借地権の贈与のメリット・税金の計算方法は?節税手法&特別受益についても解説!

借地権の贈与のメリット・税金の計算方法は?節税手法&特別受益についても解説!

借地権の贈与について、下のような点を知りたい人は多いでしょう。

どんな行動が贈与になるのか
税金はかかるのか、どう計算するのか
税金がかからないようにする方法はあるか

この記事では、こうした疑問についてそれぞれ解説していきます。また、相続前に使われることが多い「生前贈与」という手法について、「借地権の贈与は特別受益になるか」という、比較的高度な内容も解説します。

借地権の贈与についての初歩的な部分から、ある程度ハイレベルな部分まで、この記事によって理解していただけるでしょう。




借地権の贈与とは

家をプレゼントする手

「そもそも、どんな行動が借地権の贈与になるのか」という点から知りたい人もいるでしょう。これについてまとめると、下のようになります。

  1. 生前に借地権を誰かに無償で渡す
  2. 相続・譲渡との違い

それぞれ詳しく説明していきます。

生前に借地権を誰かに無償で渡す

借地権の贈与とは、生きているうちに借地権を誰かに無償で渡すことです。渡す相手は家族や親子に限らず、赤の他人でもかまいません。

また、個人間の贈与だけでなく「個人・法人」「法人・法人」というパターンの贈与もあります。

相続・譲渡との違い

贈与とよく似た言葉に、相続・譲渡があります。それぞれの贈与との違いは以下の通りです。

相続 死後にするのが相続。生前にするのが贈与
譲渡 有償なのが譲渡。無償なのが贈与

譲渡は「譲る」という文字が入っているため、タダであげることと勘違いする人もいるかもしれません。しかし、法律や税制の世界では、譲渡とは「売却」のことです。

たとえば不動産を売ると、その利益に対して「譲渡所得税」がかかります。

借地権を贈与するメリット・デメリット

2つの家の模型

借地権を贈与するメリットとデメリットをまとめると、主に下の2つが挙げられます。

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

メリット…借地権を相続させたい相手だけに譲れる

借地権は一つの資産です。そのため、その権利者が亡くなったら相続人が相続することになります。

相続は、特定の相手だけに財産を継がせることができません。たとえ遺言状で「長男にすべて譲る」と書いていたとしても、他の兄弟は「遺留分」を請求できるためです。

遺留分については後半で解説しますが、これがある以上「特定の相続人だけにすべての財産を譲る」ということができません。

一方、生きているうちに贈与してしまえば、特定の相手だけに継がせることができます。借地権でも現金でも、その他の資産でも同じです。

特定の人物に多くの財産を贈与すると、相続の話し合いの段階で「特別受益」と見なされることがあります。しかし、これも「持戻し免除の意思表示」という内容を、遺言状などに明記していれば問題ありません。100%、希望の相手に財産を譲ることが可能です。

特別受益と「持戻し免除の意思表示」については、それぞれ下の段落で解説しています。

デメリット…贈与税は相続税より高い

借地権を贈与するデメリットは税金が高くなることです。贈与税は相続税より高いのです。

この理由は「計画的に行うものか、そうでないか」にあります。

  • 贈与…生きているうちに計画的に行う
  • 相続…事前の準備はできるが、いつ死ぬかはわからない(計画できない)

また、相続税が発生するケースとして「一家の大黒柱が亡くなる」ということがあります。この場合、残された奥さんや子供は、当面は亡くなった父親が残した財産を使って生活することが必要です(奥さんももちろん働くわけですが)。

このようなケースも考えると、相続税に大きな負担を課すわけにはいかないのです。このため、相続税は最低でも3600万円までは非課税となります。

贈与税にはこのように大きな控除額がないので「いきなり課税対象」です(ただし、最初の110万円のみは非課税です)。

借地権の贈与で税金がかからないようにする方法

節税のイメージ

借地権を贈与するとき、税金がかからないようにするポイントをまとめると、下記の通りです。

  1. 贈与でなく「使用貸借」にする
  2. 使用貸借が課税されない理由
  3. 使用貸借にするための手続き
  4. 使用貸借にするときの注意点

以下、それぞれのポイントについて説明します。

贈与でなく「使用貸借」にする

使用貸借とは「お金が発生しない普通の貸し借り」です。たとえば友達からペンを借りてすぐ返すのは、法律的には「使用貸借」となります。ペン以外でも、ゲームでも漫画でも同じです。

