土地を購入・相続するとき、気になるのは維持費でしょう。「買ったりもらったりするのはいいが、その後の維持でどれだけの金額がかかるのか」という点は、誰がも気にするはずです。
結論をいうと、平均的な土地の維持費は年間約65万円で、持っているだけで多額の費用がかかります。あくまで目安の金額ですが、全体的に土地の維持費が高いことは間違いありません。
この記事では、上記の計算の根拠を詳しく解説します。「土地の維持費はいくらかかるのか」が気になっている人には、きっと参考にしていただけるでしょう。
- 宅地で更地、市街化区域外なら65.4万円が目安
- 上記はほとんどは固定資産税で、年額62.8万円
- 都市計画税もかかる場合、13.4万円プラス
- 電気・水道・保険・管理委託費などは少額
- 固定資産税は地域で大きく異なるため、あくまで目安
「持っているだけで年間65万円の維持費がかかる」というのは、誰にとっても痛いはずです。そのような土地は早めに売却することで、維持費による損失をなくせます。また、日本の土地の価値は、これから人口減少とともに下落していくため、特に田舎の土地などは早めに売るべきといえるでしょう。
そのように空いている土地の売却を考えるとき、おすすめしたいサービスが「いえかつLIFE」です。特に相続・離婚・金銭問題に伴う売却に強く、これらの理由で土地を売りたいときには、非常に役立つでしょう。
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Contents
土地の維持費とは?項目と目安平均額の一覧
まず「土地の維持費とは、そもそもどんな支払いがあるのか」という点が気になるでしょう。ここでは、その項目と目安となる平均金額をまとめていきます。
固定資産税…62.8万円(宅地で更地の場合)
不動産を持っていると、固定資産税がかかります。固定資産税についての説明はこちらの段落をご覧ください。
この金額は当然、下記の条件で異なります。
- 土地の広さ
- 土地の価値(都会ほど高い)
- 土地の地目(山林・農地は安い)
このように「実際の金額はそれぞれの土地で異なる」という大前提の上で、あえて平均金額を出すと「62.8万円」となります(年額です)。計算の根拠は下の段落をご覧ください。
都市計画税…13.4万円(宅地で更地の場合)
「ある程度の街」だと、都市計画税もかかります。具体的には「市街化区域」です。都市計画税の課税条件はこちらの段落をご覧ください
この金額ですが、全国平均で13.4万円が目安となります。この計算の根拠は「固定資産税の計算方法」と同じです。
「評価額=4484万円」というところまでが同じです。そこから掛ける数字が違い「0.3%」となります(固定資産税は1.4%です)。
4484万円×0.3%=13.45万円
上記のようになり、端数を切り捨てて「13.4万円」ということです。
上下水道代…年額1.4万円(東京23区の基本料金)
土地の維持でも水道が必要です。上水道が必要な理由はこちらの段落で解説しています。下水道については「下水道が引かれている地域」で支払いが必要になります。
両方を合わせた「水道基本料金」が必要になる
土地の維持で水をどれだけ使うかはケースバイケースです。しかし「まったく使わない」のは極めて難しいものです。
そう考えると、基本料金だけは支払う必要があります。その基本料金がいくらになるかを見てみましょう。
東京23区の水道基本料金
基本料金は、上水道を引き込む「呼び径」の大きさで決まることが多いものです。東京23区の場合、呼び径の大きさによって、下のような基本料金になっています。
呼び径 | 基本料金 |
---|---|
13㎜ | 860円 |
20㎜ | 1,170円 |
25㎜ | 1,460円 |
30㎜ | 3,435円 |
40㎜ | 6,865円 |
50㎜ | 20,720円 |
75㎜ | 45,623円 |
100㎜ | 94,568円 |
150㎜ | 159,094円 |
200㎜ | 349,434円 |
250㎜ | 480,135円 |
300㎜以上 | 816,145円 |
【参考】水道料金・下水道料金の計算方法(23区)|東京都水道局


月額で1170円ということは、年額にすると「1万4040円」となります。水道の基本料金については地域差がそれほどないため、全国的に見てもおおよそこの金額と言えるでしょう。
電気代…年額1.2万円(30Aでの基本料金)
水道と同じく、土地の維持では電気もある程度必要となります。使用量自体はほとんどありませんが、基本料金のみは払う必要があります。
「土地の維持で電気が必要な理由」は、こちらの段落で解説しています。
電気代の基本料金はいくら?
