、たとえば「立体駐車場」(立駐)などです。

一方、建物がない駐車場は「青空駐車場」と呼ばれるものです。アスファルトで舗装しているものもあれば、砂利を敷いているだけのこともあります。

立体駐車場のような構造物があれば、家屋と同様に借地権を適用できます。逆に構造物がない青空駐車場だったら、土地賃借権となります。

資材置き場

資材置き場も駐車場と同様で、倉庫のような建物を建てる場合は借地権を適用できます。逆に何もなしで「更地の上に木材などを置くだけ」の資材置き場だったら、土地賃借権となります。

建物がプレハブだったらどうなるか

これは専門家の間でも意見が分かれることが多く、裁判でもしばしば争われる部分です。昭和53年5月30日の、大阪高等裁判所の判例では、裁判官が下のような判断をしています。

「建物」とは土地に定着し、周壁、屋蓋を有し、住居、営業、物の貯蔵等の用に供することのできる永続性にある建造物をいうが、その限界は、結局、社会通念、立法の趣旨等に照らして決めるべきであり、(以下略)
借地借家法の適用(NPO法人 日本住宅性能検査協会)

要約すると、まず構造的な定義が「下のものがあること」となります。

  • 土地に定着している(基礎工事をしているなど)
  • 壁・屋根がある

次に用途について下のように定めています。

  • 住居
  • 営業
  • 物の貯蔵

資材置き場の場合、物の貯蔵は確実に該当します。そして、それを事業用に使っていたら「営業」にも該当するでしょう。

つまり、資材置き場用のプレハブの場合「用途」としては完全に借地権が適用されます。そうなると、次の問題は「構造」として建物と認められるかです。

この点は非常に難しく、上の判例でも「その限界は、結局、社会通念、立法の趣旨等に照らして決めるべきであり」と書かれています。つまり「ケースバイケースで判断するしかない」ということです。

借地権は土地賃借権より強いので、強引な方法で借地権を入手しようとする借り手もいるものです。借手にそのような悪意が認められた場合は、同じケースでも借地権が認められないこともあるでしょう。




