田んぼを売る時は宅地に転用するのがベスト!工事費用の相場は東京で約740万円

田んぼを売ることは、あらゆる種類の不動産の売却の中でも特に難しいものです。

  • 「農業をやっているが、後継者がいないので死ぬ前に田んぼを処分したい」
  • 「親から相続した田んぼがあるが、使い道がないので売りたい」

上記のように考えている人も多いでしょう。どのような状況にしても、田んぼを売る時に意識するべきポイントは下のような点です。

以下、これらのポイントを中心に田んぼの売却について解説していきます。特に工事費用の相場など、田んぼを売りたい・処分したいと考えている方には参考にしていただけるかと思います。

田んぼを売る方法は2通り

田んぼに立つ農家の人々

田んぼを売る方法は、大別すると下の2通りに分かれます。

  1. 「田んぼのまま」売る
  2. 「田んぼ以外の土地にして」売る

以下、それぞれの方法について説明していきます。

「田んぼのまま」売る方法

田んぼ

田んぼのまま売る方法のポイントをまとめると、以下の通りです。

  1. 農家・農業生産法人に売る
  2. 手続きは一番簡単だが、買い手は少ない
  3. 宅地と比較して売り値も安くなる

以下、それぞれのポイントについて説明します。

農家・農業生産法人に売る

田んぼのまま売る場合、売れる相手は下の二者に限られます。

  • 農家
  • 農業生産法人

要は「個人・会社」のどちらかですが、どちらにしても「農業をしている人」に売る必要があります。このルールは、農地法第3条2号・4号に書かれているものです。詳しくは下の段落で解説します。↓

「農家・農業法人しか買えない」という条文(3条2項2号・4号)

手続きは一番簡単だが、買い手は少ない

田んぼを売るとき手続きが一番簡単なのは、やはり「田んぼのまま売る」ことです。土地の造成工事などをしないため周囲への影響もほとんどなく、必要な許可が最小限になるのが理由といえます。

ただ、手続きが簡単でも「売るのが簡単」とは限りません。売るには買い手が必要ですが、田んぼの買い手は少ないのです。

その理由は上に書いた通り「農家・農業生産法人しか買えない」点にあります。最近は農地法のルールも緩和されているのですが、それでも「所有権」に関してはほとんど緩和されていません。

借地権や使用権については緩和されています。

売野くん
ということは、借地権とか使用権で買い手を探せば、見つかるかもしれませんね。
不動先生
はい。売却にこだわらなければ、田んぼを使ってくれる人を探すことは多少やりやすくなります。それでもまだ難しいですが。

賃借権の緩和についてはこちらで解説しています)

宅地と比較して売り値も安くなる

田んぼの売り値は、宅地と比較してどうしても安くなります。この理由は下の通りです。

  • 買い手の人数が少ない以上、数学的に需要も少なくなる
  • そもそも、農業自体が利益を出しづらい職業である
  • また、多くの農家が後継者不足で悩んでいる
  • これらの理由から、事業拡大をもくろむ農家は限られている
  • もともとの買い手が少なく、さらにその買い手が消極的ということ

こう考えると「安くなるのは当たり前」と言えるでしょう。田んぼを高く売りたいなら「宅地や事業用地として使えるよう、農地転用をして売り出す」のが基本とされます。

(農地転用については下の記事をご覧ください)

農地転用にかかる費用の一覧と相場のまとめ ~行政書士報酬や必要書類の発行手数料など~

2018.09.20

「田んぼ以外の土地」として売る方法

宅地に転用したイメージ
宅地など田んぼ以外の土地にして売る方法もあります。この場合のポイントをまとめると、以下の通りです。

  1. 転用できる土地なら、大分売りやすくなる
  2. 土地改良など初期費用がかかるが、売り値も上がる

以下、それぞれのポイントについて説明します。

転用できる土地なら、大分売りやすくなる

農地は、宅地などに転用することで大幅に売りやすくなります。この理由は下の通りです。

  • 日本人のうち、農家の割合は1.6%程度である
  • 宅地などにすれば、農家も含めて100%の日本人に売れる(農家も宅地などを買うので)
  • つまり、単純計算で60倍売りやすくなる

まず、1つ目の「1.6%」という数字ですが、これは日経の下のデータ(グラフ)から出しています。

日本経済新聞のグラフ画像引用元:農業人口5年で2割減 15年調査、高齢化で離農進む (日本経済新聞)

グラフに「200万人」と書かれています。200万人は、日本の人口・1億2000万人の60分の1です。60分の1はパーセンテージでいうと約1.6%となります。

1.6人に売るのと100.0人に売ることを考えたら、どちらが売りやすいかはいうまでもないでしょう。このため、田んぼを売るときは宅地などに転用して売る人が多いのです。