これは「月額850円」が基本です。ポイントは下の通りです。
- 一般的な電力は30A(アンペア)である
- 東京電力の30Aでの基本料金は、842円である(月額)
- 中部電力も同じ
上記の理由で、おおよそ「月額850円」が、電気の基本料金といえます。これだけで、年額1万円になります(1万200円)。
実際の使用も合わせると?
実際に使う分は、月150円は行くでしょう。毎月使うわけではなく、数カ月に一度500円程度など、まとめて使うイメージです。
土地によってはもっと使うでしょうが、まったく使わないケースも考えると、おおよそ「月150円」と言っていいかと思います。
そうなると、全部合わせて月額1000円となり、年額1.2万円となります(あくまで概算です)。
管理委託費用…年額1.5万円~(依頼する場合)
空き地の維持を専門の会社に委託する場合、その費用がかかります。費用は会社によって異なりますが、ある会社では「年間1万5000円」となっています。詳細は下記のとおりです。
1. 空き地管理
①管理内容
見回り 3ヶ月ごと年4回、報告書送付(写真添付・メール対応可)
草刈り 年1回200坪までは無償② 管理費用(別途消費税必要)
基本料 1物件(連帯した土地)に対し年額15000円
草刈り 200坪までは2回目以降1万円/回 (200坪を超える場合は別途見積もり)
空き地・空き家管理代行サービスのご案内(株式会社・西米商事)
これをわかりやすく表にすると、下のようになります。
料金 | 年額1万5000円 |
---|---|
見回り頻度 | 3カ月に1回(年4回) |
見回り内容 | 報告書送付(写真添付・メール対応あり) |
オプション | 草刈り1回につき1万円(200坪まで) |
サービス | 年1回の草刈りは無料 |
200坪は「661平方メートル」であり、一般的な宅地の4倍~5倍程度の広さです。つまり、上記の西米商事であれば、ほとんどの宅地は年間1万5000円で維持を委託できるということです。
ただ、3カ月に1回の見回りでは、不法投棄などの被害に遭うリスクもあります。あくまでこれは「最低限の料金」と考えましょう。
保険料…年額1.7万円(火災のリスクがあるとき)
土地の維持で保険が必要になるのは「火災のリスクがあるとき」です。空き地で火災が起きる理由はこちらの段落で解説します。
火災保険に入るなら、いくらかかるか
あくまで大雑把な目安ですが、
- 年額…1万6500円
- 月額…1500円
となります。これは下のソニー損保のモデルプランから出したものです。
画像引用元:ソニー損保の新ネット火災保険
図を見てもわかるとおり、「火災・風災」はカバーされています。つまり火事・台風はOKということです。
逆にカバーされていないのは下のものです。
- 水災(津波・洪水など)
- 水濡れ等(大雨による雨漏りなど)
- 盗難(空き巣・強盗など)


土地の火災保険でもっとも重要なのは「類焼損害」です。「よそに火が燃え移ったときにも補償される」ということです。
この点、上記のソニー損保のモデルプランは問題なく補償されています。公式ページでも下のように書かれています。
ソニー損保の新ネット火災保険なら、火災による損害はもちろん、台風や豪雨、地震など自然災害による損害もしっかり補償。盗難や、自宅の火災で隣家を燃やしてしまった場合、日常生活における自転車での賠償事故などにも備えられます。
ソニー損保の新ネット火災保険
太字のように書かれているので、先ほど紹介した金額「年額1万6500円」で、カバーできるのです。
合計…年額65.4万円(宅地&更地&市街化区域外)
ここまでに書いた目安金額で「一般的にかかるもの」を一覧にすると下の通りです。
費目 | 年額(目安) |
---|---|
固定資産税 | 62.8万円 |
上下水道代 | 1.4万円 |
電気代 | 1.2万円 |
合計 | 65.4万円 |
以下、計算のポイントを説明します。
都市計画税を入れない理由
都市計画税は「市街化区域」でかかります。そして、市街化区域は日本の国土の3.8%しかないためです。
市街化区域に指定されている面積は1,447,771ヘクタールであり、日本の国土の約3.8%を占めている(2013年3月31日時点)。
Wikipedia「市街化区域」
「日本の国土」で計算しているため、「宅地の3.8%」ということではありません。「宅地の」という割合ならもっと大きくなるでしょう。
しかし、それでも「市街化区域の土地がかなりの少数派である」ことは確かです。このため、都市計画税は維持費の合計から省きました。
管理委託費用・保険料も外す
これはいいでしょう。管理は委託しなければいいですし、保険料も「建物があるときだけ払う」ものだからです。
水道・電気代について
これは「なしにすることもできる」のですが、下の理由で入れました。
- 支払ってもそれほど高くない
- まったく使えないデメリットの方が、遥かに大きい
土地の維持で水道や電気を使うのは「ほんの少し」なのです。しかし、その「ほんの少し」を使えるかどうかの違いが、維持管理の作業で大きいのです。
このため、ほとんどの土地で「契約しておくべきである」と考え、計算に入れました。入れてもそれほど総額が変わらないので、入れない人にとっても特に問題はないでしょう。
土地の維持費は「年間60万円」が相場?