借地権と土地賃借権の違い

解説する女性

借地権と土地賃借権の違いをまとめると、下のようになります。

  1. 借地権は強く、土地賃借権は弱い
  2. 借地権は建物があり、土地賃借権はない
  3. 借地権は借地借家法、土地賃借権は民法

以下、それぞれの違いについて説明していきます。

借地権は強く、土地賃借権は弱い

借地権は土地賃借権よりも強い権利です。具体的にどのように強いかというと下のようになります。

  • 借地権…地主が変わっても権利が続く
  • 土地賃借権…地主が変わると権利が消滅する

後者は借り主に対して厳しいようですが、本来はこちらの方が法律的に正しいのです。理由は、借地権も土地賃借権はいずれも「債権」だからです。

債権とは

債権とは「誰かに何かをさせる、あるいはさせない権利」です。つまり「人間に対する権利」です。

借地権や土地賃借権の場合は「地主」という個人に対する権利です。地主がAさんからBさんに交代してしまったら、この債権はBさんに対しては適用できないわけです。

売野くん
Aさんに対する債権はまだある、ということですか?
不動先生
はい。Aさんが何か約束を破った場合はAさんを訴えることができます。

たとえば駐車場の土地賃借権で「5年間」という契約だったとしましょう。しかし、5年の期限が来る前にAさんが勝手に土地を売ってしまったとします。

そして、次の所有者のBさんが「私は土地を貸さない。賃料もいらない。だから出ていって欲しい」といったとします。

この場合は、あなたは残念ながら駐車場をやめて出ていかなければいけません。代わりに、Aさんを契約違反で訴えることができます。

どちらにしても「土地に対する権利」はなくしてしまうわけです。

債権の反対は「物権」

一方、債権の反対の権利として「物権」があります。これは文字通り「物に対する権利」です。

  • 債権…人に対する
  • 物権…物に対する

このような違いがあります。そして、土地について物権があれば、地主が変わろうと関係ありません。人に対する権利ではなく、土地という物に対する権利だからです。

借地権は物権ではないが、物権に近い

借地権は債権であり物権ではありません。しかし、物権に近い効力を持っています。

具体的には、地主が変わっても借地権が継続されます。このように借地権が物権に近い状態になることを「賃借権の物権化」といいます。

売野くん
借地権ではなく賃借権の物権化なんですか?
不動先生
ここは言葉の使い方が少々ややこしいのですが、下のようにいえます。
  • もともとは、建物があってもなくても「土地の賃借権」である
  • しかし、建物に住んだり営業したりしている場合は、彼らの権利を守る必要がある
  • そのため「借地借家法」が規定され、借地権という言葉が生まれた
  • しかし、本来は「土地の賃借権」なので、「賃借権の物権化」というべき

このような理由で「賃借権」という言葉が使われていると考えて下さい。

借地権は建物があり、土地賃借権はない

ここまでも書いてきた通り、借地権になるか土地賃借権になるかの判断基準は「建物があるか」です。この建物は戸建て住宅だけでなく、下のようなすべての建物・構造物が含まれます。

  • アパート・マンション
  • ビル・店舗
  • 倉庫・立体駐車場

プレハブがどう判断されるかは、先に「建物がプレハブだったらどうなるか」という段落で説明した通り、判例でもケースバイケースとなっています。

借地権は借地借家法、土地賃借権は民法

借地権と土地賃借権は、それぞれを管理する法律が違います。

  • 借地権…借地借家法
  • 土地賃借権…民法

法律が違ってもそれを扱う専門家は変わりません。両方とも弁護士となります。「借地借家法だから不動産鑑定士」などということはありません。

ただ、「その構造物を建物と見なすか」という判断で、まれに不動産鑑定士の鑑定が必要になることもあります。これはかなり特殊なケースで、裁判まで発展していない限りはありません。

もしそのようなケースになったら、鑑定費用の相場については下の記事を参考にしてみてください。

不動産鑑定の費用の相場は30~50万円!物件の種類・評価額ごとの目安を解説!

2018.09.20

借地権と地上権の違い

弁護士

借地権とよく似た権利で「地上権」があります。2つの権限の違いをまとめると、下のようになります。

  1. 借地権は弱く、地上権は強い
  2. 借地権は債権、地上権は物権
  3. 借地権は無断で転売できず、地上権は無断で転売できる
  4. 一般人の契約はほとんど借地権、地上権は鉄道など特殊なケース

以下、これらの違いについてまとめていきます。

借地権は弱く、地上権は強い

簡単にいうと借地権は地上権より弱くなります。先に書いた通り「土地賃借権」に比べると、借地権は強くなります。したがって、3つの権利を強い順に並べると以下の通りです。

  1. 地上権
  2. 借地権
  3. 土地賃借権

具体的に借地権より地上権がどのように強いのかを見ていきましょう。

借地権は債権、地上権は物権

権利の種類でいうと、両者は下のように異なります。

  • 借地権…債権
  • 地上権…物権

債権は「人に対する権利」なので、物に関する権利としては弱いというのは、先に説明した通りです(土地所有者が変わると権利が消滅してしまうため)。

借地権は借主保護の観点から物権に近い強さ(対抗要件)を持っていますが、それでも完全な物権である地上権に比べたら弱いものです。特に違うのが「売却できるかどうか」です。

借地権は無断で転売できず、地上権は無断で転売できる

借地権は売買や譲渡も可能ですが、地主の承諾を得る必要があります。一方、地上権は地主の合意なしで勝手に売却してしまってかまいません。

これが債権と物権の最大の違いです。物権がある時点で「その物は自分の物」なので、売ろうが貸そうが自由にしていいのです。

売野くん
自分が地上権を持っている土地を、誰かに貸してもいいわけですね?
不動先生
そうです。なお、借地権でも地主の許可があれば転貸しが可能です。

借地権の転貸しは「建物を賃貸に出すだけ」なら、地主の許可は要りません。「土地を借りる権利自体」を転貸する場合は、地主の許可が必要になります。

一般人の契約はほとんど借地権、地上権は鉄道など特殊なケース

基本的に、地上権を一般人が持つことはほとんどありません。一般人が土地を借りる契約をするときは、ほとんど借地権です。

この理由は、地上権は「借り手が極めて強くなる権利」なので、多くの地主は締結したがらないためです。また、一般人は地上権ほど強力な権利を持たなくても、十分生活していけます。

