不動産売却では司法書士が必要?~費用の相場や登記の必要書類を解説~

不動産を売却するときは、登記や書類作成を司法書士に依頼することが多くあります。この点について、下のような疑問を持つこともあるでしょう。

  1. なぜ司法書士に依頼しなければいけないのか?
  2. 自分でやってはダメなのか?
  3. 提示された報酬は妥当なのか?

それぞれ結論をまとめると、下のようになります。

  1. 依頼する方が安全で効率的
  2. 自分でやってもいい
  3. 報酬は、不動産売却なら3~4万円が目安

この記事では、この3点を含めて「不動産売却での司法書士の役割」や「業務を依頼するべきかどうか」などの内容を説明していきます。不動産の売却で司法書士を立てるかどうか迷っている方には、きっと参考にしていただけるでしょう。

不動産の名義変更での司法書士相場(費用)はいくら?書類の発行手数料・登録免許税も解説

2019.02.08

不動産売却での司法書士の役割

若い司法書士のイメージ

まず、不動産売却での司法書士の役割をまとめると、下のようになります。

それぞれ簡単に説明していきます。

「登記の代行」が役割

不動産の売却では「登記が完了してはじめて売却が完了」します。この登記を代行するのが司法書士の仕事です。

登記とは「権利の登録」のこと

登記とは「権利の登録」のことです。不動産の権利は「不動産登記簿」に書かれています。

不動産を売る場合、この登記簿に書かれている「所有者」の名義が変わるわけです。この書き換え作業が登記で、司法書士はそれを代行します。

不動産売却で司法書士に払う費用の相場

家の模型と1万円札とグリーン

不動産を売るとき、司法書士に払う費用の相場についてまとめると、下のようになります。

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

3万円~4万円が相場

不動産売却では、3~4万円が相場です。これは、実際の司法書士事務所が掲げている報酬体系を見るとわかります。3カ所の司法書士事務所の料金を一覧にすると、下記の通りです。

グリーン司法書士事務所・行政書士事務所 2万円(※1)
司法書士正村事務所 2万4800円(※2)
岩城真之司法書士事務所 3万5000円(※3)

(それぞれの費用がわかるURLは記事の最後でまとめています)

上の金額を見ると「2万円~3万5000円」となります。ただ、グリーン司法書士事務所は「立会いが必要ならプラス10,000円前後」となっています。

売買の場には司法書士が立ち会った方が安心なので、多くの人は依頼することになるでしょう。そう考えると、大体3万円といえます。

司法書士正村事務所は約2万5000円ですが、これは破格の値段です。ほとんどの司法書士事務所は他の2カ所のように「3万円~4万円」程度の報酬となっています。

売却金額によって費用が変わることも

不動産の売却金額によって、司法書士の費用が変わるパターンも多くあります。上で紹介した「岩城真之司法書士事務所」は3万5000円ですが、これは「課税標準額が1000万円まで」の場合です。

1000万円を超えると「以後、1000万円ごとに5000円加算」となります。早見表を作ると下記の通りです。

課税標準額 司法書士報酬
1000万円まで 3万5000円
2000万円まで 4万円
3000万円まで 4万5000円
4000万円まで 5万円
5000万円まで 5万5000円

5000万円を超える不動産を売ることは、一般の方ではめったにないでしょう。このため、値段が上がっていくスタイルの司法書士事務所でも「大体5万円~6万円あれば足りる」といえます。

払う費用は「所有権移転登記」のもの

ここまでは「売買」や「売却」と書いてきましたが、司法書士のメニューの名前では「所有権移転登記(売買)」と書かれていることが多いものです。

これは「司法書士は売るわけではない」からです。あくまで「持ち主が変わりましたよ」という登記を法務局に対してする形になります。

このため「所有権移転登記(売買)」という費用項目になっていますが、特に難しく考える必要はありません。

所有権移転登記にもいろいろある

所有権の移転登記は、売買以外では相続・贈与で必要になります。違いを簡単に書くと下の通りです。

売買 「有償で」渡す(売る)
贈与 「無償で」渡す(あげる)
相続 「亡くなって」渡す(遺産)

不動産という資産を移動させるパターンは、上の3つしかないのです。そして、それぞれに対して司法書士の費用が設定されています。

売主と買主で費用が違うこともある

司法書士事務所のルールにもよりますが、売主と買主で費用が違うこともあります。たとえば、上で紹介した「グリーン司法書士事務所・行政書士事務所」では、それぞれ下のような金額になっています。