この使用貸借は、借地権という重要な資産に対しても認められています。「何も受け取らずに、ただ借地権を貸しているだけ」という論理が通用するのです。

使用貸借が課税されない理由

使用貸借が非課税になる理由は、通常の使用貸借を考えるとわかりやすいでしょう。たとえば友達から漫画を借りて、それに課税されることがないというのは誰でも理解できるでしょう。

このレベルがさらに上がって「車をしばらく貸す」というのはどうでしょうか。法的には、免許を持っている相手であれば車を貸してもかまいません。

自動車保険の内容によって「他人が運転していた場合は保険が効かない」というルールがある程度です。これも「友達の運転でも保険が効く特約」をつけることはできますし、要は「友達に車を貸す」ことは問題ないのです。

そして、それが何らかの理由で「1年以上」などとなることもあるかもしれません。たとえば友達の生活が苦しい場合などです。

車は新車で数百万円する資産ですが、それでもこのように「無償で貸与」していいのです。そして、課税もされません。

同じことが、借地権の貸与でも成り立つということです。

使用貸借にするための手続き

借地権を使用貸借にする手続きは簡単です。所轄の税務署に「借地権の使用貸借に関する確認書」という書類を提出するだけです。

この書類のひな形は国税庁のホームページからダウンロードできます。

使用貸借にするときの注意点

使用貸借にするときは、下の点に注意が必要です。

  • 権利金をもらわない・払わない
  • 月額賃料をもらわない・払わない

つまり「完全無償」ということです。権利金でも賃料でも、どちらかを払ってしまえばそれは「有償」となります。この時点で使用貸借ではなく「賃貸借」になるのです。

賃貸借とは

賃貸借は「普通の賃貸・レンタル」のことです。一見、この方が贈与税がかからなくなるように見えますが、そうではありません。

賃貸借にして贈与税が発生するケース

下のケースは、賃貸借で贈与税が発生するものです。

  • 権利金…もらわない(払わない)
  • 賃料…もらう(払う)

理由は、普通の賃貸借なら「賃料だけ払って権利金を払わないことはありえない」ためです。このため「権利金の分は贈与された」と見なされます。つまり、権利金の分に贈与税がかかるのです。

これに対して、両方もらっていないなら、ここまで書いた通りの使用貸借になります。逆に「両方もらう・払う」のであれば、それは完全にビジネスライクな賃貸借です。

この場合は、借り手が得している部分は何もないので「何も贈与されていない」と見なされます。こちらも贈与税はかかりません。

(代わりに、賃料・権利金で収入を得た側に対して所得税がかかります)

このような理由から、借地権を使用貸借にするときは「権利金・賃料ともになしにする」のがいいわけです。




借地権の贈与税の計算方法

税理士の女性のイメージ

借地権にかかる贈与税の計算方法は、ポイントをまとめると下のようになります。

  1. まずは、土地の「更地価格」を調べる
  2. その更地価格に「借地権割合」を掛ける
  3. それで出た評価額から「110万円」を引く
  4. それで出た「課税価格に税率を掛ける」
  5. その金額から「その税率での控除額」を引く

以下、これらのポイントについて解説していきます。

まずは、土地の「更地価格」を調べる

まずは、借地権で使っている土地の「更地価格」を調べます。更地は国税庁の表現では「自用地」といいますが、意味は同じです。

国税庁の「No.4611 借地権の評価」という公式ページでも、自用地について「いわゆる更地をいいます」と明言しています。

更地価格の調べ方

路線価画像引用元:路線価図・評価倍率表(国税庁)

更地価格の計算式は「路線価×面積」です。路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」というサイトでわかります。上の画像のようなサイトです。

その更地価格に「借地権割合」を掛ける

更地価格がわかったら、次はそこに「借地権割合」を掛けます。借地権割合も、先ほどと同じサイトでわかります。借地権割合は地域ごとに決まっているものなので、自分の物件のエリアを探せば、割合がわかります。