鉄道・地下鉄・空港などで地上権が設定される

地上権が設定されることが多いのは、鉄道や地下鉄、空港などの大規模な設備を建造する場合です。このような施設を建設する場合、建設する鉄道会社などが強い権利を持っていないと、多くの法人が困ることになります。

一方、土地を貸し出す地主の方も、こうした施設だったら安心して貸し出せるわけです。権利の転売が簡単といっても、これらの施設や運営会社が地上権を転売することはまずないでしょう。

(土地の上を自由に使う権利をなくすということは、鉄道なども撤廃しなければいけないということだからです)

このため、地主にしてみれば「地上権を設定しても特にデメリットがない」のです。これが、大規模な取引では地上権が設定される理由といえます。

地上権・地下権・空中権の違い

地上権とよく似たもので、地下権・空中権などの種類もあります。意味はそのままで、地下権は地下を使う権利、空中権は空中を使う権利です。

これらをすべて含めて地上権ということも多くあります。地上権と地下権が分かれる典型的な事例は「地下鉄の路線の上に建物が建っている」というケースです。

多くの民家の下を通って地下鉄は走っているわけですが、この路線の上の民家の土地所有者は、すべて地下鉄に対して地下権を与えています。地下鉄が1駅分走る間の距離でも、かなりの地下権が動いているということです。

借地権の登記でかかる費用・税金

お金

借地権の登記で必要になる税金や費用は以下の通りです。

  1. 登録免許税
  2. 相続税
  3. 司法書士費用(依頼する場合)

それぞれの税金、費用について解説していきます。

登録免許税

登録免許税は「役所に払う手数料」です。不動産に限らず、法人の設立登記などあらゆる登記の手続きで必要になります。

借地権の登記は、建物がある場合「建物の所有権保存登記」です。この場合の登録免許税は下のようになります。

  • 中古建物…1000分の4
  • 新築建物…1000分の1.5

自分で住む場合は「自己居住用の特例」があり、下の2つの条件を満たせば税率が1000分の1になります(新築・中古問わず)。

  • 新築または取得後1年以内に登記する
  • 床面積(登記簿面積)50㎡以上

多くの居住用不動産はこの条件を満たしているので、「自分で住むなら1000分の1になる」と思ってください。



相続税

祖父母や父親・母親などが死亡した場合、彼らが借地権を持っていたらそれも相続人(子供や配偶者など)が相続することになります。借地権も普通の不動産と同様に相続できるのです。

この相続税の金額は「借地権評価額」によって決まります。この評価額の計算は物権によってはかなり難しくなるため、司法書士や税理士、不動産鑑定士などの専門家に相談するのが無難です。

なお、借地権を含めあらゆる財産を相続するとき、故人に負債があればそれも相続することになります。たとえば父親が亡くなった場合は、父名義の借金などがないかよく調べてから相続しましょう。

司法書士費用(依頼する場合)

登記手続きを司法書士に依頼する場合、その報酬が必要になります。この金額相場は大体3万円程度です。

借地権の登記で必要な書類・もの

書類

借地権登記での必要になる書類などは、下の2種類の手続きそれぞれで異なります。

以下、それぞれの手続きについて説明していきます。

「所有権保存登記」の場合

借地権の登記を、「建物の所有権保存登記」として行う場合、必要な書類は以下の通りです。

  1. 住所証明書
  2. 住宅用家屋証明書
  3. 所有権保存登記の申請書
  4. 代理権限証明書(委任状)

最後の委任状については、誰かに代理を依頼したり、司法書士に手続きを依頼する場合などに必要となります。

「土地賃借権」の場合

土地賃借権は登記はできませんが、公証人役場で公正証書を組むことができます。公正証書は組まなくてもいいのですが、組む方が権利がより強固なものになります(貸主・借主のどちらも約束を破りにくくなります)。

その手続きをするときの必要書類・ものは以下の通りです。

  1. 賃貸借契約書
  2. 不動産の登記済証(権利証)または登記識別情報
  3. 固定資産評価証明書
  4. 印鑑証明書
  5. 本人確認書類
  6. 実印

登記済証(登記識別情報)は、土地の借主は持っていません。所有者が持っているものだからです。このため、この書類が必要になるのは「地主側」と理解して下さい。

借地権の登記でよくある質問

賃借権

借地権の登記で多くの人が疑問に思う点として、下のようなものがあります。

  1. 借家でも借地権の登記はできる?しなければいけない?
  2. 建物が災害や火事などで消失した場合はどうすればいい?
  3. 土地を借りるときの敷金とは?返還してもらえる?