上記のように、あくまで目安として「65.4万円」という年額が出ましたが、これはある程度正しい数字といえます。下記のHOME4Uの記事でも、ページのタイトルに「60万円」と書かれているほどです。
【参考】60万円もかかってる?土地の維持費を徹底解説!(HOME4U土地活用)
計算方法は当記事とやや異なっていますが、そもそも「土地の価値が地域によって激しく変動する」ことを考えると、おおむね同じ金額になっているといえるでしょう。
坪単価…0.75万円(平均的な宅地の面積の場合)
下の3つのデータから、土地の維持費の坪単価は「約0.75万円」(7500円)といえます。
- 総額の目安が、65.4万円である
- 平均的な宅地面積が、286㎡である
- 286㎡は、86.5坪である
この3つを合わせ「65.4万円÷86.5坪」を計算すると、0.75万円となります。なお、平均的な宅地面積が286㎡というデータはこちらで解説しています。
各費用が土地の維持で必要になる条件&詳細
ここまで紹介してきた費用の中で、
- これがなぜ、土地の維持で必要なのか
- どんな条件でかかるのか
という点が気になるものもあったでしょう。ここでは、そのような疑問がよくある維持費について、かかる条件や税率などの詳細を解説していきます。
固定資産税…必ずかかる
不動産を持っていると、固定資産税がかかります。これは、土地だけでなく建物でも同じです。
- 「毎年1月1日の時点で持っている人」にかかる
- その人に対して、4月~5月頃に請求がくる
という仕組みです。金額は「課税標準額×1.4%」です。
100坪の土地なら大体いくら?
極めて大雑把な目安ですが「おおよそ19万円が目安」と考えてください。これは、今回のように「宅地・更地」という条件でなく、農地や山林、家が建っている土地などすべてを含めたものです。そのため、金額が大幅に安くなっています。
この計算の根拠や、より正確な計算方法などは、下の記事でまとめています。
都市計画税…市街化区域ならかかる
都市計画税の課税ルールは、下のようになっています。
- 市街化区域…課税
- 市街化調整区域…非課税
ものすごく簡略化して書くと、下の通りです。
- 町…課税
- 田舎…非課税
市街化区域は「開発を促進する地域」です。そのため「町」といえます。一方、市街化調整区域は「開発を抑制する地域」です。そのため、わかりやすくいうと「田舎」となります。
(2つの区域については下の記事でさらに詳しく解説しています)
税率は「0.3%」
都市計画税の税率は「最高0.3%」となります。計算式は「課税標準×最高0.3%」です。
「固定資産税・都市計画税」を合わせると1.7%になる
ここまでの内容をまとめると、固定資産税と都市計画税の税率が、それぞれ下のようになります。
固定資産税 | 1.4% |
---|---|
都市計画税 | 0.3% |
両者を合計すると、1.7%になります。この2つの税金を合わせて「固都税」ともいいますが、「固都税=1.7%」と覚えるといいでしょう。
水道代…草刈り・火災予防で必要
土地の維持には、水道代も必要です。「土地の維持で何で水道?」と思う人もいるでしょう。理由は、下のような維持作業に使うためです。
以下、それぞれ解説していきます。
草刈り(地面を湿らせる・土を洗い落とす)
画像引用元:水にザブンしながらの草刈り(松つあん日記)
土地を維持するための草刈りでも水道が必要になります。
- 草刈りの前に、軽く地面を湿らせるため
- 終わった後で、土を洗い落とすため
上記の2つの理由からです。
草刈りの前に、軽く地面を湿らせる