そもそも借地権割合とは

これは「更地価格の価値のうち、何割を借地権が占めているか」というものです。更地価格とは「借地権価格・底地権価格」の合計です。

  • 借地権価格…借り主の権利分
  • 底地権価格…貸し主(地主)の権利分

大抵は借地権の方が比率が高く、60~70%、物件によっては80~90%ということもあります。

上の方法で借地権割合を調べ、例えば70%だったら「更地価格×70%」で、借地権の評価額が出るということです。

それで出た評価額から「110万円」を引く

こうして借地権の評価額を出したら、そこから110万円を引きます。これは借地権や不動産だけでなく、すべての贈与の計算で差し引かれるものです(基礎控除といいます)。

差し引かれた方が課税価格が小さくなり、税金が安くなるので「いいこと」です。たとえば借地権の評価額が500万円だったら、課税価格は390万円になります。

それで出た「課税価格に税率を掛ける」

課税価格が出たら、そこに税率を掛けます。税率は課税価格の金額ごとに決まっています。所得税と同じで「累進課税」のシステムになっているわけです。

贈与税の税率一覧

課税価格ごとの贈与税率を一覧にすると、以下の通りです。

200万円以下 10%
300万円以下 15%
400万円以下 20%
600万円以下 30%
1000万円以下 40%
1500万円以下 45%
3000万円以下 50%
3000万円超 55%

全体でまとめると「10%~55%」となります。たとえば課税価格が3000万円だったら、50%の税率が適用されるため、贈与税は1500万円となります(ここから最後の控除がありますが)。

その金額から「その税率での控除額」を引く

上記の計算で出た金額から、最後に控除額をマイナスします。この控除額も、課税価格ごとに決まっています。

金額が大きいほど控除も大きくなるわけです。これは、税率が高くなる金額をギリギリで超えてしまった人の負担を小さくするためにあります。

贈与税の控除額一覧

課税価格ごとの贈与税控除額を一覧にすると、以下の通りです。

200万円以下 なし
300万円以下 10万円
400万円以下 25万円
600万円以下 65万円
1000万円以下 125万円
1500万円以下 175万円
3000万円以下 250万円
3000万円超 400万円

たとえば先ほどの「課税価格3000万円」の例だと、250万円が控除となります。控除なしだと「1500万円」でしたが、控除されることで「1250万円」となります。

これらの税率・控除額については、国税庁の「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」という公式ページで確認できます。



借地権の贈与は特別受益になるか

弁護士の女性のイメージ

借地権を生きているうちに贈与すると「特別受益」に見なされることがあります。この点について「特別受益とは何か」という点から疑問に思う人も多いでしょう。

ここでは下のようなポイントに分けて、借地権の贈与と特別受益の関係を解説していきます。

  1. 特別受益とは
  2. 特別受益とみなされるとどうなるか
  3. 特別受益の「持戻し」とは?
  4. 「持戻し免除の意思表示」とは?
  5. 「黙示の意思表示」は無効になることも
  6. 「明示」の意思表示は無効にならない

特別受益は借地権や不動産だけでなく、現金などの遺産でも同じように適用される考えです。そして、現金でたとえて説明する方がわかりやすいため、ここからは現金の遺産分割の例で説明していきます。

特別受益とは

借地権の贈与は、基本的に特別受益になります。専門家の言葉を引用すると以下の通りです。

被相続人が有する借地権を、生前に相続人の一人に無償で譲渡した場合、借地権相当額が特別受益になると考えられます。
借地権の贈与は特別受益になりますか(本橋総合法律事務所)

「相続人の一人に」という条件が入っています。このため、もし相続人全員に平等に贈与していたら、それは特別受益にはならないといえます。

なお、上の説明で専門家も「考えられます」と書いている通り「一人に譲渡したら絶対に特別受益になる」と決まっているわけではありません。

相続人の定義

これは主に「法定相続人」のことです。法定相続人は「亡くなった人の遺言などがなかった場合に、自動的に相続権を持つ人」のことです。

一般的には「配偶者・子供」というパターンが多くなります。旦那さんが亡くなった場合、奥さんと子供です。

子供がいなければ全額が奥さん、奥さんがいなければ全額が子供の取り分になります。このように法定相続人が自動的にもらえる遺産配分のルールは決まっているのですが、その中の一人だけに生前に財産を譲ったら「特別受益」と見なされるわけです。

特別受益とみなされるとどうなるか

特別受益とみなされた場合、その金額については「すでに相続したもの」とされます。たとえば、下のような家族構成だったとしましょう。
特別受益家族構成
 父親―長男
   └二男
   └三男