ここでは、これらのよくある質問について回答していきます。

借家でも借地権の登記はできる?しなければいけない?

あなたが借家人の場合、借地権の登記をする必要はありません。箇条書きで説明すると下のようになります。

  • 借家ということは、建物に所有者がいる
  • その建物所有者が借地権を持っている
  • その人から家を借りているという時点で、借地権もあるのと同じ
  • 貸主から借主へ建物の引渡しが済んだ時点で、建物に住む権利は問題なく確保される

上記のような理由から、たとえば地主側が「出ていって欲しい」といっても出ていく義務はありません。これは建物の借主(賃借人)だけではありません。貸主である建物の所有者(賃貸人)も同じです。

居住する自宅は誰にとっても生活の基盤となるもので、借地借家法はその安定確保を目指しています。このため、借家人にしても建物所有者にしても、強い対抗力を持つようになっているのです。

(なお、借家人は建物に住む権利を侵害されないだけで、借地権は貸主=建物所有者にあります)

「第三者対抗要件」とは?

上のような権利はよく「第三者への対抗要件」と呼ばれます。誰が第三者かというと、たとえば借家に住んでいる人にとっては地主です。借家人は建物の所有者とは直接契約しますが、地主とのやり取りはないためです。

続いて建物の所有者にとっては「新しい地主」です。こちらも地主が勝手に交代しても(前の地主が土地を売却しても)建物の所有者はそれを知らないケースもあります。

このように「赤の他人」がいきなり権利関係に割り込んできても、それに対抗できるルールが「第三者対抗要件」です。これは不動産以外の世界でも使われる法律用語です。

建物が災害や火事などで消失した場合はどうすればいい?

建物が地震などの災害で倒壊、あるいは火災で焼失などのトラブルが置きてしまうこともあるでしょう。この場合、建物がなくなったわけなので、「建物が必要」という条件である借地権が維持できるのか、という問題が生じます。

結論は「建物を立て直すならOK」です。通常はこのような被害が起きたら「建物を再建築して居住・営業を続けることが多い」ため、法律もそれに合わせています。

一方「これを機に借地権を解除したい」という場合は、建物の滅失登記を行い「建物が消滅した」ことを法務局に知らせます。その上で借地権を解除します。

土地を借りるときの敷金とは?返還してもらえる?

土地を借りる時には地主側に敷金を払います。この敷金は賃貸物件などと同じく、借地人の不払いや物権への造作・汚損などを防ぐものです。これらのトラブルを起こさずに予定の契約期間を満了したら、返還してもらえます。

三井住友トラスト不動産の公式サイトでは下のように書かれています。

敷金は、地代や借地人の債務を担保するために差し入れられる金銭で、地代の不払や原状回復の不履行がなければ、そのまま返還されることになります。
土地を貸す際に借地人に払ってもらう「敷金」とはどのようなものなのですか。(三井住友トラスト不動産)

マンションの部屋などと違い、土地を汚すということはめったにないものです。常識の範囲内で使用していれば、敷金を返してもらえないことはほぼないと考えていいでしょう。

まとめ

手続き
以上、借地権の登記についてまとめてきました。最後に要点を整理すると、下のようになります。

  • 土地の上に建物がある場合、借地権の登記とは「所有権保存登記」のことである
  • 所有権保存登記は、地主との共同申請でなく単独で申立てできる
  • 建物がない場合「土地賃借権」の賃貸借契約を地主と結ぶ
  • これは法務局での登記ができないので、公正証書を組むなどして効力を高める

建物がある場合の借地権は非常に強い権利です。この権利を確実に守るためにも、所有権の保存登記は建物を入手してから早めに行うようにしましょう。