草刈りの前に地面を湿らせるのは「土埃がたたないようにするため」です。土ぼこりは除草する人の目や鼻に入るだけではなく、近隣の建物や庭の中に侵入し、洗濯物を汚してしまうなどのトラブルの原因になります。
このため、特に隣家があるときには、土埃を抑える必要があるのです。そのためにも、土地を維持する除草作業では水が必要になります。
終わった後で、土を洗い落とすため
これは草刈り機の土だけでなく「自分の手や顔についた土」を洗い落とすためにも、あった方がいいでしょう。空き地の管理であればシャワーなどは当然帰ってから浴びるものですが、簡単に手や顔を洗えるだけでも、相当に気持ちよくなるものです。
(なお、空き地の雑草対策については、下の記事でも詳しく解説しています)
防火
画像引用元:【※音声が出ます】YouTube・神戸新聞社公式「芦屋の空き地で火災、雑草1万平米燃える」
土地の維持では「火災予防」も必要になります。
- 枯れた雑草や朽木は燃えやすい
- 空き地は、誰かが煙草の火などを投げ捨てることがある
- 不法投棄されたゴミが自然発火することがある(中に入っていたライターが日光を浴びるなど)
このように「空き地の火災」は意外と多いのです。愛知県の一宮市も、下のように警告しています。
放置された枯れ草は小さな火種でも簡単に火が付き、大きな火災になります。
土地の所有者・管理者は枯れ草を刈り取り、処分するか土砂などで埋めて、空き地の適正な管理を行いましょう。
空き地などの枯草は危険
こうした対策を施していても、何らかの原因で出火することはあります。特に愉快犯の放火魔は空き地や空き家など「目撃されにくい場所を狙う」傾向があるため、空き地の放火は意外と多いのです。京都府城陽市も下のとおり警告しています。
近年、全国の出火原因の第1位は「放火」であり、「放火の疑い」を合わせると出火件数の約2割を占めています。
城陽市におきましても「放火」及び「放火の疑い」による火災が、出火原因の多くを占めており、特に空地及び空家から出火した火災は、発見が遅れ、周囲の住宅に延焼し大火災となるおそれがあります。
空地及び空家の火災予防について(城陽市)
太字のとおり「特に空き地や空き家への放火が危険」ということが書かれています。このように「意外と出火しやすい空き地」で、万が一出火しても被害が拡大せずに済むよう、水道を使えるようにしておくことは大事なのです。

電気代…草刈機の充電や電気柵の通電で必要
土地の維持で電気代が必要になる理由は、下のような維持作業で電気を使うためです。
以下、それぞれの維持作業について解説していきます。
草刈り機の充電
画像引用元:マキタ・充電式草刈機(Amazon)
電動式の草刈り機は、従来のガソリン式よりも土地の維持で使われることが多くなっています。理由は下の通りです。
- 操作が簡単
- 静音性が高い
- ガソリンの重さがなく軽い
操作は、従来のガソリン式では「エンジンを駆動させる操作」が必要でした。これは練習をした人でなければできず、やり方を知っていてもある程度の力が必要で、手間もかかります。
静音性については、ガソリンを使うと車やバイクのように「ドゥルルル…」という音がします。この点、電動なら草が切れる音しかありません(単純計算で半分程度になります)。
最後の「重さ」については、想像がつくでしょう。水がたっぷり入ったタンクを持ち上げながら草刈りをするようなものですから、特に女性やお年寄りにとっては相当な重労働となります。この重労働から解放されるのも、電動草刈機のメリットです。
このような理由から、土地の維持作業の中でも除草については、電動草刈機が使われるようになっています。この充電をするためにも、維持費として電気代が必要になるということです。