この場合、父親の遺産は「兄弟で3分割」するのが基本です。たとえば6000万円の遺産があったら、下のように配分されます。
一般的な遺産配分

  • 長男…2000万円
  • 二男…2000万円
  • 三男…2000万円

しかし、父親が生前に「長男だけ」に3000万円の不動産を贈与したとします。すると、父親が亡くなる時点での遺産は「3000万円」です。

この3000万円を3人で割ると、それぞれ1000万円ずつです。長男は生前贈与の3000万円もプラスされるので、トータルの配分は下のようになります。
長男に生前贈与があった場合

  • 長男…4000万円
  • 二男…1000万円
  • 三男…1000万円

これでは当然、二男・三男は不公平と感じるでしょう。ここで「特別受益」の考え方が登場します。

特別受益を考慮すると…

特別受益の考えでは、上のケースは下のようになります。

  • 男が生前に贈与された3000万円は、実質的に相続と同じである
  • よって、長男は死亡時の遺産3000万円について、分割する権利を持たない
  • 死亡時の遺産3000万円は、二男と三男だけで分ける

よって、3人の取り分は下のようになります。
特別受益を考慮した場合

  • 長男…3000万円
  • 二男…1500万円
  • 三男…1500万円

まだ不公平ではありますが、これは故人(父親)の意思によるものなので、法的には問題ありません。

(ただし、長男が認知症の父親を騙していたなど、何らかの問題があるときには当然くつがえります)

特別受益の「持戻し」とは?

特別受益の持戻しは「特別受益に当たる金額を一度戻して、全員の取り分を計算する」というものです。実際に預金通帳などに戻すわけではなく、あくまで「計算上」で戻します。

たとえば、下のような家族構成だったとします。
特別受益の持ち戻し家族構成
 父親―長女
   └二女
   └三女
   └四女

この4姉妹は、それぞれ遺産を4分の1ずつもらう権利があります。たとえば父親の遺産が4000万円だったら、それぞれ1000万円ずつもらえるわけです。

しかし、生前に父親が「長女にだけ3000万円」贈与したとしましょう。すると、死亡時には1000万円を4人で分けることになります。長女への生前贈与の3000万円も含めると、それぞれの取り分は以下の通りです。
長女に生前贈与があった場合

  • 長女…3250万円
  • 二女…250万円
  • 三女…250万円
  • 四女…250万円

ここで先ほどの「長男~三男」の3兄弟のように「特別受益」の考え方を持ち出します。長女は「死亡時の分割」から排除されるので、死亡時の1000万円は二女・三女・四女の3人で分けます。

それぞれの取り分は333万円です。これで取り分を一覧にすると下のようになります。
特別受益を考慮

  • 長女…3000万円
  • 二女…333万円
  • 三女…333万円
  • 四女…333万円

これでもまだ不公平なのはわかるでしょう。ここで「特別受益の持戻し」が実行されます。

持戻しをするとどうなるか

持戻しでは、まず生前贈与の3000万円を「なかったもの」と見なします。これで、死亡時の遺産は「4000万円」となります。

この4000万円からいくらもらえるかですが「絶対にもらえる金額」は、4姉妹それぞれ「500万円ずつ」です。

絶対にもらえる金額は「遺留分」という

相続で絶対にもらえる金額分のことを「遺留分」といいます。これは下の手順で計算できます。
遺留分とは

  • まず、遺産を半分にする
  • 半分になった遺産を、法定相続割合で分割する

この手順で計算すると、4姉妹のケースでは下のようになります。

  1. 4000万円を半分に分けて、2000万円
  2. 2000万円を4人で分けるので、500万円

つまり、二女・三女・四女は「500万円ずつは必ずもらえる」のです。しかし、もう一度先ほどの配分結果を見てください。

  • 長女…3000万円
  • 二女…333万円
  • 三女…333万円
  • 四女…333万円

二女・三女・四女は「333万円」なので、500万円に足りていません。167万円不足しています。

つまり、長女の3000万円という金額は、他の3人から「167万円を奪っている」といえます。これは「遺留分の侵害」というものです。

長女は3人に167万円ずつ払う

このため、長女は3人に167万円ずつ払う必要があります。これが「持ち戻し」ですが、最終的な配分は以下の通りです。
遺留分を含めた相続結果

  • 長女…2500万円
  • 二女…500万円
  • 三女…500万円
  • 四女…500万円

「167万円」という数字が入ると、実際には「2499万円」と、少々半端な数字になります。そのため、下のように考えるとわかりやすいでしょう。

  1. まず、二女・三女・四女に500万円ずつ渡す(合計1500万円)
  2. これで父親の財産は残り2500万円(4000万円-1500万円)
  3. この2500万円を、そのまま長女がもらう

このような計算をするのが「生前贈与の持ち戻し」と理解して下さい。

補足
ここではわかりやすく「○○万円」と現金での計算例を示しています。しかし、不動産でも要領はまったく同じで「○○万円分」という価値で計算します。

「持戻し免除の意思表示」とは?