売主 2万円(立会いが必要なら+1万円程度)
買主 約5~8万円

この記事は「売りたい人」に向けて書いているので、先の一覧表では「2万円」の方を紹介しました。しかし、司法書士事務所によってはこのように「値段が変わる可能性もある」と考えて下さい。

(売主・買主の両方が費用を払う、という可能性もあります)

登記に必要な書類

家の模型と書類

不動産を売却するとき、登記で必要になる書類は下の通りです。

以下、それぞれの書類の内容や、取得方法などを説明していきます。

権利証(登記識別情報)

権利証(登記識別情報・登記済証)とは「不動産の所有者だけに発行されるパスワード」です。12桁の数字と記号を組み合わせたパスワードが、この書類に書かれています。

茨城司法書士会は下のように説明しています。

12桁の数字と記号の組み合わせで、登記済証に代わる新しいものです。銀行のキャッシュカードの暗証番号を長くしたようなものと考えて下さい。
登記識別情報とは何ですか?(茨城司法書士会)

銀行口座と同じく、このパスワードを知っていることが「不動産の所有者である証明」となるので、紙を取られないのはもちろんのこと、番号も知られないようにする必要があります。

権利証では、番号を他人に見られないようにシールで保護されています。このシールは剥がさずに保管することを推奨されています。剥がさなければ、盗まない限りは番号がわからないためです。

固定資産税評価証明書

固定資産税評価証明書とは「固定資産税評価額が書かれた書類」です。固定資産税評価額とは「この不動産にはこれくらいの価値がある、と国が決めた金額」です。この金額をもとに、毎年の固定資産税が課されます。

不動産を売るときには「私の物件は、役所からこのような価値だと認められています」ということを買主に伝えるために、この書類を提出します。

また、買主が物件を買ったあとで「固定資産税が毎年いくらかかるか」を知るためにも重要な書類です。

印鑑証明書

これは「この印鑑は間違いなく○○さんのものである」と役所が証明してくれるものです。不動産売却の場合、有効期限は一般的に3カ月とされています。

印鑑証明書の取得は「印鑑カード」が発行されている自治体なら、コンビニで可能です。コンビニのプリンタに印鑑カードを読み込ませれば、それで印刷できます。

自治体によっては印鑑カードがないので、役場の窓口に行くか、郵送で申請することになります。

住民票

これは「この人はこの住所に住んでいる」と「その住所の役所が証明するもの」です。運転免許証やパスポートにも住所は書かれていますが、これは「その地域の役所が証明したもの」ではありません。

そのため「本物の住所である」ことの証明としては、住民票の方が効力が強く、不動産売却ではこれが必要になるのです。

(住所の証明が必要なのは、契約において住所は「氏名と並べて常に書くもの」だからです)

身分証明書

これは運転免許証・パスポート・各種健康保険証・マイナンバーなどです。基本的に顔写真が付いていて本人確認をできるものが要求されます。

(住所・氏名だけがわかればいいなら、印鑑証明書や住民票でも十分な本人確認資料になるためです)

顔写真つきの身分証がない場合は、いくつかの書類を提出するなど、司法書士が求める方法で本人確認をすることになります。

委任状

これは、司法書士に手続きを任せるときに必要になります。また、司法書士でない第三者(プロ・素人問わず)に任せるときも、やはり委任状が必要です。

委任状には「この作業を任せる」という内容も書きますが、上に書いた書類一式の取得も司法書士に任せれば、「丸投げ」で手続きが進んでいきます。

(もちろん、身分証明書を司法書士に提出するなど、最低限の仕事は自分でやらなければいけません)

抵当権抹消書類

抵当権抹消書類とは「住宅ローンを完済した証明となる書類」です。抵当権は住宅だけでなく車など何にでもつけられますが、不動産の場合は建物か土地に付けられるものです。

抵当権は、住宅ローンなどの融資をした金融機関が設定します。そのローンが完済されたら抵当権が抹消されます。抹消書類は、それを証明する書類です。

これは完済した時点で銀行・信用金庫などから発行されています。紛失した場合、再発行ができるかどうか、費用がいくらかかるかは金融機関によるので問い合わせましょう。

(一応、登記簿にも抵当権が解除されたことは書かれているので、最悪なくても契約はできます)

不動産売却で司法書士の立会いは必要?何をやる?

契約の場に立ち会う司法書士

不動産を売却する契約の現場で、司法書士の立会いは必ずしも必要ではありません。しかし、多くの契約では司法書士が立ち会うか、最低でも書類の作成などを代行します。

この理由や「司法書士は立ち会って何をするのか」などを以下のように解説していきます。

以下、それぞれ解説していきます。

なぜ司法書士が立ち会うといいのか?