(なしでもいいですが、なしにすると=ガソリン式にすると、維持作業がさらに大変になります)
電気柵の設置・通電
画像引用元:効果的な柵の設置方法(電気柵設置の注意点) |鳥獣被害対策.com
土地の維持では、イノシシやタヌキなどの害獣対策も必要になります。そのために電気柵を設置して通電すると、ここでも電気代が必要になります。
害獣対策はどんな土地で必要か
害獣対策は農地であれば当然として、空き地でも必要です。空き地で必要になる理由は下の通りです。
- 空き地に害獣が住み着くことがある(雨露を凌げる場所がある場合は特に)
- そこを拠点として、近隣に迷惑をかけることがある(畑を荒らすなど)
- それが原因で、近隣から苦情がくることがある
特に空き地で「古い物置」などを放置していると、この問題が起きやすくなります。また、物置ほどしっかりした建物でなくとも、下のようなものでも害獣が棲み着く恐れがあります。
- 放置された古い自動車
- 同じく放置した、農業用の一輪車
- タンスなどの粗大ごみ
最後の粗大ごみについては「誰かが不法投棄した」場合でも問題になります。何もなかったはずの土地でも、このように不法投棄によって「害獣の棲家」ができてしまい、それが近隣に被害を及ぼす恐れもあるのです。
このような害獣被害の対策をするための電気柵でも、土地の維持費として電気代が必要になるケースがあります。
保険…近隣に火災の被害が出たときに賠償するため
土地の維持で保険が必要な理由は「火事で近隣に被害が出たときに賠償するため」です。必ず近隣に燃え移るとは限りませんが、最悪の事態には備えておく方がいいでしょう。
建物の有無は関係ない
保険について「物置や空き家などの建物が残っていたら入るべき」という解説も見かけます。しかし、このような建物の有無は基本的に関係ありません。理由は下の通りです。
- 「土地の維持」と考えている時点で、建物を維持するつもりはない
- つまり、建物が燃えてもかまわない
- 問題は「火災が近隣まで延焼する」こと
- これは建物なし(雑草だけ)でも起きる
- そのため、建物の有無より「火災リスクがあるか」が重要
もちろん、建物がある方が火災リスクは高くなります。その意味では「建物があったら入る方がいい」といえるでしょう。
この場合、建物の多くは空き家のはずです。そのような「空き家の付いた土地の処分」については、下の記事で詳しく解説しているため、興味がある方は、こちらも参考にしてみてください。
山林の土地の維持費は?項目と目安金額
土地の種別が山林の場合、かかる維持費は下の3つです。
逆にかからない維持費は下の通りです。
そして「かかる維持費」の目安をまとめると、下の通りです。
固定資産税 | 1ヘクタールで年間数千円 |
---|---|
管理委託料 | 1haで年間5000円 |
森林火災保険 | 目安なし(契約内容による) |
以下、それぞれ詳しく説明していきます。
固定資産税…年間数千円(1haあたり)
山林の固定資産税は「激安」といっていいほど安いものです。評価額が1坪50円ほどであり、ここから計算すると、1ヘクタールで「2177円」となるからです。月額ではなく「年額」です。
この計算は、山林の売買を手掛ける「株式会社山いちば」の情報を参考にさせていただいています。
一例として、1ヘクタール(3,025坪)の山林を所有している場合の固定資産税を計算してみます。
評価額は1坪50円として、3,025坪 × 50円 = 151,250円 が全体の評価額(課税標準額)になります。
これに固定資産税の税率1.4%を掛けると、151,250円 × 1.4% = 2,117円 となります。
山林の税金 固定資産税(山いちば)
1ヘクタールの山林とはどれくらい?