土地改良など工事費用がかかるが、売り値も上がる

田んぼを宅地などにするには、土地改良などの工事費用がかかります。しかし、代わりに売り値も上がります。

最もニーズが多い宅地にする時の工事費用については、次の段落で解説します。

宅地にする時の工事費用の目安

工事費用のイメージ

かかる費目・金額の一覧

かかる費目と金額について、東京都は下のような目安を掲げています。
東京都の表画像引用元:宅地造成費の金額表(平成29年分・東京都)※PDF

「市街地農地」の場合であり、市街地以外の農地だったら金額は変わります。また、あくまで目安なので必ずしも上記の通りになるわけではありません。

その前提で画像の表を書き起こすと下のようになります。

工事費目 造成区分 金額
整地費 整地費 整地を必要とする面積1平方メートル当たり 700円
伐採・抜根費 伐採・抜根を必要とする面積1平方メートル当たり 600円
地盤改良費 地盤改良を必要とする面積1平方メートル当たり 1500円
土盛費 他から土砂を搬入して土盛りを必要とする場合の土盛り体積1立方メートル当たり 4800円
土止費 土留めを必要とする場合の擁壁の面積1平方メートル当たり 56700円

上記はあくまで1平方(立方)メートル当たりの金額です。これを「一般的な宅地の面積」に当てはめてみましょう。

東京で一般的な宅地面積なら、約740万円かかる

宅地の平均的な面積は30~40坪とされます。大体35坪とすると、平方メートルに換算して115㎡です。

つまり、上の表の金額を115倍します。その金額をまとめると下の通りです。

(先ほどの表と違い、造成区分などの詳細は省略しています)

工事費目 金額
整地費 8万0500円
伐採・抜根費 6万9000円
地盤改良費 17万2500円
土盛費 55万2000円
土止費 652万0500円
合計 739万4500円

あくまで目安ですが「東京・市街地農地・35坪」という条件だと、工事費で約740万円がかかるということです。

農地法の解説

農業をする男性たち

ここまで書いた内容について「実際に農地法ではどう書かれているか」という解説が必要な部分をまとめます。

  1. 「農家・農業法人しか買えない」という条文(3条2項2号・4号)
  2. 「貸すなら農家以外でも可」といいう条文(3条3項)

以下、それぞれの解説です。

「農家・農業法人しか買えない」という条文(3条2項2号・4号)

売るということは「権利を移動させる」ことです。そのため、農地法を調べるときは「権利移動のルール」がどこに書かれているかを調べます。

この点は、下の専門家の文章でわかります。

農地法3条許可
3条は「権利移動」に関するものです。農地を耕作目的で売買したり、売買・贈与・一括贈与・賃貸借・使用貸借(無償で貸すこと)等貸し借りする場合は農地法第3条許可が必要です。
農地は農地のままで、それを耕す人(または持ち主)が変更になる場合の許可、と言うと分かりやすいでしょうか。
林茂明税理士事務所(明石市)「農地法3条・4条・5条」

そして、農地法3条のどこに書かれているかといいうと、第2項の2号・4号です。これは下の画像でわかります。

農地法画像引用元:農地制度の見直しについて(農林水産省)※PDF

3つ目のポイントに「所有権の取得は、これまでどおり、農作業に常時従事する個人と農業生産法人に限られます」と書かれています。売るということは「相手に所有権を取得させる」ことなので、この一文から「相手が農家でなければいけない」ことがわかります。

「貸すなら農家以外でも可」といいう条文(3条3項)

上の画像の1つ目のポイントを見ると「農業生産法人以外の法人等も農地を借りることができるようになります。(農地法第3条第3項)」と書かれています。ここから「賃貸なら普通の法人等でもいい」ということがわかります。

まとめ

農家

以上、田んぼを売るときに知っておくべきポイントについてまとめました。最後に要点を整理すると下のようになります。

  • 田んぼのまま売るのは一番手続きが簡単だが、購入者が見つからない&安値になる
  • 宅地に転用すると工事費用がかかるが、購入者見つかりやすく、高値で売りやすい
  • 東京の平均的な宅地の広さで、工事費用は約740万円かかる

基本的に、田んぼの売却はただの処分と考え、利益を出すことは期待しない方がいいでしょう。扱いの難しい物件ではありますが、農地などの訳あり物件も多く扱う不動産業者に相談すれば、うまく売却できる可能性もあります。

そうした業者を探すためにも、一括査定などのサービスを活用して、多くの業者から査定を受けるといいでしょう。