これは「片方が詐欺を働くことができなくなる」ためです。司法書士が立ち会っても完全ではありませんが、限りなく完全に近づきます。

「完全でない」というのは、たとえば「積水ハウスが63億円を騙し取られた事件」などがあるためです。この事件では当然、レベルの高い弁護士・司法書士が関わっていたはずですが、それでもこのような事件が起きました。(※4)

そのため、司法書士を含めた専門家が関わっても「絶対に詐欺が起きない」というわけではありません。しかし、素人だけで契約に臨むよりは、圧倒的に安全といえます。

(不動産の詐欺については下の記事で詳しく解説しています)

不動産売却&購入時の詐欺・5つの手口~地面師・両手取引など~

2018.11.27

立ち会って何をするのか?

これは主に下の2点です。

  • 「書類や印鑑が偽物でないか」の確認
  • 「売主・買主それぞれのリスク」の緩和

1つ目の「偽物でないかの確認」は大体イメージが湧くでしょう。2つ目の「リスクの緩和」はイメージしにくいかと思われるので、こちらを先に説明します。

リスクの緩和とは?

これは「オークション」を想像するとわかりやすいでしょう。売り手と買い手は、それぞれ下のようなリスクを抱えています。

  • 売り手…先に商品を送ると、お金を払ってくれないかもしれない
  • 買い手…先にお金を払うと、商品を送ってくれないかもしれない

つまり「どっちが先にリスクを冒すか」という駆け引きがあるわけです。ヤフオクなどは「買い手が先にお金を払う」というルールで統一されています。これは「間にヤフーが入っているので、売り手が詐欺を働いたら訴える」ことができるためです。

不動産の契約の立会いでの司法書士は、このヤフーに近い役目だと思ってください。

不動産の契約で、売主・買主がそれぞれ考えること

不動産の契約では、売主・買主はそれぞれ下のようなことを考えています。

  • 売主…代金が支払われるまで、所有権の移転登記をしたくない
  • 買主…所有権が移転されるまで、代金を支払いたくない

どちらも「自分が先にやると、騙されるリスクがある」ためです。

売野くん
気持ちはわかるけど、これじゃいつまでも始まらないですよね。
不動先生
その通りです。このため「信頼できる人間が間に入る」必要があり、それが司法書士なのです。

書類・印鑑などの確認

さらに具体的な業務として、立ち会った司法書士は「書類や印鑑が本物かどうか」を確認します。

  • 権利証(登記識別情報)は偽造されたものではないか?
  • 印鑑は印鑑証明書に登録された実印か?
  • 印鑑証明書は偽造ではないか?

これらは、精巧なレベルの偽造だと一般人では見抜けないことが多くあります。司法書士なら偽造かどうかを見破るポイントを理解しているので、偽造による詐欺を防ぎやすいのです。(※5)

不動産の個人売買で司法書士は必要?

土地と住宅

親しい間柄なら、土地や建物を個人売買することもあるでしょう。このとき司法書士を立てるべきか、立てるとどうなるかについて、下の点を説明していきます。

以下、それぞれ解説していきます。

法律的には司法書士なしでも問題ない

不動産の登記は個人でもできます。「司法書士に依頼しなければいけない」という法律はありません。(※6)

知識や経験があって自力でも登記ができる人なら、自力で行ってもいいでしょう。

司法書士を立てる方が安心かつ効率的

上のように書いたものの、多くの個人売買では司法書士が間に入ります。その方が安全に取引でき、手間もかからず効率的なためです。

家族間や親族間の売買など「相手が詐欺をはたらくことなど絶対にない」といえる場面でなければ、できるだけ司法書士を立てる方がいいでしょう。

参考サイト・一覧

パソコンと水晶玉と家の模型

まとめ

司法書士の女性のイメージ

以上、不動産売却で司法書士を立てるメリットや、こなしてくれる役割などについて解説してきました。最後にポイントをまとめると、下の通りです。

  • 司法書士は立てても立てなくてもいい
  • しかし、立てた方が安心かつ効率的
  • 司法書士でないと、書類の偽造を見抜けないことがある
  • また、司法書士が間に入れば、売主・買主それぞれのリスクが緩和される
  • 不動産売却では、報酬相場は3~4万円

特に重要なポイントは、報酬が大体3~4万円程度ということです。不動産の売却という人生の一大イベントで、数千万円などの巨額が動くことを考えたら、このくらいの報酬は安いと考えていいでしょう。

自分で動けばそれだけ労力も時間もかかり、さらに「手違いが起きる」という可能性もあります。こうしたリスクやデメリットも考えたら、やはり不動産売却では司法書士を立てるべきといえるでしょう。