わかりやすい例ではサッカーコートの1.4面分です。このコートというのは「ラインの内側」です。
下の写真を見てください。これは公式試合でも使用されるサイズです。この緑部分の1.4倍ということです。
画像引用元:しんとう総合グラウンド(榛東村)
横幅がどれくらいかは、拡大して自動車と比べてみるとイメージしやすいでしょう。↓
林業を営むにはとても足りない面積ですが、個人で所有するには広すぎるほど広い面積です(広過ぎて逆に持ちたくない人が多いでしょう)。
このような面積(1ヘクタール)で、年額2000円程度の固定資産税ということです。「サッカーコート7つ分」で、ようやく年額1万円に届く程度ということです。
このため「山林の固定資産税はほとんど気にしなくていい」といえるでしょう。
管理委託費用…年間5000円(1haあたり)
山林の維持管理を委託する場合、1ヘクタールで年間5000円が1つの目安です。これは、奈良県五條市の森林組合が定めている金額です(同組合が、この金額で請け負ってくれます)。
③管理委託費用に関する覚書
管理委託料金は、原則としてひとまとまりの山林について、1㌶まで5000円/年(税別)
五條市森林組合はあなたの山林の保護管理を承ります(五條市森林組合)
もちろん、組合によって金額は異なります。しかし、公的な団体のサービス料金は大体共通なので、これを相場と見ていいでしょう。
「境界」だけなら、1haで年間2000円~
山林全体の管理でなく「隣地との境界だけ」を管理するなら、1ヘクタールで年間2000円~4500円が1つの目安です。これは下の基準でわかります。
◆境界管理委託費用
2,000円 ~ 4,500円(1ha当たり/年間)
長期森林管理受託事業(松阪飯南森林組合)


ただ「内部からの山火事」などのリスクもあるため、やはり「全体を管理する」のがベストといえます。
森林火災保険…目安なし(契約による)
山林の土地の維持費では、普通の更地よりも保険が重要になります。「山火事」のリスクがあるためです。
こうした山林の火災に備える保険で「森林火災保険」というものがあります。この金額は完全にケースバイケースで、事例少ないため相場も不明です。
「日新火災海上」などが提供
画像引用元:森林火災保険・ご契約のしおり(日新火災海上保険株式会社)
森林火災保険は、上の画像の「日新火災海上」などの保険会社が提供しています。保険の詳細がヒットするのは、2019年8月中旬時点で、同社のみです。
上記のしおりですが、保険料については書かれていません(リンク先PDFで「円」と検索するとわかります)。
「1つの火災で最大いくらまで補償が出る」ということは書かれていますが「月々の支払いがいくらか」などは書かれていないのです。おそらく、山林は自動車などと比べて「ケースバイケース」の度合いが強いため、書くことができないのでしょう。
このため、月々の保険料については同社などに直接問い合わせる必要があります。
参考データ…最近5カ年の保険金支払額
国の組織である「森林保険センター」は、過去5年の森林火災保険の保険金支払額をまとめています。その一覧は下の通りです。
年度 | 件数 | 保険金額 |
---|---|---|
2013 | 24 | 524万円 |
2014 | 180 | 1億5658万円 |
2015 | 16 | 432万円 |
2016 | 16 | 437万円 |
2017 | 13 | 830万円 |
【参考】…火災(国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林保険センター)
これは「各年度の、全国での損害額」といえます(損害の大部分に保険が下りるため)。そう考えると「全国で400~500万円台というのは少ない」と感じるでしょう。
これは「林業用の木が燃えたことに対する補償」のため、「自分の山林が燃えて周りに被害が出たときの損害賠償」ではありません。その点で直接参考にはできないデータですが、保有している山林の状況によっては、上のデータは役立つでしょう。
都市計画税…0円(対象区域内でも)
山林は、市街化区域などの「対象区域」の中にあっても、都市計画税がかかりません。たとえば小さな雑木林なども非課税となります。これは下の太字部分でわかります。
本市都市計画税は、用途地域内に所在する土地(山林および原野を除く)および家屋に対して課税されることになっていますが(後略)
平成23年度から都市計画税の課税区域が変わりました(山陽小野田市)
これはつまり、「都市計画税の対象地域の中でも、山林と原野は除外される」ということなのです。例外的に課税する自治体もあり得ますが、ほとんどの自治体は同じといえます。
(都市計画税の0.3%という税率も含め、よそと違うルールの自治体というものが、そもそも少ないからです)
電気・水道代…0円(引くと山林でなく宅地になる)