上記の持戻しですが「免除の意思表示」というものがあります。これにより、上のような「公平な分割」がなくなります。上の例だと、一番最初の不公平な分配である、下のパターンが成立するのです。

  • 長女…3250万円
  • 二女…250万円
  • 三女…250万円
  • 四女…250万円

(長女が生前に3000万円をもらったと、残りの1000万円を死亡時に4人で分割するパターンです)

「持戻し免除の意思表示」は、誰がするのか

これは「亡くなる人」です。上のケースでは父親で、専門用語でいうと「被相続人」となります。

父親がなぜこの意思表示をするのかというと「長女にできるだけ多くの遺産を残したい」ためです。「俺の死後に持ち戻しのルールなんかを使って、長女の取り分を減らすな。二女・三女・四女は250万円ずつで十分だ」ということです。

売野くん
これって、二女・三女・四女が何も悪いことをしてなくても、認められるんですかね?
不動先生
そこが重要なポイントです。明らかに不公平なケースでは、持戻し免除が否定されることもあります。

「黙示の意思表示」は無効になることも

「持戻し免除の意思表示」には、下の2種類があります。

  • 明示…故人の遺言状などで、意思が明確に示されている
  • 黙示…遺言状などがない

明示は「ただ遺言状がある」ということではなく、遺言状の中に「持ち戻しをしないでほしい」という内容が明確に書かれている、というものです。遺言状以外の形式でもかまいませんが、はっきりと故人の意思がわかる方法で「持ち戻しについて言及されている」ことが重要です。

そのような言及がない意思表示は「黙示の意思表示」となります。そして、これが不公平な内容だった場合は、無効になることもあるのです。専門家は下のように説明しています。

明示であれば、はっきりしているのですが、問題は、黙示の意思表示がどのような場合に認められるかです。
(3)黙示の意思表示の限界
(中略)
あくまで特別受益の持ち戻し免除は例外であること、また、免除を認めるためには、それなりの積極的事情が必要であるということです。
特別受益の持ち戻しに関して(弁護士ドットコム)

上記の説明では、「東京家裁平成12年4月8日審判」の判決を引用されています。この審判では、黙示の持戻し免除の意思表示が否定されました。

つまり、たくさん財産をもらっていた一人の取り分が否定され、(当初よりは)平等な分配になったということです。このように黙示の意思表示が否定されるかどうかは完全に個々の事情によるので、一定のパターンやルールはありません。

「明示」の意思表示は無効にならない

上で専門家が「明示であればはっきりしている」と書いている通り、明示された「持戻し免除の意思表示」は、無効とされることがありません。このため、あなたが財産を継がせる側だったら、他の相続人が持ち戻しを主張することも考えて、持戻し免除の意思表示を遺言状などで明示しておく必要があります。

もちろん、これは「自分の死後に相続人たちが争う可能性が高い」と感じる場合です。「争うことはない」と確信できる場合は、明示しなくてもいいともいえます。

ただ、特に遺産が大きい場合は故人の想定以上に遺族が争うことが多いものです。このため、確実に財産を継がせたい人がいるのであれば、やはり持戻し免除の意思表示は遺言状などに明記しておきましょう。

まとめ

家を持つ男性の手

以上、借地権の贈与についてまとめてきました。最後に要点を整理すると下記の通りです。

  • メリット…特定の相手だけに財産を譲れる
  • デメリット…相続税よりも贈与税の方が高い
  • 節税…贈与でなく「使用貸借」にすればいい
  • 注意点…使用貸借は「権利金・賃料とも無し」にする

自宅の敷地の借地権の場合、数百万円~数千万円することが多くあります。それにかかる贈与税も当然高くなるものです。そのため、上記の使用貸借などの節税手法を知っているかどうかで、家計にかかる負担が大きく変わります。

他の不動産の種類や税制についてもいえることですが、借地権の贈与についても上記のようなポイントをよく抑え、家計の負担が少しでも小さくなるようにするといいでしょう。