通常の更地では、維持費として「電気・水道代」が必要になります。しかし、山林では不要です。
- そもそも、山林に電気・水道はない
- 引くことはできるが、許認可が必要
- 許認可には、宅建業者が間に入らなければいけない
このような理由に加えて、見出しのとおり電気や水道を引いた時点で山林ではなくなるのです。引くための条件として「生活を営んでいる」という証拠が必要であり、ログハウスなどの建物が「住居」と認められないといけないためです。
- ログハウスが住居として認められる
- その部分は「宅地」となる
この時点で「山林の維持費」ではなくなるんですね。最初に説明した「普通の土地の維持費」になるのです。このため、山林の維持費では「電気・水道代は考慮しなくていい」といえます。
参考資料
上記の説明について、専門家の解説を引用させていただきます。
山小屋・建物等の建築について
電気や水道を引く予定があれば、宅建業者を入れて許認可を受ける必要があります。
(中略)
近くに民家や電線があれば引ける可能性はありますが、その場所で生活が営まれていることが認められる必要があります。また、その場合は「住居」扱いとなり、開発行為に該当する可能性があります。基本的に山林内へ電線や水道を引き込むようなインフラ整備は難しいと思われます。
山小屋・建物等の建築について(株式会社・山いちば)
上記の説明によれば「そもそも山林にインフラを引き込むこと自体が難しい」ともいえます。


土地の固定資産税の計算方法(なぜ62.8万円か)
土地の維持費のほとんどは「固定資産税」です。都市計画税がかからないエリアなら「9割以上は固定資産税」といってもいいほどです。
そのため、ここでは「その固定資産税をどう計算するのか」「なぜ平均が62.8万円になるのか」を説明します。
まず、計算の根拠・流れをは下の通りです。
- ①…公示地価の全国平均は「1㎡…22.4万円」
- ②…宅地の平均面積は「286㎡」
- ③…①×②=6406万円(平均公示地価の総額)
- ④…固定資産税評価額=公示地価(総額)×70%
- ⑤…③×70%=4484万円(これが課税標準額)
- ⑥…固定資産税額=課税標準額×1.4%
- ⑦…4484万円×1.4%=62.77万円
以下、詳しく説明していきます。
①…公示地価の全国平均は「1㎡…22.4万円」
公示地価の全国平均は、1平方メートルあたり「22.4万円」です。これは下のデータでわかります。
日本全国・2019年[平成31年] 公示地価
平均22万4177円/m2
土地価格相場が分かる土地代データ|公示地価・基準地価
あくまで「全国平均」であり、トップの東京と最下位の秋田では、40倍以上の開きがあります。都道府県別の公示地価一覧はこちらの段落でまとめています。
たとえば、自分の県の公示地価が「11万円」であれば、これから先の計算が「すべて半分になる」と思ってください(計算の流れは同じで、最初の数字=公示地価が変わるだけなので)。
②…宅地の平均面積は「286㎡」
日本の宅地の平均的な面積は、286平方メートルです。これは、下の総務省の統計でわかります。
1住宅当たり敷地面積は所有地が286平方メートル,借地が208平方メートルで,所有地が借地の1.4倍の広さとなっている。
一戸建・長屋建の敷地の面積(総務省統計局)
太字の通り「286㎡」と書かれています。このデータは「所有地」のもので、「借地」も含めたすべての土地の平均だと「283㎡」となります。下の画像の黄色の部分です。
しかし、ここでは「所有地」のデータを使います。理由は「固定資産税を払うということは、所有しているから」です。

③…①×②=6406万円(平均公示地価の総額)
上の2つの数字で掛け算をすると、下のようになります。
計算式 | 1㎡あたりの公示地価×平均宅地面積=平均公示地価(総額) |
---|---|
数字を当てはめたもの | 22.4万円×286㎡=6406万円 |
これで、宅地(の更地状態)での公示地価の総額は、平均6406万円となります。


それでも、東京の「恐ろしく高い土地」に、大阪や名古屋の土地なども加わるわけなので、「全国平均で6400万円」というのは、妥当なラインでしょう。
④…固定資産税評価額=公示地価(総額)×70%
上の公示地価(総額)から、固定資産税評価額(以下「評価額」)を出します。固定資産税は、この評価額によって決まるためです。評価額の計算式は下の通りです。
公示地価(総額)×70%
これは、下記の記述でわかります。明海大学不動産学部の中村教授による解説です。
「どちらも公示地価と連動していて、相続税路線価は公示地価の8割程度、固定資産税路線価は公示地価の7割程度となっています」
公示地価・基準地価・路線価の違いを解説 購入時や相続時に参考にするのは?(SUUMO)
「程度」と付いているように、例外もあります。しかし、おおむね70%を掛ければ、評価額を出せるのです。

⑤…③×70%=4484万円(これが課税標準額)
上の段落の計算をすると、下のようになります。
計算式 | 公示地価(総額)×70%=評価額 |
---|---|
数字を入れたもの | 6406万円×70%=4484万円 |
これで、「評価額=4484万円」となりました。「平均的な宅地で、更地の場合」です。この評価額は「課税標準額」ともいいます。
⑥…固定資産税額=課税標準額×1.4%
固定資産税額は、下の計算式で出せます。
- 評価額×1.4%
- 課税標準額×1.4%
どちらも同じ意味です。評価額と呼ぶこともあれば、課税標準額と呼ぶこともある、という意味です(確認しておくと、ここでいう評価額とは「固定資産税評価額」のことです)。
この計算のルールは下の記述でわかります。
固定資産税は、所有する固定資産の評価額に標準税率(1.4%)を掛け合わせて求められます。
固定資産税=課税標準額×標準税率(1.4%)
固定資産税っていくらかかるの?固定資産税の計算方法について解説(ビジドラ)※三井住友カード運営
上の説明で、計算式だけでなく「評価額=課税標準額」ということもわかります。
⑦…4484万円×1.4%=62.77万円
計算式に数字を当てはめます。平均的な評価額は「4484万円」なので、1.4%を掛けると「62.77万円」となります。62万7700円です。これが、日本の「平均的な宅地を更地にしていた場合の固定資産税額」です。
参考データ…都道府県別の公示地価・一覧(2019年度)
ここまでの計算は、最初の数字となる「公示地価」によって大きく変わります。そして、公示地価は都道府県によってまったく違うものです。
最高 | 東京都…109万6445円 |
---|---|
最安 | 秋田県…2万4957円 |
このように、最高の東京と最安の秋田で「45倍程度の差」があるのです。このため「全国平均は参考程度にして、自身の都道府県で実際に計算してみなければならない」といえるでしょう。
ここでは、そのような目的のため、各都道府県の2019年度における公示地価を一覧にします。参考サイトは下記のものです。
北海道・東北
都道府県 | 公示地価(1㎡) |
---|---|
北海道 | 61,641円 |
青森県 | 30,126円 |
岩手県 | 42,383円 |
宮城県 | 125,599円 |
秋田県 | 24,957円 |
山形県 | 32,383円 |
福島県 | 40,304円 |
関東
都道府県 | 公示地価(1㎡) |
---|---|
茨城県 | 34,990円 |
栃木県 | 41,739円 |
群馬県 | 44,264円 |
埼玉県 | 156,973円 |
千葉県 | 123,532円 |
東京都 | 1,096,445円 |
神奈川県 | 248,775円 |
北陸甲信越
都道府県 | 公示地価(1㎡) |
---|---|
新潟県 | 44,495円 |
富山県 | 48,323円 |
石川県 | 75,135円 |
福井県 | 51,568円 |
山梨県 | 42,999円 |
長野県 | 45,594円 |
東海
都道府県 | 公示地価(1㎡) |
---|---|
岐阜県 | 55,867円 |
静岡県 | 89,887円 |
愛知県 | 196,182円 |
三重県 | 45,007円 |
近畿
都道府県 | 公示地価(1㎡) |
---|---|
滋賀県 | 61,864円 |
京都府 | 240,906円 |
大阪府 | 298,443円 |
兵庫県 | 159,334円 |
奈良県 | 81,361円 |
和歌山県 | 57,437円 |
中国
都道府県 | 公示地価(1㎡) |
---|---|
鳥取県 | 34,925円 |
島根県 | 40,207円 |
岡山県 | 62,188円 |
広島県 | 140,728円 |
山口県 | 41,188円 |
四国
都道府県 | 公示地価(1㎡) |
---|---|
徳島県 | 60,519円 |
香川県 | 55,225円 |
愛媛県 | 71,523円 |
高知県 | 61,596円 |
九州・沖縄
都道府県 | 公示地価(1㎡) |
---|---|
福岡県 | 153,398円 |
佐賀県 | 39,192円 |
長崎県 | 66,155円 |
熊本県 | 85,888円 |
大分県 | 57,673円 |
宮崎県 | 39,339円 |
鹿児島県 | 68,340円 |
沖縄県 | 119,215円 |
まとめ
土地の維持費は想像以上に高いもの。使わない土地を持ち続けることは、固定資産税で国に寄付を続けるようなものです。よほどの理由がない限り、使わない土地を持ち続ける意味はないでしょう。
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